注 ※ 本ブログの全ての記事は、極力 PC版にて、
ご覧になられる事をお勧め致します。
スマートフォン版だと、非常に読み辛い可能性がございます。
では、1回目の欧州編、2回目の日本編と続き、
3回目は、米国メーカーのヘッドフォンの紹介である。
まずは、アナログレコード関係でも有名な、
米国が誇る SHURE 社の開放型のヘッドフォン、
SRH1440 からだ。
SHURE SRH1440
このヘッドフォンも非常に音の良いヘッドフォンだ。
包まれるような装着感がとても気持ち良く、
極めて快適で心地良い。
音抜けの良さ、音の明瞭ざやメリハリは、
フラッグシップ機の SRH1840 以上で、
全域に渡って透明感に溢れている。
音の傾向は違うが、SENNHEISER HD560S や、
ベイヤーの DT770 PRO X、GRADO のヘッドフォン等にも、
音の抜けの良さでは決して負けていない。
SRH1840 よりもメリハリが強く、
パンチとキレのある音で、音楽のノリも良く、
人によっては、SRH1840 よりも、
こちらの方が好みな人もいるように思う。
私自身も、ロックやポップスを聴く前提なら、
SRH1440 の方が、断然好きである。
音色は非常に明るく、極めて開放的で、
高域の主張が非常に強い。
前述の ATH-M70X や、DT770PRO X、
後述のGRADO SR325X 等よりも高域の量が多く、
私の所有するヘッドフォンの中では、
最も高域の存在感が強く、透明感と切れ味に秀でている。
なので、ハイハット等、シンバルの表現は、
本機が最も気持ち良いかも知れない、
と感じるくらいに素晴らしい。
AKG K701 に、更に厚みを加えたような質感だ。
全域に渡って、音の抜けが抜群なので、
スカッと爽やかコカコーラ、みたいな爽快な音だ。
ソースによっては、少し高域が強過ぎると
感じるかも知れないし、人によっては
高域がキツ過ぎると感じると思われるが、
個人的には、丁度良いくらいである。
明らかに、ロックやポップスを聴く人を
対象に音作りしているように感じる。
SRH1840 との大きな違いは、音の密度感と、
一つ一つの音の表現の丁寧さ、緻密さ、
そして、全体的な音のバランスや、
音楽の見せ方、表現の仕方だろうか。
本機は、よりストレートに音楽を表現する。
SRH1840 の下位機種と言うよりは、
音楽の表現、音の方向性が全く違うので、
ロック、ポップス向きのフラッグシップ機、
と言った印象である。
本機は繊細で柔らかな表現よりも、
ノリや勢い、キレの良さで聴かせるタイプだ。
解像度も相当に高く、音の見通しもすこぶる良い。
ボーカルは水々しく、癖は皆無と言って良いくらいで、
特筆すべきは、発音が非常に明瞭で分かりやすい。
音色は非常に明るく、陰影感は殆ど感じない。
全ての音に光が当たって影がない、と言った、
まるで、無影灯のようなイメージの音である。
クリプシュのスピーカーや、
昔流行った、インフィニティやサウンドストリーム、
はたまた、往年のアルニコ時代のJBLの
カリフォルニアサウンドを彷彿させられるような、
そんな傾向の音だとも感じたので、
ハードロックにも向いているように感じた次第だ。
クリプシュやインフィニティ、
サウンドストリーム、アルニコJBLなんかの、
明るく開放的なアメリカンサウンドが好きな方は、
一聴の価値ありだと思う。
逆に、ブリティッシュサウンドが好きな方には、
全く向かないように思う。
解像度 ★★★★★ 4.8
高域 ★★★★★ 4.9
中域 ★★★★★ 4.7
低域 ★★★★★ 4.6
音の厚み ★★★★⭐︎ 4.3
重心の低さ ★★★★⭐︎ 4.3
総合点 27.6 / 30
次は、「世界で最も音の良いヘッドフォン」と言われた、
SHURE 開放型ヘッドフォンのフラッグシップモデル、
SRH1840 だ。
SHURE SRH1840
私が持っているヘッドフォンの中では、
GRADO RS2x に次いで、最も高額なモデルの一つで、
購入当時は、9万円程していたように思う。
このヘッドフォンは、正にリファレンス的な音で、
一般的には、ほぼ完璧と言えるような音を紡ぎ出す。
何よりもまず、音のバランスが秀逸である。
いわゆる、典型的なピラミッドバランスである。
開放型としては、低域も充実していて、
力感溢れ、解像度も高く、躍動感もあり、締まりもあり、
ベースラインも明確に聴き取れる。
帯域もかなり下の方まで出ている。
ソースに含まれる全ての音が、
明確に聴き取れるイメージだ。
音色はニュートラルだが、どちらかと言えば、
明るい傾向で、適度な華やかさがあり、
高域は非常に繊細で優しく、情報量は多いが、
あまり主張はせず、かなり穏やかで大人しい印象である。
音圧感やノリの良さ等は、あまり感じられず、
モニターらしく、あくまでも客観的に、
たおやかに音楽を表現する印象である。
しかしながら、
極めてソースに忠実な音を再現しているようでいて、
実は巧みに音を整えられている印象もあり、
それが功を成して、耳当たりは非常に良い。
より高解像度で精密計測機のような、
audio-technica M70Xと比較すれば、
本機の方が、かなり音が柔らかく、
ふくよかで、落ち着いた音楽表現だ。
M70Xのような鋭さやキレは、殆ど感じられず、
響きも適度にあり、若干の色付けを感じる。
また、非常に安定感のある落ち着いた音なので、
穏やかで大人しい音に感じるかも知れないが、
聴き疲れの全くしないタイプの音なので、
リスニングにも問題なく使用出来ると思う。
聴き込む程に味が出るような、
スルメタイプの音とも言えるかも知れない。
人の声の再生は文句無しに素晴らしいのだが、
高域があまり目立たず、私には大人し過ぎるので、
その部分は少々物足りない。
シンバル等の金属楽器の表現、音色も、
非常に繊細で優しい表現なので、
刺激が無さ過ぎて、私の好みでは無い。
特にジャンルも問わないが、個人的所感では、
エッジのキレや瞬発力、適度なメリハリ、
迫力が求められる、ロックやジャズ等よりも、
クラシックや女性ボーカルに、
特に向いているように思う。
モーツァルトの名曲の一つ、
フルートとハープの協奏曲 ハ長調 K299 等は、
このヘッドフォンで聴くと素晴らしい。
ランパルのフルートが、まるで空中に漂うように、
心地良く、優しく、再生してくれる。
全体的なバランスが秀逸な事と、
何よりもボーカル帯域の表現が素晴らしい、
と言うのが私の所感である。
装着感が非常に心地良く、秀逸な事も
併せて付け加えておきたい。
解像度 ★★★★★ 4.9
高域 ★★★★⭐︎ 4.4
中域 ★★★★★ 4.9
低域 ★★★★★ 4.8
音の厚み ★★★★★ 4.7
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 28.3 / 30
お次は、「変態紳士向けヘッドフォン」と呼ばれている、
ニューヨークはブルックリン生まれの
ユニークで、超個性的なメーカー、GRADO だ。
実は、私が最も好きなメーカーである。
GRADO SR125X
GRADO は、アメリカはニューヨーク、
ブルックリンで約70年前に創業された、
家族経営のメーカーである。
多くのメーカーが、中華資本に買収されたり、
中国生産に切り替わる中、
今も頑なに、ニューヨーク ブルックリンの自社工場で、
熟練工によって、手作業で作られているのだ。
こう言う点は、とても好感が持てるし、
ついつい、応援したくなってしまう。
中華資本に買収される事無く、
今後も生き残って欲しいと、
ただただ、切に願うばかりである。
レトロな外観と、コタツのコードのような、
極太のケーブル、何かと唯我独尊な、
非常にユニークで個性的なメーカーである。
ある意味、かなりマニアックでニッチな、
巷では「変態紳士向けのヘッドフォン」
とも言われているようだが、
正に、変態紳士な私にピッタリである。
私が持っている GRADO の中で、
最もリーズナブルな、 SR125X は、
プレステージシリーズの丁度真ん中のモデルなのだが、
シリーズ中、最もバランスの取れたモデル、
とも言われているようだ。
実際にバランスは秀逸である。
ジャンルを問わず、何を聴いても、
気持ち良く聴かせてくれる。
また、まるでオモチャのような、
チープな外観からは想像が出来ないくらい音が良く、
とりわけ音の抜けが素晴らしく良い。
GRADO は総じて、音の抜けが抜群である。
そして、音楽が生き生きとしている。
私が所有するヘッドフォンの中で、特に音抜けが良い、
AKG K712PRO や、beyerdynamic DT770PRO X、
SENNHEISER HD560S 、SHURE SRH1440、等にも、
負けずとも劣らない、抜群の音抜けの良さだ。
想像していた以上に、高域が爽やかで柔らかく、
個人的には、もう少し硬質な高域を期待していたのだが、
意外と常識的な範囲であった。
勿論、刺さるなんて事は皆無で、
私が所有する GRADO 製品の中では、
最も柔らかく、穏やかで優しい高域だ。
量的にも、他の所有機種よりも控え目だ。
中域は癖がなく、とても滑らかでクリーミー。
低域も軽快にリズムを刻み、ノリが良く、
ベースラインも分かりやすい。
全域に渡って、音が柔らかいので、
非常に聴きやすい。
特に、これと言った欠点が無く、
バランスの良い、とても音の良い機種である。
非常に軽快でスピード感のある音なのだが、
個人的には、もう少し音に重みが欲しいと感じるのと、
音場が狭めで、立体感に乏しいのが残念である。
音は抜群に良いだけに惜しまれる。
と、思っていたら、イヤーパッドを、
標準仕様のSクッションから、
SR325X に付属の、Fクッションに変えてみると、
中低域は厚みを増し、ボーカルは一歩前に迫り出し、
見事に欠点が克服され、更に音が良くなったので、
SR125x をお持ちの方は、
是非Fクッションを試される事をお勧めしたい。
解像度 ★★★★★ 4.7
高域 ★★★★★ 4.7
中域 ★★★★★ 4.8
低域 ★★★★★ 4.5
音の厚み ★★★★★ 4.5
重心の低さ ★★★★★ 4.5
総合点 28.3 / 30
GRADO SR325e
SR325eは、プレステージシリーズのフラッグシップモデル、
現行品の SR325x の前モデルで、
アルミ製のハウジングと本革製のヘッドバンドが
特徴の一つとなっている。
市場での評価がすこぶる高く、手放す人も少なく、
名機と言われているようだ。
中古市場でも殆ど出物が無い。
巷では、ロック専用機のように言われているが、
極めてバランスの良い音で、
エージング後は、高域が刺さる事もなく、
クラシックから女性ボーカルまで、
何を聴いても、音に実体感があり、
聴き応え抜群の音である。
高域から低域まで、全体的に音が分厚く、
とりわけ中域は厚みがあって、
音楽が薄っぺらくならないのが良い。
ライブハウスやコンサートによく行かれる方や、
あるいは、自身で楽器を演奏される方等、
生演奏に接する機会の多い人には好まれる音かと思う。
ロックやジャズでは本領発揮と言うか、
水を得た魚のように、ほぼ文句の無い再生である。
スピード感も抜群でキレがあり、音の抜けも抜群、
また、過剰な演出感もなく、生々しい音楽が聴ける。
後継機種の SR325x との比較では、
本機、SR325e と、ほぼ同じ音の、
次の、MS-2 で詳しく書いたので、
そちらを参照されたし。
解像度 ★★★★★ 4.8
高域 ★★★★⭐︎ 4.9
中域 ★★★★★ 4.9
低域 ★★★★★ 4.8
音の厚み ★★★★★ 4.8
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 29.3 / 30
ALESSANDRO Music Series Two
( GRADO SR325e の カスタム品 )
ALESSANDRO Music Series Two ( MS-2 )は、
上記、GRADO SR325e を、
アレッサンドロ研究所が手を加えたモノである。
アレッサンドロは、プロギタリストのエリックジョンソン等、
数々のプロミュージシャンに支持を得ている、
アメリカのカスタムメーカーである。
で、ALESSANDRO MS-2 だが、
正直、私の駄耳では、SR325e との違いが
殆ど分からない。
それだけ、SR325e の完成度が高く、
手を加える必要が殆ど無かったと言う事だろうか。
強いて言えば、若干 低域が力強くなり、
高域が洗練された感じだろうか?
とは言え、プラシーボ程度の差と言えるので、
両者は、ほぼ同じと思って良いかも知れない。
なので以下は全て、SR325e の感想でもある、
と言えるかも知れない。
SR325X との比較では、両者はよく似てはいるのだが、
MS-2 の方が、中域が濃くて厚く、低域もパワフルで、
SR325X よりも、ボーカル帯域が、
更に一歩、前に迫り出て来る。
つまりは、よりアグレッシブな音である。
高域は、SR325X よりも若干厚みがあって、
刺さり等、嫌な刺激は皆無であるが、
繊細さや伸びの良さは、SR325X の方に
分があるかも知れない。
また、低域の量感、力感、共に MS-2 が勝る。
ソニーロリンズのサックスが、図太く響く。
ジャズには最高に合うようだ。
SR325X の方が、より洗練されて落ち着いた音で、
雑味を無くし、整理されたような、
よりスマートな、オーディオライクな方向の音と言え、
MS-2 よりも密度感が低い分、聴感上の透明感は高い。
とは言え、MS-2 の透明感はトップレベルではある。
MS-2 の方は、よりアグレッシブな音で、
より生楽器の持つ音色、ヴァイブに近いと言えるだろう。
より、ダイレクト感のある音とも言える。
MS-2 を聴いた後だと、
325X ( Sクッション装着時) が上品で、
スッキリとオーディオライクな音に聴こえる。
より、オーディオライクな音が 325X、
より、生楽器やライブに近い、
ダイレクト感のあるフィーリングが、MS-2 ( 325e )
と言った印象を受けた。
どちらも甲乙付け難いが、よりオールマイティーに
器用にこなすのは、SR325X の方かも知れないが、
聴いていて感動を覚えるのは、MS-2 の方だろうか!?
特に、ロックや女性ボーカル、ジャズ等では、
MS-2 の方が、より迫力があり、没入感が得られる。
ただし、私の場合は SR325x は、
ノーマルのイヤーパッドである、Fクッションではなく、
Sクッションを使用しての感想だと言う事をご了承頂きたい。
解像度 ★★★★★ 4.8
高域 ★★★★⭐︎ 4.9
中域 ★★★★★ 4.9
低域 ★★★★★ 4.8
音の厚み ★★★★★ 4.8
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 29.3 / 30
GRADO SR325X
SR325Xは、SR325e の後継機種となる。
325シリーズのアイデンティティとも言える、
アルミ製の金属ハウジングと、
本革製のヘッドバンドを装備するが、
本革製のヘッドバンドに白いステッチが入り、
より高級感が増したルックスとなった。
また、コードに厚手の被覆が巻かれるようになり、
捻れにも強くなったようだ。
しかしながら、その分だけ重くなったようにも思う。
見ての通り、ルックスは非常にカッコ良い。
とてもクールな外観である。
そして、やはり本機も「音」が抜群に良い。
尚且つ、他の多くのヘッドフォンが、
こもった音に聴こえてしまうくらい、
音の抜けが抜群に良い。
本機と張り合えるくらいに音の抜けが良いのは、
他社機では、beyerdynamic DT770PRO X か、
SHURE SRH1440、SENNHEISER HD560S
くらいだろうか。
また、ただ音が良いだけの機種なら、
他にも沢山あると思うが、
本機は何よりも、音に血が通っている。
音に「力」があるのだ。
「生きた音」なのである。
極めて有機的で生命力が溢れる音楽を聴かせてくれる。
なので聴いていて、非常に楽しいし気持ちが良い。
他のヘッドフォンとは、根本的に音の質が違い、
楽器を演奏する人に好まれそうな音で、
いわゆる、オーディオ的な音ではなく、
生楽器、生演奏のヴァイヴを感じられる音なのである。
325e は、その傾向が一層強いのだが、
325X でも、その傾向は、かなり強く感じられる。
ハイファイ感は凄いが、音楽が薄っぺらい、
どこぞの高額機達とは、根本的に音の質が違っている。
その意味では、稀有な存在と言える。
その上で、高域、中域、低域のバランスが秀逸である。
「音楽」としてのまとまりが秀逸で、
一体感が素晴らしい。
SR125 との違いは、レンジの広さや解像度、
音の力感、重み、等だろうか。
また、SR125 の方が、高域の刺激も少なく、
柔らかく、滑らかで優しい音で、量的にも少ない。
325X も、当初想像していたよりも、
高域がジェントルで、特に刺さる事も無いし、
AKG やベイヤー、M70X 等の方が鋭いように思う。
また、同社の RS2X の方が、より高域が鋭い。
また、想像していた以上に、中低域が分厚く、
ボーカル帯域には非常に厚みがあって柔らかく、
また、開放型とは思えない程、低域が出る。
もっと腰高なバランスを想像していたが、
これは予想外であった。
バスドラムの表現も重みがあって素晴らしい再現だ。
レインボーのロストインハリウッド冒頭の、
コージーパウエルのドラミングなんて、
私が所有するヘッドフォンの中ではピカイチで、
これぞコージー!!と思わず叫んでしまう、
鳥肌モノの再生である。
音に勢いがある一方で、一つ一つの音の表情、
音のディテールも細かく再現される。
解像度も何の不満も無い、非常に高いレベルだ。
音場は少々狭く、脳内に直撃して来るかのような、
音の出方で、音場が濃密で、中低域が盛り上がるが、
イヤーパッドを、標準仕様のFタイプから、
LタイプやSタイプに交換すると、
音場も広がり、バランスが良くなり、
音の抜け感も更に向上する。
標準のFタイプは、中域に僅かな癖が感じられ、
少しもっさりとした印象があるし、
Lタイプは、中低域が少々痩せるので、
個人的には、Sタイプのイヤーパッドを
本機に装着した音が最も好きだ。
装着感的にも、Sクッションが最も好きである。
なので、本レビューは、
Sクッションを装着した前提での
感想となる事をご了承頂きたい。
ロックには本領を発揮し、ディストーションが掛かった、
エレキギターの再現は見事である。
この辺りは、SR325e と同様の傾向かと思う。
多くのヘッドフォンだと、音が綺麗過ぎて、
エレキギターの荒々しさやエッジの表現が、
あまり得意ではなかったりするのだが、
本機は、その辺の表現が素晴らしい。
弦にピックが当たる瞬間のニュアンスなんかも、
思わず顔がニヤつくような再現である。
私が所有するヘッドフォンの中で、
ことロックの再生に関しては、
325シリーズは群を抜いている。
ジャズも抜群に良い。
その一方で、バッハのヴァイオリン協奏曲も素晴らしい。
何というか、音の揺らぎのようなものが、
表現されるのである。
カラヤン指揮の、まだ幼き頃の、
アンネ・ゾフィー・ムターが演奏した、
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲なんかは、
本機で聴くのが一番好きである。
まるで、目の前の演奏を聴いているような気持ちになる。
やはり音に力があり、生命力を感じるのである。
だからなのか、生演奏のような聴きごたえがある。
かと言って、決して音が荒削りな訳でもなく、
音の粒子も細かいし、女性ボーカルも非常に生っぽく、
艶やか且つ滑らかに、そして柔らかく聴かせてくれるが、
DT770PRO X 等と比較すると、やはり若干の荒さはある。
荒さと言うか、他のヘッドフォン程には、
オーディオライクな音ではない、
と言う事なのかも知れない。
なので、荒さが気になるようなモノでもない。
また、その僅かな荒さ、アナログ感が、
ロックには功を成したり、
生っぽさのヴァイブにも通じているように思う。
何を聴いても、音楽としてのまとまりが秀逸で、
血の通った、力感溢れる音で楽しませてくれる。
音に「力」が内包されているのである。
ルックス、音、共に個性的で、唯我独尊であり、
妙に、世間の流れやリスナーに迎合したり、
媚びたりしない潔さ、ポリシーを貫く姿勢には、
非常に好感が持てる。
ロックから女性ボーカル、クラシックの協奏曲、
何を聴いても素晴らしく、ただただ音楽に浸れる。
これは真の名機だと思っている。
解像度 ★★★★★ 4.8
高域 ★★★★★ 4.9
中域 ★★★★★ 4.9
低域 ★★★★★ 4.7
音の厚み ★★★★★ 4.7
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 29.3 / 30
GRADO RS2x
2021年の暮れに発売された、
GRADO リファレンスシリーズのモデルで、
麻( ヘンプ材) を使用した圧縮材と、
メイプル材をハウジングに使用し、
本革製のヘッドバンドが特徴の一つとなっている。
RS1x と言う更に高価な機種があるが、
ドライバーが44mmから50mm径となり、
中域が薄くなるような気がした事と、
個人的に、RS2x の方が、よりオールマイティーで、
好みの可能性が高いと思えたので、
こちらをチョイスした。
やはり、GRADO のヘッドフォンは音楽が生きている。
この点が、実に素晴らしい。
ただ、音が良いと言うだけでなく、
音に血が通っているのである。
音が死んでいない。
正直、ほぼ完璧と言えるような音で、
ジャズからロック、クラシック、女性ボーカルまで、
何を聴いても、何の不満もない。
解像度や情報量も、M70x に負けず劣らずな印象で、
相当に高いレベルである。
また、圧倒的な明瞭感と音抜けの良さ、
全帯域に渡っての圧倒的な透明感の高さで、
音の抜け、明瞭さは、SR325x 以上で、
更に透明感も高く、より音が細やかで、
解像度、情報量も勝る。
とは言え、その差はほんの微差なので、
個人的には、SR325XやMS-2( 325e ) でも、
全く何の過不足も不満も無い。
また、RS2x は、レンジも広く、
解像度も抜群に高いと言う事もあって、
SR325e、SR325X や MS-2 よりも、
全体的に音の線は若干細くなり、
よりオーディオライクな音となっており、
325シリーズよりも若干、客観的な描写である。
ライブ感を求めるなら、325シリーズの方が良いだろう。
高域の鋭さも、325シリーズよりもあるので、
人によっては、高域がキツく感じるかも知れない。
尚、GRADO のヘッドフォンは、それなりに高価だが、
イタズラに、グローバリズム的なブランドマーケティングで、
価格を不当に釣り上げたようなモノとは根本的に違っている。
世界でも有数の人件費がバカ高いニューヨーク州で、
熟練工が今も手作業で、1台1台組み立てているからだ。
素材も本革や、高価な天然素材を使用している。
中国で、安いコストで大量生産したような製品とは、
根本的に素性が異なるのである。
モノに込められた信念が違う。魂が違う。
なので発する波動も違って当然なのである。
ある意味、高価でも仕方がないと、
納得出来る部分があり、
価格と価値がちゃんと釣り合っている、
健全で良心的なメーカーだと感じる。
また、GRADOのヘッドフォンは、
ケーブルに手が当たったり、擦れたりしても、
スクラッチノイズ等は、ほぼ皆無で、
スクラッチノイズが発生するヘッドフォンも多い中、
細かな部分まで抜かりが無い。
やはり「神は細部に宿る」のである。
個人的には、GRADO は、
最も好きなヘッドフォンメーカーである。
解像度 ★★★★★ 4.9
高域 ★★★★★ 4.9
中域 ★★★★★ 4.9
低域 ★★★★★ 4.8
音の厚み ★★★★★ 4.7
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 29.3 / 30
さて、最後に紹介する機種は、名門 PHILIPS の
フラッグシップモデルだった、X2 HR である。
PHILIPS は本来なら、欧州編で紹介すべきなのだが、
欧州編があれ以上、長くなるのは憚かれたので、
敢えて、こちらで紹介させて頂く事とした。
PHILIPS X2 HR
流石に、あの名門 PHILIPS が、
フラッグシップモデルとして、
世に出したヘッドフォンだけあって、
まず、造りが素晴らしく良い。
ヘッドバンドは本革なのか、
購入当初は、革の匂いがしていた。
装着感も抜群に良い。
肝心の音はと言うと、非常にバランスが良く、
極めてスケールの大きな音楽が展開される。
一般的には、ほぼパーフェクトと言える音かと思う。
audio-technica R50X を、
更にスケールアップさせたような音で、
極めてナチュラルで柔らかい音、と言った点で、
音の質感は両者、非常に良く似ている。
ただし、R50X の方が、メリハリ感は強い。
また、前述の SHURE SRH1840 を、
更にスケールアップさせ、
よりナチュラルな質感にして、音場を広げ、
高域のメリハリや切れ味を加味したような音、
とも言えるかも知れない。
開放型とは思えないような、非常に充実した低域で、
厚みがあって、躍動感もあり、非常に質の良い低域で、
かなり下の帯域まで伸びているように感じる。
私が今まで体験した開放型ヘッドフォンの中では、
トップ3に入るくらい、低域が充実していて、量感も多い。
本機よりも低域の量感の少ない密閉型も多いかと思う。
音漏れも少ないので、開放型と言うよりは、
密閉型と開放型の中間のセミオープンのような感じである。
中域は癖がなく、厚みがあり、
何よりも、響きがとても美しく、
ボーカルは生々しくリアルで、適度に艶っぽく、
ピアノの響きも非常に美しい。
ただし、ボーカルが一歩前に出るタイプでは無く、
少々引っ込んだような、奥ゆかしい印象なのが、
個人的には残念である。
個人的には、もう少しボーカル帯域に
主張の強さ、存在感が欲しいところだ。
高域も良く伸びており、
シンバルのハイハットの切れの良さ、
透明感、質感の良さ等、申し分ない。
情報量や解像度も、個人的には、
これ以上は求めないレベルで、全く問題無しだ。
柔らかい中域、適度に硬質で切れ味良く、
透明感のある高域、厚みがあって躍動感のある低域、
と見事なバランスで、各機種の良いとこ取りをしたような、
非常に聞き応えのある魅力的な音のヘッドフォンである。
ヘッドフォンとしての完成度は極めて高いと言える。
単に音が良いだけでなく、音が豊かと言うか、
非常に充実した、スケールの大きい音楽を聴かせてくれる。
音場もかなり広く、立体感抜群の音場で、
とにかく、音楽のスケール感が壮大で素晴らしい。
また、音量を上げても煩くならず、
ついつい音量を上げてしまう。
全体的に音が非常に柔らかく、
特に、中低域が柔らかく、ほぐれているが、
個人的には、少々ほぐれ過ぎと感じる。
聴き疲れは全くしないかも知れないが、
もう少し、ボーカルに張り等の緊張感や、
密度感、前に迫り出す迫力、圧が欲しい。
しかしながら、一般的には、ほぼ完璧と言えるような、
欠点の無い、バランスも秀逸で、聴き疲れもしない、
極めて優等生的な音かと思う。
装着感が素晴らしい事も相まって、
リラックスして聴くには恰好の機種だろう。
解像度 ★★★★★ 4.9
高域 ★★★★★ 4.9
中域 ★★★★★ 4.8
低域 ★★★★★ 4.8
音の厚み ★★★★★ 4.8
重心の低さ ★★★★★ 4.8
総合点 29.0 / 30
〜 総 括 〜
私が所有しているヘッドフォンは、以上となるが、
正直、どの機種も本当に良い音で、
比較をするからこそ、色々と違いが分かるものの、
どのヘッドフォンも聴いた瞬間、感動的に音が良く、
実際に感動を覚える。
どれもそれぞれが個性的で、
同じ音の機種はなく、それぞれに、
それぞれの良い音を具現化している。
後は、個々の音の好みの問題だろう。
個人的には、どれか1本だけ選べ、と言われれば、
あくまでも、私の音の好みで選ぶとするなら、
まずは、開放型から選ぶとすれば、恐らくは、
GRADO SR325シリーズ( 又は MS2 ) となるだろう。
ロック、クラシック、ジャズ、女性ボーカル、
何を聴いても私の好みのバランスで鳴ってくれ、
何よりも音に力があって、音が生きており、
音楽的な鳴り方で、聴いていて楽しいからである。
GRADO RS-2X も捨て難い。
音質のクォリティだけを見れば、
SR325シリーズ よりも明らかに勝るのだが、
音楽としてのまとまり、音の厚みは、
325シリーズ に分があるように感じる。
次点で、AKG K712PRO もしくは、
SENNHEISER HD560S となるだろうか。
尚、密閉型なら、beyerdynamic DT770 PRO X か、
YAMAHA HPH-MT8 の
どちらかになるかと思う。
両者共、ジャンルを問わず音楽に浸れる。
アグレッシブな音の快感を求めるなら、
DT770PRO X となるし、
リラックスして、まったりと音楽に浸りたい場合は、
YAMAHA HPH-MT8 となるだろう。
次点で、テクニカの ATH-M70X、
ベイヤーの DT150 だろうか。
私が所有するヘッドフォンの備志録は以上となるが、
少しでも、貴兄の参考になれば幸いである。
長文が疎まれる昨今に於いて、
最後までお読み頂き、心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。
〜 お陰様で、7周年! 〜
皆様方には、心より感謝申し上げます。
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