『ジョーズ』の血族『ザ・ディープ』 | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。

 

70年代の映画が好きである。CGの無い時代に一生懸命に頑張っていたと思える。本作だって今ならもっと臨場感溢るる画が撮れたろう。でも、これが好い。


『ザ・ディープ』 The Deep (77) 123分
梗概
バミューダ諸島の旅行者デヴィッド(ニック・ノルティ)とゲイル(ジャクリーン・ビセット)は、スキューバダイビングを楽しんでいたところ沈没船に遭遇。スペインのメダルと液体入りのアンプルを見つけて持ち帰る。そのアンプルは第二次大戦中に難破したゴライアス号の積荷、大量のモルヒネの一部だった。
モルヒネを狙って地元のギャング、クローシュ(ルイス・ゴセットJr)が二人に接近。ダイビングのプロ、トリース(ロバート・ショウ)とゴライアス号乗組員の生き残りコフィン(イーライ・ウォラック)を巻き込んで、モルヒネとスペイン船の財宝の争奪戦が勃発する。

原作が『ジョーズ』ピーター・ベンチリー。ちょっと似た感じの海洋モノだ。が、今回はサメがうようよするものの、モルヒネ回収を経ての財宝探しがメインとなる。


初っ端から海中シーンが続き、これではテンポが悪いのではなかろうか、との懸念もちらほら。
しかし、徐々に明らかにされるミステリ=スペイン船の財宝にフォーカスされるやスローにならざるを得ない海中アクションでもそれが却ってスリリングである。


あの『ブリット』(68)や『ヤング・ゼネレーション』(79)のような疾走感に満ちたアクションを得意とする印象のあるP・イェーツ監督だが、海中でも中々に緊張感を高める演出と編集で最後まで興味を持続させる手腕は見事。2時間超の尺でも飽きさせない。


ドラマは若き日のN・ノルティと70年代絶好調のJ・ビセットが、『ジョーズ』(75)のクイント船長R・ショウと手を組み、『クワイヤボーイズ』(77)、『愛と青春の旅だち』(82)の名脇役ルイス・ゴセットJr率いるギャングと対立する構図で進展。
そこにこれまた名脇役E・ウォラックが絡んでサスペンスを高めていく。


さほどに珍しくもないが、安定の図式はやはり効果大。観る者の興味を画面に吸引する威力は絶大。しかも、手練れの演出力が加われば最早無敵。深みは無くとも娯楽大作としての価値は十二分。興行的に大成功である。

単によくある財宝探しではなく、そこに麻薬を絡ませてのひねりがカギとなる。過去のお宝と現代のお宝を合わせてダブルの効果。
傑作とまでは言い難いフィルムではあるが、それなりに観客を引き付ける力があることは確かだ。


劇中『ジョーズ』の親戚みたいな巨大ウツボが、人間の頭丸かじりシーンには正直ビビった。冒頭でジャッキーが遭遇したのもヤツだったんだろう。個人的にはウツボが怖いので、当初から沈没船探索場面には緊張してしまった。お前ら、もちっと海中生物に注意しろよ、と。


エンディングはやや聖林的ご都合主義に思えるが、娯楽作品として割り切ればそんなにうるさいことを言わずに済むだろう。


標準的な物語も、演出力とキャスティングの妙で実力以上に好感する。
N・ノルティはありふれた容貌でやや薄い印象だが、美貌全開のジャッキーや、貫禄のR・ショウ、怪しいルイス・ゴセットとE・ウォラックなど地味ながらも芝居巧者が揃って◎

ショウの仲間で屈強な男ロバート・テシアの頭髪がある姿も珍しく感じる。

 *ジャッキーとニック・ノルティ*
 *ルイス・ゴセットJrとロバート・ショウ*
 *イーライ・ウォラック*

 *中央奥)ロバート・テシア*

  *通常ヘアモードの『超高層プロフェッショナル』と『ロンゲスト・ヤード』*

 

登場人物のタイマン場面はいかにも70年代風アクションで微笑ましく感じる。イェーツ監督とジャッキーは『ブリット』以来の顔合わせだ。
ジョン・バリーのスコアはサントラ盤LPもリリースされている。

 *ドナ・サマーのテーマ曲入りドーナツ盤*
当時の映画にしてはベトナム戦争の影が差さないところも敷居が低くて入り込みやすいだろう。

 *ドラッグの一歩手前、モルヒネアンプル*

 *大量のモルヒネ発見*
 *『果てしなき欲望』もモルヒネ争奪戦だった*

本日も最後までお読み下さりありがとうございました。


監督:ピーター・イェーツ
『ブリット』『ジョンとメリー』『ヤング・ゼネレーション』
原作・脚本:ピーター・ベンチリー
音楽:ジョン・バリー
『野生のエルザ』『ある日どこかで』『ダンス・ウィズ・ウルブス』