gackt-golbom-loveさんのブログ

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好きなものはずっと好きでいたい
金爆も梵人さんも
だって誰の生命も期間限定
出逢ってくれてありがとう
明日というのは
今日を生きたくて、でも叶わなかった者たちの希望
総てに感謝して生きたいな


10年前に偶然の出逢いがありました。それは奇跡になりました。金爆さんからもらったたくさんのこと大切にして、ずっと推していこうと誓いました

毎日朝は時間になると看護師さんが起こしに来てくれる

体調が良い時は僕から話しかけたりする

それを見てあの人達は医師を交えて申し送りをするのだろう

1055室の桜井さんは今朝は体調良さそうです

とか今朝は少し頭痛がしてるみたいですとか

食欲がある、無い等々

抗がん剤で治療するしか手だての無い僕は一日中ベッドの中だ

髪の毛はこの数ヶ月ですっかり抜け落ちたまに見舞いにくるあの腐れ縁の仲間たちに「一休」と呼ばれている

人の苦しい抗がん剤の副作用を「つわりか?」とか言いやがるし…まぁそれも慣れてしまったが…

僕の頭の中に棲み着いた悪魔がそれでも少しでも小さくなってるなら耐えてみせよう

耐えるとも❗️


1年半年前、

やけに目眩に襲われた   が、僕は仕事の激務でちゃんと眠れてないせいだろうくらいにしか思っていなかった

そのうち足がふらついたり手先が痺れるような感覚が起きたりすることもあって少し不安になる時もあったが、常時では無いから体調管理しなきゃ駄目なのかもなくらいに考えていた


ある日、耐えられない頭痛と吐き気に襲われて緊急外来で診てもらった時は疲労が蓄積しているせいでしょうと言われ頭痛薬と安定剤を貰いタバコを控えるようにと言われた

過度のタバコは胃に穴があいたりするし、血圧も上がるから心配なら、内科で診てもらいなさいとも…

あの時素直に行って診てもらってたら…僕の悔いはそれだ

しかし、会社から休みを3日間貰えて死んだように眠ったら頭痛も吐き気も治まった

ひかるもその3日間毎日泊まり込み食事や身の回りの世話をしてくれた(僕たちはその頃はもう一緒になろうと約束してた)

4日目にはいつも通り出社していつも通り仕事をこなした

次週には大きな会社との契約のためのプレゼンが控えてたしこの契約が上手くいったらひかるに指輪を贈ろうと決めていた


忙しい僕を気遣いひかるは連絡を控えてくれていたし彼女自身も結婚式場のプランナーのマネージャーに昇格していたから前よりも多忙になっていた

「今日ね、びっくりするお客様来たのよ」

ひかるが夜の定期電話でちょっと興奮気味に言ってきた

「ん?有名人でも来たの?」

「ブー、なんと茶帯さんが彼女連れて来ました~!」

「え?あいつ遂に身固めすんだ!」

「うん、可愛い彼女さんだったよ  お式は和式でやりたいんですって」

「あ~、あいつらしいよ     派手な事嫌いだからな…そうか…あいつが1番手か…」

「ふふ   びっくりしたでしょ?サンジさんやVシネ恭介さんは知ってるの?って訊いたら誰にも言ってない、なんか照れくさいから、ひーちゃんからぴちょんに言っておいてよだって」

「え?もしかして俺からみんなに言うの?広報かよ

ま、いいや おめでたい話だから  恭介に言えば悔しがってシュケ、サンジに電話するだろ『シュケ~😭聞いてくれよ~チャオビのやろ~が』ってさ』」

「似てる似てる🤣やっぱり上手い

特徴つかんでるもんね」

「シュケは一所懸命慰めるけどサンジ なんて冷たいからな『オメー、禿げる前に見合いでもしとけよ  ツラが良くないんだから金貯めとけ!』こんな感じだな」

電話の向こうで思い切り笑ってたひかるの声

そんなに笑うなよ俺にとっては君に繋げてくれた縁結びの禿げ神なんだから…

僕も笑いながら話してた

短い毎日の電話…

明日も明後日も幸せな今日の日が続くと信じていた

僕の仕事のプレゼンが成功して

二人で指輪を選んで

一緒に棲む物件を探し

それでも時々不意に襲ってくる目眩に不安を感じながら…








そうだった僕らの出会いはまるでドラマにあるようなそんなキラキラしたものじゃなかった

何するんですか!と頬二、三発平手打ちされても文句が言えないものだった

その後しばらくして僕から食事に誘った

初めは彼女の友達や、チャオビ、サンジも一緒に食事や、カラオケに行って、それから僕がドライブに誘ってだんだんと二人で会うようになった

3歳年上の僕らだが、ひかるの方がいつも僕らをリードしてた

いつの間にか僕らはひかるをひーちゃんママと呼んでた

ひーちゃんは嫌!ひとみばあちゃんみたいと最初は嫌がってたが自分の友達までひーちゃんママと呼び始めたから   もう、いい諦めたと受け入れた



春の桜    夏の花火     秋のキャンプ    冬のスノボ


どのページをめくってもひかるの笑顔はキラキラ✨している

幸せいっぱい…そんなまぶしい笑顔のひかるを僕はずっと離さないようにしたかった………

あの頃のまま時間が止まってしまえとすら思った


「桜井さん、朝の回診ですよ」

看護師さんの呼び掛けに気持ちが我にかえる

なんとかまだ体は動かせる(寝返りまでは無理だが)足の筋力はすっかり落ちて自力では立てない

担当医が来ていつものように僕の名を呼び

調子はどうですか?と訊く

「変わり無いです。吐き気や頭痛も収まってます。」

担当医が指を立て僕の顔の前で上下左右にゆっくり動かす

僕はそれを目で追う

特段変化は無いですね

血圧も脈も心音も呼吸音も普段通りですし、食欲はどうですか?

「やっぱりにんじんは苦手です」と言うと看護師さんが好き嫌いしないの!と笑いながら言う

担当医も小声で僕も子供の頃から嫌いですと耳打ちして、じゃあ食事にも不便は無いようですね

体調になにかありましたらすぐにナースコールで知らせてくださいと軽く会釈して病室を後にした


窓の方に体を動かし空を眺める

今日はちょっと風が強いのかな?

雲の流れが早い

子供の頃は兄貴と凧上げしたな

少し強めの風が吹くほうが凧はよく上がった

兄貴が糸を持って走り僕は凧を上に掲げてその後を追った

手を離せ!兄貴の声で手を離すと上昇気流に乗って空に舞い上がる凧に嬉しくて声をあげた

兄貴には絶対敵わなかった

凧上げも、身長も、勉強も…

唯一勝ったのは、バレンタインのチョコの数だけ

5個以上の差にマジで兄貴が悔しがってたっけ

懐かしいな





はると…はると…

まぶしい光の中僕を呼ぶ声が聞こえる…

それは懐かしい誰よりも愛おしいひとの声

振り向くと木立の中からヒョイと姿を現しここよ!と笑ってみせる

僕は手を伸ばして   また隠れてたなと笑う

はるとってほ~んと見つけるの下手

僕に駆け寄り見上げながらちょっと悪戯っぽく唇を尖らせた

仕方ないだろ、方向音痴なんだから…そろそろ帰るか

はると…帰るって何処に?

抱いていたはずの肩がそこにない

僕は慌てて捜しまわる  ひかる!何処だ!何処にいる!

辺りがまぶしい…まぶし過ぎてひかるを探せない…



桜井さん、おはようございます

カーテンを開けて微笑む看護師さんの声で目を覚ました

ベッドの中繋がれたチューブと医療機器

掠れぎみの声で  おはようございますと返したら気分はどうですか?と訊かれた

いつもと変わらないです

痛みもないし、悪い気分ではないです

お薬効いてるんですね良かったです言いながら

看護師さんは体温を計り脈と血圧計を診てカルテに書き込み部屋を出て行った


窓から差し込む太陽の光は夏から秋に変わろうとしている

何処までも青い空には雲ひとつない

僕はさっき見た目夢を思い返す


また一番幸せな頃の夢を見てしまった…

ひかるがいつも笑っていて僕の側にいて僕との未来を信じきっていたあの頃…



僕たちは3年前の冬に出逢った

珍しく東京に大雪が降り交通網がマヒした日

「電車来ねぇじゃん!山手線て5分おきにくるんじゃねぇのかよ」岡山から久しぶりに上京してきた恭介(悪友、クサレ縁)が僕に向かって文句を言う

「今日は雪の予報だって前から言ってただろ?

それを俺は晴れ男だって威張って来て文句言うなよ」

「おめぇが雨男だからだよ!前に来たら台風だったしなえーそれも東京直撃でよ   予報じゃ逸れますって言ってたのに」

「いや、それ逆にお前が呼び込んだ説あるぞ」

「いーんや、はると君、忘れちゃいないかい?

あの日、君は来る予定じゃなかったんだよ

仕事で栃木に行ってるはずだったんだ

それが前日に相手がキャンセルになったとかで急に仲間に入ったんだよ

その途端、台風が進路変えたんだ   気象庁もびっくりさニヤリ

「あ、あれはたまたま偶然だろがガーン

「だもんで、チャオビなんてもうあいつ呼ぶなムキーって喚いたんだぞ」

チャオビも中学生からの悪友  一番口が悪い

「うるっせぇな!はいはい、俺が悪うござんした」

「見ろよこの雪…あ~あ、新幹線停まっちゃったよ   俺、今日帰れないからお前ん家泊めろ」

スマホの速報見ながら恭介が恨めしげに僕を見た

「東横線も停まっちゃったよ」笑いながら僕が野宿だなと言うと

「ざけんな寒くて死んじまうだろ!」と僕の肩を突いた

いつもなら突かれても平気なのが雪が凍り始めてて足を滑らせた

転びかけた僕の足が後ろにいた人の足を踏んでしまった

「痛い!」しゃがみ込んだ女性がひかるだった

「あ!すみません!大丈夫ですか?」

踏まれた足を摩りながらいった~いと小声で呻いていた

僕のほぼ全体重が足に乗ったのだから痛くないわけがない

直ぐそこに外科のクリニックが見えた

「肩貸します、あそこのクリニックに行きましょう」

「歩けます  大丈夫です」

「いやしかし…」

「本当に診て貰った方がいいですよ」恭介が僕の荷物を受け取り彼女に言った

実際は僕の身長とひかるの身長差があって彼女が僕の腰を掴み、僕は彼女の肩を抱きながらながら歩いたのだが


「打撲、全治10日間だねぇ  今日明日は湿布貼って動かさない事」

少し白髪混じりの髪を掻きながら医師が言った

「踏み場所が悪かったら骨折してたかもしれない   人混みの中でふざけないように」叱られてしまった

本当にその通りで僕は彼女に平謝りした

治療を終えて費用を支払ってる間に恭介が外でタクシーを拾って待っていた

僕は彼女に名刺を渡し、痛みが酷かったら明日別の病院に付き添うので連絡くださいと告げた

タクシーの運転手さんには雪道で混んでいることを計算にいれて少し多めの金額を渡した

そこまでしなくていいと彼女は言ったが申し訳なくて…

走り去る車を見送り「恭介😡お前治療費半分もてよ👌」と右手を出したら握手してきやがった

あんのやろ


その後、彼女からの連絡は来なかった

大丈夫だったのかなと心配だったが、

やはり気が動転してたのだろう僕は彼女の連絡先を聞いてなかった

あくる日帰った恭介からは馬鹿!ドジ!と散々にけなされたが、連絡して来ないってのは大丈夫だったんじゃないか?と慰めてもくれた

またそのうち休み取れたらそっちに行くからよ

嵐用のレインコート用意してさ ニヤリ じゃあなと電話切る際に言われてクソが💢と呟いてしまった

あいつの事だ、本気で雨具しっかり用意して来るに決まってる

チャオビにしても、(チャオビ本名和哉、奴は柔道をやっていて中学生で2段を取った。中学生の2段は黒帯でなく、茶帯なのでそのままあだ名になった)

サンジにしても(サンジ、あだ名の通りアニメワンピースのサンジみたいにくそ旨い料理をつくるからそれが由来→本名は諒太)

シュケにしても(シュケの由来は、恭介と名前が同じなのだが、滑舌が悪く、すけの発音がシュケと聞こえるので…)僕と遊ぶ時は必ず折り畳み傘を持参しやがる

雨なんか降らねーよ!こんないい天気で💢と言ったらゲリラ豪雨に降られた😭

偶然もここまできたら桜井春人には雨雲がついていると言われてあいつらは僕を某電気メーカーのマスコットぴちょんと呼ぶ


あれからひと月程して仕事をしてたら昼近くに内線電話で「桜井さんにお客様がいらしてます」と受付から呼び出された

誰だろうと思い階下に降りて行くとひかるがいた

僕は思わず走り寄り「心配してました!大丈夫でしたか?」と聞いた

ひかるは笑いながら、「かえってご迷惑かけたみたいですみませんでした。ちゃんと治ったので心配しないでください」と笑った

受付の女の子たちが興味深そうに見ていたが

かまわず僕は「あ、ちょうどお昼ですから、食事に行きましょう!」とひかるを誘った

ひかるも笑顔ではいニコニコと応えた


近くのレストランに入りひかると向き合い座る

ひかるは、封筒を差し出して

「タクシーの運転手さんが、いくら余ったらチップにしても良いって言われたけどこんなには多すぎるから、会うときに返してくださいと渡されたんです」

「でも、雪道の運転大変だったろうし、クリニックの前で待ってて貰ったし」

ひかるはちょっと困った顔して「預かって来たし、とにかくお返ししますね」と僕の前に封筒を差し出した

「あ、そうですよね   困りますよね

わかりました   いただきます」

ウェイターさんが注文を訊きに来て僕らはランチセットを頼んだ

「お飲みものは?」訊かれて2人ともアイスティを頼んだ

ウェイターさんが去ったあと、「紅茶好きなんですか?」と訊いてみた

「う~ん、さほど😊でも、今日は何気に紅茶の気分なので…桜井さんは?」

「ダージリンの香りが好きなんですよ

実は父親がイギリス生まれなので、そのせいかも」

「え?桜井さんてハーフなんですか?」

「いえ、バリバリ日本人です

祖父が仕事でイギリスにいて、そこで父親が生まれたってだけです😊」

「な…ちょっとした詐欺じゃない?」ひかるが楽しそうに笑った😆

「まあ、僕は立派な詐欺師になれますかねぇ」僕も笑った😄


食事が終わるまで僕らはいろいろ話した

彼女の仕事がウェディングプランナーだってことや(もちろんその前に名前が宮前ひかるってことも)故郷が福島だってこと、僕は神奈川で生まれ育ったことなど

「この間のお友達、お仕事仲間ですか?」

「あ?あいつは中学から大学まで一緒の悪友

Vシネマって呼ばれてます、人相最悪だから😁

今、岡山の会社に就職して休み貰ってはこっちに帰ってくるんだ  寂しいよ~って」

「面白い人ですね  足、治らなかったら一生こいつが面倒みますから遠慮なく慰謝料取ってくださいって言ってたんですよ」

「また来月の連休にこっちに来ますよ

会いますか?」

「う~ん、遠慮しちゃおうかな?ちょっと楽しそうだけど…」


昼休みの1時間はあっと言う間に過ぎてレストランを出た所で彼女とは別れた

「また、ご飯でも一緒にしましょう

連絡しても良いですか?」

彼女は「はい、待ってますね」と微笑み手を振りながら駅へと歩いて行く

見えなくなるまで見送って仕事へと帰る

午後からの仕事が少しも嫌にならなかったのはもちろん彼女の笑顔の影響の他ならなかった


夜、恭介から連絡来て彼女と会ったことを伝えたら俺がキューピッドだからな!だとかぬかしたのでキューピッドは、頭だけにしときなと言い返した(岡山に行ってから営業で苦労してるとかで薄毛になったと泣いていた)

俺が会いたがってるって絶対呼べムキー

連休は忙しいみたいだから無理じゃないか?

俺、そっちに帰りたい~😭またハゲたえーん

お前爺ちゃんツルッパゲだからな気をつけろよ

悔しい~!チャオビなんてまた新しい彼女つくってた!

そう呟くように言ってあいつは電話を切った

あんまり長くはあっちにいれないかもしれないなと僕は思った