イルカって、可愛いですよね。

テレビで見ると、スイスイ泳いで、ピョーンと跳んで、楽しそうに鳴いている。

「わぁ、可愛い♡」
「イルカと触れ合いたい♡」

まあ、そうなるよね。

私も、そう思っていました。

ところが。

以前、ダイビングをしに行ったときのこと。

ボートエントリーだったんですが……

私、船酔いしました。

そして、見事に吐きました。

しかも、船の外で。

「うぇぇぇ……」

と、海に向かって吐いている私。

すると。

どこからともなく、

イルカが3頭、寄ってきた。

……え?

なんで?

しかも、その3頭。

私の吐いたものを見つけたのか、海面近くまでやってきて、

大きな口をアーン。

そして、

「ケケケッ」

と、まるで笑っているみたいに鳴く。

いやいやいや。

ちょっと待て。

こっちは船酔いでゲロゲロなんですけど。

お前ら、何しに来た?

そして私は思った。

「イルカ、可愛い〜♡」

……どころじゃない。

げんなりした。

いや、イルカが悪いんじゃない。

悪いのは、たぶん私のほうだ。

イルカからしたら、

「おっ、なんか食べ物っぽいものが落ちてきたぞ」

くらいの話なのかもしれない。

ただ私の頭の中にあった「イルカ」というものは、

青い海を優雅に泳いで、
人間と仲良く遊んで、
キュルキュル鳴く、

そんなイメージだった。

ところが現実のイルカは、

吐瀉物に寄ってきて、大口をアーンと開けて、ケケケッと笑いながら食べようとする。

……。

そりゃ、げんなりもする。

でも、これってイルカが変なんじゃないんですよね。

私が勝手に「可愛いイルカ」というイメージを作っていただけ。

実際に近くで見れば、イルカもちゃんと生き物。

食べる。
泳ぐ。
鳴く。
興味を持ったものには寄ってくる。

そして、何を食べるかなんて、人間の「可愛いイメージ」には合わせてくれない。

これ、イルカに限った話じゃないと思う。

犬だって鋭い歯を持っている。

飼い犬だって、本気で噛まれたら普通に痛い。

虎なんて、あの前足でバリッとやられたら、そりゃズタズタですよ。

毒を持っている生き物だっている。

なのに、

「可愛い〜!」

だけで近づいていくのは、どうなんだろう。

生体を知らずに近づくの、普通に危ないでしょ。

まず知る。

どういう生き物なのか。
何を食べるのか。
どういう習性があるのか。
何をすると危険なのか。

その上で近づく。

そのほうが、ずっと面白い。

だって、実際に見てみたら、

「えっ、そういうことするの?」

ってことが、いっぱいあるから。

今回のイルカだってそう。

私の中では「可愛いイルカ」だったのに、実際に会ったのは、

船酔いで吐いている私に3頭で寄ってきて、大口をアーンと開けて、ケケケッと嬉しそうにしているイルカ。

……お前ら、なかなかやるな。

でも、そういうところを知ったほうが、私は面白いと思う。

知らないまま、

「可愛い♡」

だけで終わるより、

「うわ、こいつ、こんなことするんだ!」

のほうが、世界は断然面白い。

だから私は、これからもいろんなものを知りたい。

可愛いだけじゃないところも含めて。

だって、

世界は知らない事だらけ。