〇〇はん、化粧の時間どす。
はようここにお座りやす。

わての手であんさんは可愛らしい少女から妖艶な女になるんや。
わて以外の男に逢うために。

わては、ほんまにこの瞬間が嫌や。わて以外の男に魅せるために化粧して、着物を着せなあかんこの瞬間。


なにもないように、微笑みながらあんさんを送り出すのがつらい、苦しい。

わて以外の男のための化粧なんかしたない、あんさんを行かせとうない。
お座敷であんさんに触れる男を斬り殺したなるほどの想いやのに。
わてらには楼主と遊女としての立場がある。わてとあんさんの恋は知られたらあかんこと。
どれだけ愛しおうてても隠さなあかん関係や。

そやからわては平気なふりして、あんさんを送り出す。
胸の内に悋気の情を秘めて。

そやけど覚えておきなはれ。
なにがあっても、あんさんはわてが守る。
あんさんをこの腕に抱いてええのは、わてだけや。
あんさんに触れてええのはわてだけや。

俺以外の男のためにどんな化粧をしたって、どんな着物を着たって、お前は俺のもの。
俺以外の男にお前は絶対触らせない、もちろん抱かせない。
こればっかりは慶喜にだって、許さないよ。
お前は俺だけが愛していい、俺だけの大切な存在だから。