アタシが産まれて しばらくして 母がまた妊娠した。

 

夜中に突然起こされて 病院に連れていかれた。

 

母は変な格好で 座っていた…

というか 寝転がっていた。

 

その時の衝撃が強くて 着て行った服など 覚えている。

母の不自然な恰好。

 

すぐに外に出され あとは覚えていない。

 

それから母は 妊娠はしなくなった。

 

後で聞いた話によると 男の子の死産だったそうだ。

 

その後は 母はよく病気になって 入院してた。

その度に母実家に預けられて 一人ぼっちの生活を送る。

 

暫くして 母のかかりつけ医が 勤めに出ることを勧めた。

そうした方が 体が丈夫になるだろうと。

 

近くのスーパーで働くようになり パートでなく一日仕事なので 母実家ではないけど 一人ぼっちは変わらなかった。

 

学校から帰ってくると 米を洗って仕込むのが 仕事だった。

低学年の頃は 沢山の子達が 遊びに来ていた。

 

父は母の身体を考えて 早くから洗濯機や テレビを買っていた。

今の上皇様の結婚式のテレビ中継を 近所の人たちが お弁当をもって見に来た。

 

近所では 裕福でお金持ちに見えていたんだろう。

 

新学期になると クラスの10人位 筆箱や下敷きを貰い とても羨ましかった。

今考えると 生活保護家庭が多かったという事だ。

 

運動会は 地元のお祭りで 地区の代表のリレーがあり うちの父はいつもアンカーだった。

そんな父は アタシが運動が出来ないのを嫌がり スパルタで何でもやらせようとした。

逆上がりの試験があると 近所の子に聞くと 小学校まで連れて行かれ 鉄棒の練習を毎日やらされた。

 

出来ないものは出来ないのである。

逆上がりも 足掛け上りも 何度もやらされて 結局鉄棒から落ちて 顔を縫う怪我をして やっと止めてくれた。

 

そりゃ父は 走るのも早かったし 鉄棒も大車輪もやってたので 出来ない娘が歯がゆかったのかな。

 

習い事も書道をやらされてた。

いつも横で 文鎮を右手に持って振り上げて 「さあ 書け!」

 

書道の先生が 父兄の方は出ていてくださいと言われても無視だった。

でも 進級試験に何度挑戦しても受からなかった。

 

書道の先生が こんなに綺麗に書けているのに 何で受からないか聞いてくれた。

返事は こんな勢いのない書体は 大人が筆を持って書いてるから なので 進級出来ないという事だった。

 

それで 父は 書道を辞めさせた。

 

プールの行っても 足のつかない所へ連れて行き いきなり落として 泳いで来いという。

 

何でもスパルタだったな。

 

母はその横で 何も言わなかった。

 

ある日鉛筆を買いに行った。

 

HBを買ってこいと 父に言われた。

文房具屋さんに行くと おじさんが 新しいFと言う種類が出たから コレが良いよ と言われ Fを買って帰った。

 

そうしたら何故 HBを買って来なかったと散々叱られ 文房具屋さんに言われたからと言うとそのまま 文房具屋さんに連れて行かれ おじさんに 凄い剣幕で Fのことを聞いた。

 

当然おじさんは 私が勧めたと 言ってくれると思ったら 父の剣幕に押され 言って無いと言いやがった。

 

お掛けで嘘つき呼ばわりで 散々叱られた。

大人は信じられないと感じた瞬間だった。

嘘つきと言うことで 裸で外に出されたこともあった。

 

木に縛られたこともあったかな。

 

でも学校で 何かあると 直ぐに文句を言いに行っていた。

だから先生からは変な意味で 贔屓にされていた。

 

褒められるのも 一番なら 怒られるのも一番だった。

 

アタシを怒るとみんなが言う事を聞く。

 

皆はよく言う事を聞いてくれた。

学校が始まる前は カバンを持ちに来てくれた。

遠足の時の お菓子を貰うために。

 

遠足の時は先生が 沢山おにぎりを作って持ってきてた。

 

弁当が無いから 遠足に行かないとか 普通の事だった。

 

ある日いつも休まない子が 休んだので 先生が見に行くと 元気で どうしたのか聞いてみたら お兄ちゃんが 僕のパンツをはいて行ったので 僕のが無くて 学校に行けなかったと言ったそうだ。

 

そんな中で アタシの家は テレビがあり 洗濯機があり ピアノがあり 凄いと自分でも思っていた。

 

でも高学年になると 生徒たちの態度が変わってきた。

 

虐めだ!

 

散々やられた。でも親には言えなかった。

家の中では 可愛い一人っ子で (可愛がってるつもり)

今度はどこに連れて行こうと 夜両親は話している。

 

聞いていると そんなとこ行きたくないと思う。

そんな弁当もいらないと思う。

 

でも言えない…

 

そして休みの前日に 明日あそこに行くぞ~ 嬉しいだろ!

決めつけである。

行きたくない!  

 

でも言えない…

 

「うわぁ嬉しい 早く行こう」

 

そう言って一日が終わる。 

 

家にいても 遊びに行っても 二人の顔色を伺い 機嫌を取りまくる。

 

そして 中学校に行く前になって 母が私立を受けろと言い出し お嬢様学校に行く事になる。

 

虐められていても 皆と同じ中学に行きたかった。

 

卒業式にも 皆は中学のセーラー服を着て 出席していたけれど アタシは合格してからの制服作りで 私服でだった。

 

淋しいね…