所用があり車で出かけた。
空知地方を走りながら、遥か遠くの雪の残る山を見ていた。
車窓の景色は高速道路で酔うくらい流れが速いが、遠くの山は微動だにしない。
山頂付近に雲が見えるまま。何であの雲は動かないのかなぁ?
不思議な気持ちで見つめつつ、所用も終え
「さぁ、時間もあるしこれからどうする?」
と亭主に問われ私はその山を指さした。
「あの山行きたい。雪もあんなにあるから結構高いと思うけど。」
妻はいつでも漠然とモノを言う。
後部座席から指をさす雪の積もった山を見て、亭主は「あ゛っ?」と不意に肺から呼気を漏らす様な声ではなく音を出す。
「アレって…」
連なる山の中から唯一、雲が晴れない山を私は指さす。
「あれだ、あれ。」
富良野近くにいた我が家の車は、取りあえず妻の言う「あれ」に向かって走り始めた。
山の方向に走れば近づくと言われれば、亭主も文句は言えない。
目標はあるものの、気持ち的には当てのない旅が始まった。
気付けば車のエンジン音が変わっている。飛行機に乗った時の様に鼓膜が変になる。
道路沿いの山桜も無くなり、道路わきには雪が残っている状態から積もっている状態になる。まだ春を認識できない様な木々の隙間を延々と走るうちに、突然視界が開けた。
雲かと思っていたのは活動中火山であり、そこから絶えず白煙が上がっていた。
あんなに遠くに見えていた山が目の前にある。
活動する火山が好きな私は、少し前まで自分の置かれていたシンドイ状況を忘れただ見入る。
もっと先まで行けるし(自己責任有)スノボを担いで、楽しんできた人が奥から戻って来たり、これからスキーを担いで山に入る人ありの光景にも驚いた。私は自力で何とか歩ける雪の解けたこの場に立ったが、大地に手を当てると地面は温かかった。
先日はメロン熊に生きている温もりを教えてもらい、この日は地球が生きていることを今更ながらに実感した。
で、ここは何処?
スマホで位置を確認したら
バリバリ活動中十勝岳だった。
「あれ!」の一言でここまで来てくれた亭主に感謝。
私は山が好きだ。
登山は出来ないが、札幌なら観音岩石(八剣山)を見ていると「この山がこの形に出来た頃って」と想像するだけでワクワクする。
札幌市より画像拝借
地層を見ていても岩石を見ていても、それらが作られている頃に自分がそこに存在していたら、今みたいな悩みなどに振り回されることなく、ただそのの瞬間を生き延びるためだけに神経をすり減らしていたんだろうななんて考える。
話はそれるが、他にも硫黄山にも連れて行ってもらったが「硫黄の臭いすごいね」と言うと、理系で学んでいた娘が「お母さん、硫黄は無臭。感じているのは硫黄化合物だ。硫黄と水素が…で、硫化水素になって…」と講義が始まる。(…部分は私が理解出来ないから濁している)
今回の旅をきっかけに「十勝岳噴火の歴史」を調べてみたけど、あまりに壮絶で驚いた。
十勝岳を下り美瑛の『青い池』に行ったが、少し前までいた十勝岳が向こうに見えている。
ここまでかなりの距離があるのだが、ここに来るまで、そしてここにも十勝岳が噴火したらを前提にあらゆる対策がされていることを知った。普通に「美瑛の青い池に行こう」と来ていたら、私はその点に気付かずにいたと思う。今までも何度か来ていたが気付かなかったし。砂防ダム、 砂防堰堤 の多さと、それをこんなに作っても大噴火となれば完全な護りにもならないと思うと何とも言えない気持ちになった。