風邪を引いた。
自慢と言ってはなんだが、私は子供のころから滅多に風邪を引いたことがない。
やれ鈍感だ、やれ愚鈍だと揶揄されてきた身の上だが、健康であることに感謝こそすれ、疎ましく思うことはなかった。
むしろ、健康であることに感謝してきたつもりである。
健康であることに感謝し、常に健康でありたいと考え、事実、健康であるように最新の注意を払って生きてきた。
それでも今年は風邪を引いた。
風邪になると、普段どれだけ感謝していても、健康であることの有難みというものは骨身に沁みるものだ。
思うように体が動かない。
まるで途方も無い労力を消費して他人の体を操縦しているかのよう。
健康というのはなんと透明で、有難みに乏しく、どんな奇跡よりも偶然的なものであろうか。
病床に伏せるにつけ、私は健康であることに感謝する。
健康であるということは、自然ではないからだ。
常に気を使い、気を配り、気を揉んでも、一年間なんの不具合もなく健康でい続けるということは難しい。
なのに、我々はついつい、健康であるということへの感謝を忘れ、あまつさえ幸福になれないことへ不満を抱く。
そういうことではいけないのだ。
まずは、健康であること。
そのうえで、余剰の全ては成り立っている。
健康であるがゆえに、我々は不満を抱く。
そのことを、忘れないでいたいと、強く思う。
