2011年3月11日は金曜日だったんです。


映画のアフレコをしてました。

役者の声が上手く撮れてなかったり

完成や声援を重ねたりしたい時

あとから役者が吹き込むのね


ふと

天井から吊られてるマイクが揺れだして

なんとなくやり過ごそうと思ったけど

これはマズイってなって

とにかく建物の外に出た


あの時のことは今でも鮮明におぼえてる


天井からパラパラと粉が降ってきて

建物が歪んで壁が崩れて降ってきてた


外に出たら出たで

車が地面から飛び跳ねるように揺れてて


一緒にいた後輩は神戸出身の子で

阪神大震災がフラッシュバックして

怖い

吐きそうだ

といって

うずくまって大泣きしてた


そのあと少し雨が降って

でも建物に入って平気かという話になって

スタッフさんが

「この施設は建て直したばかりで

最新の耐震構造だから中に入って大丈夫」

と確認してくれて


テレビで波が地面をさらう様子をずっと見てた


そのときアフレコをしてたのは「のぼうの城」。

作品の中には水攻めのシーンがあって

あの段階では

「これはしばらく上映できないねぇ」

なんてまだ言える状態だった。


結局帰ることも出来ず

明日もまだ収録はしないといけないし

余震もあるから1人も心細いし

楽屋を解放してくれて

みんなで撮影所に泊まった


翌日はまずは仕事をして

あとは電車が動いていれば帰りましょうってことで。


わたしは最寄り駅までは帰れなかったけど

そこそこ近くまで電車は動いてて

何駅か歩いてかえったよ



ボランティアにいこうとおもったけど

自分の面倒を自分で見られないと邪魔になる

だったら寄付するしかない

寄付もできないなら電気消すしかできない

なにができるのか

なにをしてもよくて

なにがいけなくて

なんかよくわかんなかった


で、

劇場の灯りが消えた。


エンタメはおなかいっぱいにならない。

笑わせてる、笑ってる場合じゃない。

劇場でもすごく電力つかう。

本番中も余震あるし照明揺れるし怖くて観ていられない。

わたしたちのやってることはなにかなぁって。

わかんなかった。







でもいまは

すこしがんばれるようになった


だって

わたしがすごく苦しいとき

自分ばっかりつらいとおもってるとき

エンタメに救われたから



わたしは

ずっとこの世界にいる




だから

わすれない