夜汽車の中で

竹内浩三


 


ふみきりのシグナルが一月の雨にぬれて
ボクは上りの終列車を見て
柄もりの水が手につめたく
かなしいような気になって
なきたいような気になって
わびしいような気になって
それでも ためいきも なみだも出ず
ちょうど 風船玉が かなしんだみたい

自分が世界で一番不実な男のような気がし
自分が世界で一番いくじなしのような気がし
それに それがすこしもはずかしいと思えず
とほうにくれて雨足を見たら
いくぶんセンチメンタルになって
涙でもでるだろう
そしたらすこしはたのしいだろうが
そのなみだすら出ず
こまりました
こまりました

 

 

                                                          青空文庫

 

 

 

でも 率直な詩だ

雨の日は こんなセンチメンタルになる

 

一月の雨の夜汽車

濡れるシグナル

そして上りの終列車

傘の柄から伝わって漏れる雨が

手にジンジン冷たい

・・・・

・・・・

題の「夜汽車の中」だけど

作者は 踏切に立っている(と思う)

そこで上りの終列車を見ている

うーん

どのように考えたらよいのかなあ

 

 

海月