長野の隠れ家はスキー場の元ペンションだった。

 

自分はスキーが趣味だが、スキー場でよく営業していない宿を見かけるたびに、あれを安く売っていないだろうかといつも考えていた。ある日「田舎暮らし」というホームページで田舎物件を見ていたら、ここを見つけた。やたら広くて安い。しかもアマチュア無線家が大好きな山の上。スキー場まで歩いて10分かからない。さらに自分の愛する志賀高原がバーンと見えたので即決した記憶がある。

 

いろいろ修理しながら7年維持したが、冬の3mの積雪には閉口した。冬に行くと道路から1mほど高い玄関のドアもほとんど雪に埋まっていたりして、玄関ドア前をスコップで掘り、体を滑り込ませるように穴に入り、雪のため外側に開かないドアを内側に開けて入ったこともある。家の前の道路は行政が除雪してくれるが、道路から玄関まで8mほどは誰も除雪してくれない(近所の除雪基地に依頼すると30分で1万ちかくかかる!)し自分で一人でやるのは不可能。初めて道路から3mの雪の壁を見上げた時は茫然とした。周囲のペンションは皆自前で大きい除雪機を持っていた。所有してしばらくは、除雪車が隣家との間から雪を斜面に捨てていてスペースがあったので、そこに冬も車を止められたのだが、最後の年に隣家の方が除雪車の排雪を止めさせたために車が冬停められなくなり家を使えなくなくなったのが、この家を手放した最大の要因だった。

 

それと長野のスキー場はやはり関東から遠かった。いつも軽井沢ICで降りていく半数近くの車を尻目にさらに1時間以上、上信越自動車道をひた走る。ICから20分位で到着するのだけは便利だった。3フロア合計600平米と、お客様が来た時は一人一部屋使える広さだったのはよかったが、遠いのであまり友人も来られなかった。距離は横浜から300km。高速代は土日割引や夜間割引を活用して片道4000円程、ガソリン代含め1回の往復で15000円位かかっていた。それに、鉄筋のため固定資産税も高いままで、交通費と税金を考えると負担を軽くしたほうがよいな、と考えたことも移転の目的ではあった。

 

その点、今の嬬恋村隠れ家は、ずいぶんと近くなった。横浜からだと、高速を使えば1時間しか近くならなかったが距離は200kmになった。移転したほぼ同じタイミングで車をプリウスに買い替えたが、同じガソリン代で前の車(レガシーツーリングワゴン260馬力ハイオクガソリン)の3倍の距離を走るので、ガソリン代は隠れ家まで片道1500円で済んだ。所要時間は高速だと3時間ちょい、下道は4時間45分から5時間半。この2時間短縮に高い高速代を払うのがだんだんばからしくなってきて最近は夜や早朝といった車の少ない時間帯を選んで全部下道で往復している。夜中到着するときはだいたい碓井バイパスから。帰るときはだいたい二度上峠から。往復で3000円しかかからない。1回飲みに行ったような金額だ。気軽に行けるようになったので、二週間に一度は訪れている。それに積雪は50cmくらい。一人でママサンダンプで除雪しても車のスペースくらいはなんとかなるレベル。森の奥だが、家の前までは管理事務所が除雪してくれる。

 

嬬恋村の今の隠れ家は「日本興業奥軽井沢郷」という管理別荘地。軽井沢なんてチャラいイメージがあったのだが、実際軽井沢の街中を走ってみると今までのイメージは崩れ、軽井沢はなかなか良いところだと認識を改めた。奥軽井沢郷と言っても名前だけで実際の場所は嬬恋村。偽軽井沢と言われても仕方がないが、気分だけまぁ軽井沢というところか。しかしこのあたりは軽井沢からも長野原からも車で30分、バスも少ないながら有るしスーパーやホームセンターコメリも20分位の近さなので、良い選択だったと思う。

 

何故かもう1軒の隠れ家の記憶がある。

その家は和風で古い元旅館のような広い家だった。元ペンションのような山の上ではなく、山あいの川沿いのやや暗い所に在った。昔風の木の階段があり二階の部屋は入り組んでいた。一階には大きな風呂があり、一度沸かしてきちんと入れた。音も記憶している。これは夢か幻か。夢だとすれば妙にリアルな夢だ。電気会社や水道会社から請求が来ていないし不動産関係の書類も家にないのでおそらく夢だったのだろう。2度ほどその家の夢を見た気がする。

 

写真は山の上の元隠れ家から見た朝日。