柳本雅寛先生振付「黒蜥蜴」 | げみスタ・えっ?!日記

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荻窪でダンススタジオを営む、げみの徒然なる日常。




お久しぶりの商業演劇は、
デヴィッド・ルヴォーさん演出の「黒蜥蜴」。


縁あって柳本先生が振付を担当し、
松尾望さんと小松詩乃さんが
ダンサーとして出演しています。

 

江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化、
美輪明宏さんの主演で有名ですが、
今回は中谷美紀さん。

 

中谷さんは映像が中心に思われがちですが、
最近では一人舞台とかに挑戦し、
評判も上々のようなので、
期待を胸にいざ日生劇場へ。

 

客電がゆっくり絞られることなく、
何の前触れもなく唐突に、
音楽と共にいきなり舞台が始まる、
……という趣向は新鮮で、
逆に一気に舞台の世界に引き込まれます。

 

回り舞台が多用され、
それに伴う映像や速度にも配慮があって、
会話劇でともすれば平板になりそうな舞台を
より動的に、立体的に見せてくれます。

 

舞台カミテに生バンドが置かれ、
役者のナマの演技に寄り添った曲はオリジナルで、
リハーサル時に演出家の指示沿って創られたとか。
各シーンにマッチしていて、演者も観客もテンションが上がります。

 

中谷さんは「女盗賊」を意識したからか、
実年齢よりもちょっと上な感じの役作り。


いや、実年齢と近いけど、
女優ゆえ若く見える美貌でしょうか?!

役者さんは総じて適材適所。

 

俺は乱歩は全然読んでないんだけど、
明智小五郎のちょっと嫌味なくらいな
「すかした感」を出す井上芳雄さん。

 

ミュージカル俳優かと思っていたけど
(そういえば奥さまは知念里奈さん)、
ストレートプレイもなかなかなもの。

 

まぁ、ドシリアスドラマではなく、
キャラクター化された役という
アプローチのし易さはあったかな。

 

お話のからくりは「実は変装していました」
というネタが多いんだけど、
(当時としてはそんなものなんだろうけど)
その処理も上手で、芝居の流れの中で、
無理なく分かりやすく進行していきました。

 

舞台が回って廊下側のドアに部屋番号が書かれていて、
現在の状況をより明確にするとか、
長い棒一本で船の甲板を表現しちゃうとか、
スクリーンの向こう側から手のひらで見せる表現とか…、
キラリと光る演出も、随所にあって感心させられます。

 

ダンサーの二人は、全体の8割方、舞台に出てたかな?

 

黒蜥蜴に纏わりついている手下、みたいな役で、
(スタッフさんには「ヤモリちゃん」と呼ばれていたらしい)
明確に振付された部分は限られているんだけど、
演技が進行する横で、ただらせん階段に絡んでいるとか、
微妙に存在を消しながらも存在する、といのも、
メンタル的にもなかなか大変なんじゃないかな、と思います。

 

銀色のおかっぱ、パンダのような隈取りで、
動きのあるシーンでは舞台全体を引っ張る。


床を這いまわるスタイルの動きが、
柳本先生のダンススタイルに合っていて、
こういう存在の仕方やムーブメントは、
やっぱりコンテンポラリーダンサーでなくちゃできないでしょ。

 

二人とも、いい仕事をしていたと思いますよ!


商業演劇のみなさま、もっと彼らを使ってやってください~!

 

(2018.01.23 所見)