ガチトラ!が出来るまでの道のり(後編) | ガチブロ!~ガチンコ教師、ブログはじめました~

ガチトラ!が出来るまでの道のり(後編)

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『ガチトラ! ~暴れん坊教師 in High School~』公式サイトはこちら
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『難航』
数社から見積もりを出していただき、色々な角度から検討した結果、
前回、お伺いしたスタジオ斬にお願いすることになりました。
僕もそうですが、スタジオ斬の皆さんも、お互い初めて一緒に仕事するわけですから
色んな意味でギクシャクしていました。
さらに新規タイトルを作るということは、全てが手探り状態になりますので、
せっかく作ったシステムを、思い切って捨ててしまうこともざらにあります。
もちろん「ガチトラ!」においてもそうです。
特に「ガチトラ!」は、ゲームの方向性が定まるまで時間がかかったので
その間、無駄になってしまった作業はたくさんありましたし、
その度にスタジオ斬スタッフの皆さんと、僕の間には溝ができていきました。


かつて、僕が提案し作ってもらった「魂鷲掴みシステム」というものがありました。
生徒とプレイヤーの間にコンクリートの扉を出現させ、その扉が閉じる前に
生徒の悩みを掴み取るというシステム。
喧嘩番長でいうところの「メンチビームみたいなもの」です。


しかし…


実装してスパイク社内で見せたところ、リアクションは最悪。
「こんなんで大丈夫かよ?」と、ささやかれてしまう始末。
これでは社内の人間を納得させられない…僕は、開発スタッフに言いました。
「すみません。鷲掴みシステムは捨てます」と。
おそらくこれが、最も僕と開発スタッフの間に溝を作った出来事です。
そりゃそうですよね。
監督である僕がOKを出したのに、結局ひっくり返してしまったワケですから…


こういったヒズミは、徐々に表面に現れてきます。
キャラクターやマップモデルなど、ビジュアル的なものはドンドン出来ていきますが
肝心のゲーム部分が全然出来ない。まさにコンクリートの扉の壁ができていたスタジオ斬と僕の間で、
ゲーム性に関しても大きなズレが生じていました。


完璧に僕のミス。


コミュニケーション不足から、しっかり伝えるべき考えを伝えきれていなかったこと、
そして、僕自身がゲームの最終形をイメージできていなかったことが原因でした。
さらにこのズレを大きくしたのが、シナリオ作業。
シナリオ執筆に集中するあまり、ゲームそのものに対する対応が出来なくなってしまい
さらに現場を混乱させてしまいました。
激しく反省。。
ちなみにこの時の企画名は『魂の教師、通称タマキョー』。



『軌道修正』
ゲーム性について軌道修正が出来たのは、開発もかなり佳境に入ってから。
僕がこだわっていた「ファンタジーはダメ」という部分を、捨てたことがキッカケです。
開発途中の「ガチトラ!」には、大きくなったりヘンテコな攻撃を仕掛けてくる生徒は
誰もいませんでした。ある意味、もっと喧嘩番長っぽいゲームだったのです。


精神世界のバトルといえど、当時の僕はなるべくリアル路線の戦闘にしたかったのですが
ただ殴り合うだけで、何一つ面白さが見出せずに悩んでいました。
何かが違う…迷走しまくった結果、結局は僕以外の皆が望んでいた「ファンタジー路線」を
受け入れることにしました。
いざ、受け入れてみると不思議なもので、非常に面白くなったんです。
もしあの時、僕が意地になって皆の意見を取り入れなかったら…今思うとゾッとします。


ちょうどこの頃から、開発会社に半分常駐するような作業スタイルに切り替えていました。
今までの流れであれば、常駐は無謀かと思われたのですが、開発スタッフは嫌な顔ひとつせず、
僕を受け入れてくれました。


久しぶりに現場スタッフと直接話しながらのモノ作り…
確かにまだギクシャクしている部分はあるけれど、少しずつ、本当に少しずつ
コミュニケーションが取れ始めた感じでした。
これが今まで僕がやってきたスタイル。
まだまだな状態だったけど、懐かしさを感じた瞬間でもありました。



『ダンガンロンパ』
スパイクのタイトルに「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」というものがあります。
「ガチトラ!」と同じ完全新作であり、ほぼ同時に立ち上がったタイトルです。
今や多くのファンと高い評価を獲得し、スパイクの看板タイトルになりました。
ちょうど僕が迷走している時、「ダンガンロンパ」の宣伝が始まりました。
発売前から勢いがあり、スパイク社内は「ダンガンロンパ一色」になっていました。
一方「ガチトラ!」は、やっと軌道修正が出来たものの、まだまだ遊べるレベルでは
なかったこともあり、完全に存在感ゼロ。
たまに聞こえてくるのは「ダンガンは良いけど、ガチトラはヤバい」。


心が折れそうでした。


そんな僕を支えてくれたのは、寺澤P。
「ガチトラも必ず面白くなる!だから頑張ろう!」
ギリギリのところで踏ん張れたのは、この言葉があったことと、ダンガンロンパの出来の良さ。
少しでもダンガンロンパに追いつこう。そう思うことで、折れかかった心をつなぎとめました。
この頃から一気に、ガチトラ!の中身が激変し始めました。
もちろん良い方向に。
ちなみにこのあたりから『ガチトラ!』という名前になりました。



『少しずつ変わる評価』
「ダンガンロンパ」発売から少し時間が経ち、ようやく社内も落ち着き始め、
徐々に「ガチトラは今どうなっているのだろうか?」という声が聞こえ始めました。
タイミング良く、迷走し続けたゲーム性は、今の形にまとまりつつありました。
イベントもかなりの数出来あがっていたこともあり、バランス調整は抜きにして
とりあえず最後まで遊べるレベルにはなっていたのです。
ということで、早速サンプルディスクを作成。社内の人間に渡します。


「喧嘩番長と違うんだね」
「バトルいい感じですね」
「けっこうストーリー面白いじゃん」などなど、少しずつうれしい反応が出始めました。


この時点のサンプルディスクは、ゲームバランスの調整もしてないし、
生徒側バトルAIも未完成、イベントシーンに関しても効果音なしなどなど
足りない部分も多く、その辺に関しては脳内補完してもらうしかありませんでした。
でも、社内スタッフの「ガチトラ!」への印象は、日に日に変わっていきました。


何度も何度も心が折れそうになるのを耐え続け、ここまで踏ん張って良かった…


もちろん、心が折れかかったのは僕だけじゃありません。
スタジオ斬の開発スタッフは、もっと厳しい環境にあったはずでした。
作ってもひっくり返されたり、監督は全然仕様を決めないし…とにかくキツかったはず。
それでも、ここまで踏ん張ってくれました。
感謝してもし足りないです。



『体験版』
このブログでも書きましたが、体験版は作らない予定でした。
しかし、発売前にどんなゲームなのかちゃんと伝える必要があるということで
急きょ、体験版の内容について会議を行いました。
1話を切り取るか?ミニゲームだけ遊べるようにするか?など、色々な意見がありましたが
「ガチトラ!」は、ストーリーありきのゲームということで、切り出すのは厳しいという
結論に達しました。切り出せないとなると、もはや専用ストーリーを作るしかありません。


発売日との兼ね合いから、体験版を出すタイミングを逆算し、そこから体験版に
使える時間を計算します。


実質2週間ぐらいしかない…


製品版もまだ完成していない…並行作業で体験版を作り始めました。
僕も専用ストーリーを書き始めました。声優さんの収録、イベントの作業時間などを考えると
僕に残された時間は3日程度。時間は無い、でも体験版やるからには「ガチトラ!」の
雰囲気をしっかり伝えられるものにしなくては意味がない。
書きなおす時間もないので、一発勝負で書き上げます。


結果…マグロネタ(汗)


製品版のストーリーも強引なところがありますが、体験版のストーリーはあまりに強引すぎるし
急きょ作った生徒モデルも、ちょっと地味だったりと…反省する点は多いです。
でも、どういうゲームなのかという部分については、何とかわかってもらえるものになったと
思っています。製品版はもっともっと何倍も面白いので期待して下さい(キリッ



『ひとつの目標』
徐々に社内スタッフのモチベーションも上がり始め、「ガチトラ!」を取り巻く環境は
どんどん良くなっていきました。そんな時、ファミ通さんに「ガチトラ!」のクロスレビューが掲載されました。


9・9・8・8 ゴールド殿堂
今週はコレを買え!においても、イチオシしてくださいました。


前回のブログにも書かせていただきましたが、この評価が全てではありません。
最終的な評価は、購入して下さるユーザー様の声です。
でもしかし、この業界でゲームを作っている以上、メディアさんにこういった評価を
もらえたということは、ただただ素直にうれしいことなのです。
ファミ通さんで殿堂入りする…これは確実にひとつの目標だったと思います。



『最後に』
ゲームを作るには、お金や開発期間など様々な制約があります。
その中で、どれだけ面白いゲームを作り、まとめ上げるか?これが全てです。
そう考えると、僕が作ったゲームは今まで、何かが欠けていたと思います。
期間内に納められない仕様を出したり、技術的に厳しいことを無理やりやらせたり…
ぬるくなってしまう仕様は、ゲームとして成立してなくても排除したり…
自分が考えた企画を表現することが全てだったように思います。


でも「ガチトラ!」は、お金を出して購入してくださるユーザー様の気持ちになってどうすれば値段以上に楽しんでもらえるか?
プレイして良かったと思ってもらうためには何をすれば良いか?
本当に色々なことを考え、作ってきたその結果、「課題はまだまだあるものの何とか満足していただける形になったのでは」と、思っております。


ゲーム自体は、いわゆる「バカゲー」というくくりになると思いますが、「ガチトラ!」は、全ての関係者が、極めて真面目に本気で取り組みました。


一人でも多くの方に、僕たちの本気を感じてもらい、遊んでいただけたら最高に幸せです。



4月21日   ガチトラ!総合監督   松本 朋幸