20年ぶりに、あの4人が再び集まる夜がやってきた。
それだけで胸の奥がざわついた。
嬉しさと不安が入り混じる、そんな夜だった。
エーイチから癌のことを聞いて数日後、
またエーイチから電話がきた。
「お前と呑んだ次の日さ、タケシと呑んだんだあよ。
「したらタケシがさ、お前を入れて3人で呑もうぜってしつこいんだよ。」
「明日はどおよ」
また今回も本当は用事があった。
でも、エーイチがこの先どうなるかわからない。
万が一のことがあったら、絶対に後悔する。
そう思ったら断れなかった。
「ああ、わかった。いいよ」
エーイチは相変わらずだ。
一方的に喋って、用件だけ言ったらガチャン。
でも今日の電話はうれしかった。
またエーイチに会える口実ができたってこと。
……恥ずかしいけど。
翌日はあいにくの雨。
幕張駅で待っていると、エーイチはいつもと変わらぬ様子でフラフラやってきた。
「いやー雨だなー、悪かったな。あ、そうそう、これやるよ」
渡されたのは藍子先生のCD。
「調子乗って何枚も買っちゃったもんで余ってんだよ」
ありがたいような、ありがたくないような。
まあ、くれるってんならもらっておく。
そうこうしているとタケシも到着。
3人そろって駅前通りをぶらぶら歩く。
こうやって3人で歩くなんて何年ぶりだろう。
懐かしい。
手っ取り早く、駅から一番近い居酒屋・庄屋に入る。
するとタケシがやたらと仕切る。
「座敷だよな、座敷。座敷がいいよな」
「俺たちうるさいからよ、席は奥! なっ、一番奥案内してくれや」
なんて店員に注文つけてみたり、
「呑み放題でいいよな、呑み放題!」
と勝手に注文入れてくれたりしてな。
まあいい。こうやって調子に乗せておけば、
最後のお会計もばっちり出してくれるだろう。
ということで乾杯して呑み始める。
しかし、俺だってタケシだって馬鹿じゃない。
そのまま馬鹿呑みして馬鹿酔っ払いするわけにはいかない。
まずは、エーイチの検査結果が気になってしょうがない。
「で、どうよ。検査の結果はどうだったんだよ」
するとエーイチはメモを片手に語りだした。
エーイチだって馬鹿じゃない。
いや、当たり前だけど真剣だ。
医者に聞いたこと、言われたことを事細かにメモしていた。
難しい話でよくはわからんけど、
とりあえずわかったのは 早期発見 だったこと。
転移は無さそう だということ。
つまり、治る可能性が高いということだ。
治療法は3つの選択肢があるらしい。
① 手術して切る
② 放射線や投薬による化学療法
③ 放医研で研究中の特殊な方法(臨床試験前で効果は未知数)
で、またタケシが吼える。
「医者に聞け! どの方法が一番得意なんだって!」
「得意なやり方が一番イイに決まってんだろ!」
「そんなわけのわからねぇモルモットはダメだ! 俺が絶対に許さねぇ!」
はいはい、まあいいから。
エーイチの話を聞けって。
エーイチが選んだのは①の手術。
悩みに悩んだらしいが、化学療法より確実性があるとのことだった。
お世話になるのは千葉大附属病院。
入院は1990年10月7日。
手術は10月14日。
退院は未定。
あとはエーイチに、そして医者に頑張ってもらうだけだ。
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