ぼくが 帰るとまもなく
まだ八月に入ったばかりなのに
海はその表情を変えはじめた
白い歯をむき出して
大波小波を ぼくにぶっつける

ぼくは 帰るとすぐに
誰もなぐさめてくれないので
海になぐさめてもらいにやってきた
海はじつにやさしくぼくを抱いてくれた
海へは毎日来ようと思った

秋は 海へまっ先にやってくる
もう秋風なのだ
乾いた砂をふきあげる風だ
ぼくは眼をほそめて海を見ておった
表情を変えた海をばうらめしがっておった

 

 

                   青空文庫

 

 

この詩からすぐに思いついたのは中原中也の北の海

 

でも今日は穏かな海の詩を一つ

 

青樹の梢をあふぎて

 

まづしい、さみしい町の裏通りで、

青樹がほそほそと生えてゐた。

 

わたしは愛をもとめてゐる、

わたしを愛する心のまづしい乙女を求めてゐる、

そのひとの手は青い梢の上でふるへてゐる、

わたしの愛を求めるために、いつも高いところでやさしい感情にふるへてゐる。

 

わたしは遠い遠い街道で乞食をした、

みぢめにも飢ゑた心が腐つた葱や肉のにほひを嗅いで涙をながした、

うらぶれはてた乞食の心でいつも町の裏通りを歩きまはつた。

 

愛をもとめる心は、かなしい孤独の長い長いつかれの後にきたる、

それはなつかしい、おほきな海のやうな感情である。

 

道ばたのやせ地に生えた青樹の梢で、

ちつぽけな葉つぱがひらひらと風にひるがへつてゐた。

 

朔太郎の中でも好きな詩の1つです。

 

小さい頃好きだった曲 突然思い出しまして↓

 

 

 

ついでに

ハタピーさんのブログより↓

その通り!

 

 

 

 

 海月