幸福感溢るる『ラ・ラ・ランド』 | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


何年か振りに劇場へと足を運んだ。

『レ・ミゼラブル』以来か?『マンマ・ミーア』は古過ぎるし…。って、どんだけミュージカル好きなんだよ。俺。

ま、兎にも角にも久し振りなので心も弾む。ロードショウ二週目、アカデミー賞授賞式前のタイミングで鑑賞したよ。


『ラ・ラ・ランド』 La La Land(’16) 128分
梗概:売れないジャズピアニスト、セブ(ライアン・ゴズリング)と売れない女優ミア(エマ・ストーン)が二度の接近遭遇を経た後、とあるパーティー会場で再会する。

相変わらず不遇の身を託つ両人だがこの日を境に親しくなる。『理由なき反抗』を観て、ロケ地の天文台に走る。そして、共に夢の実現を目指すことに。彼は本格的ジャズクラブ経営を。彼女は女優を。

セブは旧友ミュージシャンと再会。キーボーディストとしてバンドに誘われる。意に沿わない方向性のバンドであるが、夢のためと自分に言い聞かせつつ成功への道をひた走る。

その後すれ違いが重なり分かれた二人。5年後にお互いの夢を達成した姿を確認しあう。

 *この画のなんと鮮烈な印象よ*


これは、オマージュに非ず。ただ古典的名作を表層的になぞって引用したのみだ。なんて言われたりもする本作品。それは確かに当たっているのかも知れない。


だが、例えそれが本当だとしても、そのために本作品から得られる幸福感がいささかも褪色するわけではない。言うまでもなく映画とはすべからくは観客に夢を見させる装置である。であれば往年の映画好きの翁が暗闇の中で、ややジェームズ・ディーンだ、ああジーン・ケリーだ、おおフレッド・アステアだ、といちいち名画とスターを懐かしむのもアリと言へばアリではなかろうか? 

            *ジーン・ケリー*  *フレッド・アステアとシド・チャリシー*


例へば、ミアの部屋にはでかいイングリッド・バーグマンの壁紙が。彼女の口から『汚名』『カサブランカ』『赤ちゃん教育』といったバーグマンキャサリン・ヘップバーン出演作品名が飛び出す。

彼と『理由なき反抗』を観て、ロケ地で踊る。ちょっと違うが、彼がパーティー会場でバンド演奏するのはa~ha「Take on me」

そんな場面ににほくそ笑む。といった小さな幸せを断片的に感じることがあっても斟酌してもらいたい。

  *『赤ちゃん教育』ケイティとC・グラント*      *『理由なき反抗』 天文台の決闘*


でも、それって単なる懐古趣味じゃね?と冷笑されるだろうか?
いや、それでも結構。懐古趣味の何が悪い。「往年の映画ファン」を名乗っているのは伊達じゃないよ。
そんな自分は、普段から近年の米国映画、っつうかハリウッド映画の退廃振りに嫌気が差しているからね。

だからあまり新作映画を観ない、という事情もある。


例へば、『会議は踊る』というフィルム。
最後はビターだけど、あんなに幸福感に満ち満ちた作品などもはや製作されないだろう、できないだろう、という諦念がある。ハリウッド映画に至っては何をか況や、である。

*独映画 『会議は踊る』 1931年*


あるひは、『美女と野獣』なる仏映画。
終戦後わずか1年後にあのような底力を見せつける。そう、映画発祥の地としての歴史的矜持を帯びた作品。絶対に聖林映画には無理無理。

遂にあの「美女と野獣」の実写版が登場!なんつってる日本人がいることにも絶望的気分になる。

*仏映画 『美女と野獣』 1946年*


そうすると、いきおい昔日の作品指向へと傾いていく。ベトナム戦争を知らないがゆえに幸せな時代の米国映画。それと、欧州映画。
ただ、そればかりだと流石に食傷気味になるので、60年代以降の比較的新しいモノや、21世紀のモノを適度にブレンドしての鑑賞となるけどね。


そんなこんなで、エンディングが涙であっても『ラ・ラ・ランド』って幸福感が横溢する映画なんだな、と久々に感激。そう、幸福感。儚き夢。


そりゃデミアン・チャゼル監督がどんな基本的コンセプトの下に名画・名作を引用したのか、正直言って分からない。のは当然。

でも、一定程度の映画愛を抱き、先達への敬意を有しているということはまず間違いない。それらの作品群への憧憬が『ラ・ラ・ランド』に結実したんだろうな。

 

*衝撃の『セッション』*
 

前作『セッション』でも本作でも、主人公の演奏家がジャズについて熱く語るシーンがある。いずれも偉大な先人たちへの畏敬の念があふれていた。そして、その主張に自分も同感した。

そこで、ちらと思ったのは、彼もちょっとした、いや、ガチガチのコンサバ派かもな。ってこと。余談だけどね。


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。