大きな音で雷がなっている。
猫がその音で落ち着かない。
窓を開けると、外は一面雪景色だった。
慌てて亭主と娘の靴の用意をした。まだ根雪にはならないけれど、やっぱ冬に近づいてるんだなと……
先日、銭湯へ行った時のこと。
露天風呂でぼ~っとしていたら
「いやぁ!これ雪虫じゃないの!?こいつが出てくると数日以内に雪が降るっていうの。やだやだ、あ~っ、やだ、もう。死ね、死ね、死ねっ!!!」
と、叫びながら濡れタオルを振り回して、爪楊枝の先ぐらいの小さな白い綿帽子をつけた雪虫狩りをしていたおばさんがいた。
この虫、オスには口がない。で、生きてせいぜい10日の命しかない。
時期が来れば、この虫に関係なく蝦夷地には雪が降ると言われている。(割と高確率で当たるんだな、これが)しかし、この小さな虫が蝦夷の降雪の決定権を持っている訳では決してない。何だか、すごく嫌なものを見ちゃったなって、風呂から上がっても気分が悪かった。
『太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降り積む
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降り積む』
雪を見るといつもこの詩を思い出す。
雪って音がする。
静寂って音がする。
すべての音を吸い取って、今雪が覆っているんだって教えてくれる。
自転車での買い物も通院もポケモン探しも春までおやすみなさい。
【追記】
小学生の頃、娘が教科書で『ごんぎつね』を習い始めた。
この話についてクラスでディスカッションがあったらしいが、娘は「あれはキツネの前足であって、手ではない。よって手袋ってのはおかしい。」と言ったとか。確かにあれは前足だわな。娘が擬人化・擬人法という言葉を知るのはまだ先であった。
ごんを撃ってしまった兵十がごんに掛けた声は……との問いに娘は「ごん、お前、女だったのか!?」と……
この時ほど、娘の頭の中を覗いてみたいと思ったことはなかった。私が新美南吉だったら、三日三晩は枕元に立つレベルだと思った。