いつの間にか娘の夏休みが始まっていた。

通院でバタバタが続き、今思い返しても明確に娘が夏休みに入ったって記憶がない。

東進の無料講座に申し込みをした娘は、来月から幾つかの講座を受講するそうだ。

社会科の宿題で使用したい本を市の図書館のデータベースで検索したが、これから入荷予定であり、入荷しても既に6人が予約待ちで娘が手にする頃には初雪さえちらつきそうだ。取りあえずamazonで購入することに。

 

私は骨折部位のリハビリが始まったが、反対側の膝に大量に水がたまり、どうしても納得できない医師が検査をしたら10年以上前に車に撥ねられた時に受傷した靱帯が実は断裂と伸びていたことと、半月板もダメになっていて、更に関節の隙間もかなり狭くなっていて、ここまで重なると人工関節も視野に入れたほうがと言われた。

人工関節の手術ってこんな風らしい。(画像提供=チワワ奥。チワワ奥の姑さんの画像です)

そうだよなぁ、自分の関節を撤去して、人工物を入れるんだもん。これぐらいの傷は仕方ないんだよなぁ。

 

今日、娘と東進に行った帰りにSCのフードコーナーで飲み物を飲んで一息ついていたけど、横にいたじいちゃん。お代わり自由の紙コップに何度も水を汲んで飲んでいた。それはまぁ、自分の中では普通の光景。しかし、そのじいちゃんが、徐にカバンからシーチキンを取りだし水で流し込むかのようにシーチキンを貪っている姿には、私も思わず無口になってしまった。確かにシーチキンはうまい。でも、水で流し込んでは詫びもサビも風情もないだろうと、ちらちらと見ながら思った。

 

過去には、こんな人も見た記憶がある。

近所にあったスーパーで、私の後ろから出て来た30代くらいのご婦人とその娘らしき幼子。(子供は5歳くらいだった)会計を終えてスーパー出入り口を通過すると同時に袋から何かを取りだすと、歯で包装を食いちぎり中身を出して自分が一口食べ、それからすぐに娘の口にもそれを入れてやっていた。

「あらあら、おなか空いていたのかな?」

と、微笑ましい光景と思いきや、食いちぎっていたのは菓子を包むビニールで、その菓子とはお盆やお彼岸に仏前にお供えする積んだお団子だった。

上品な雰囲気を醸し出し、私なんかよりもずっとずっと高そうな服を着ていた素敵な奥さんって本の表紙を飾りそうな人だったが、いつ、いかなる形で仏前に供える団子を食べるってスイッチが入ったのかと、今も思いだすとちょっとだけ切なくなる。

母娘で出入り口で団子を貪る姿は失礼ながらも「修羅」の言葉が似合うような気がした。

 

 

さて、世間ではポケモンGOなんかが流行って、ちょっとした騒ぎになっている。

札幌駅周辺や大通公園では子供よりも、高校生くらいから私よりも上の年齢の者がポケモン探しを楽しんでいる姿を随分と見た。

「あ゛っ、ポケモンだぁ?くだらねぇ……」

と、言うこともなく、私は骨折部位のリハビリの一環と血圧を下げる目的で適度に歩くことを医師から奨励され、成り行きでスマホにポケモンGOを入れて歩き始めた。

チャリで通院もするし、歩きもする。ルールなんてわからないけど、取りあえずバケモノを集め続けた。夜、亭主に「どーだ、すごいだろう。これなんてワイルドだろぉ~」と見せびらかすと、亭主は細かにこのゲームのルールを懇切丁寧に教えてくれた。

一度に私に教えても、私の脳が処理能力を超えてしまい対応できないと理解しているらしく、亭主は毎夜、深夜帰宅をしてもルールを教えてくれた。おかげで炎天下の中、午前と午後で市内のかなり離れた場所にある病院へ行くのが苦痛だったのが、何だか移動するのが楽しくなってきた。

手当たり次第に捕まえていたけど、それを博士に売り飛ばしてアメに変えて、他のバケモノを進化させるとたったこれだけのルールを亭主に教えてもらうまで三日も掛かってしまったわ。

 

今日は久々に帰宅が9時と驚異的に早かったのだが、足のリハビリを兼ねて温泉(480円で入ることのできるところ)に行こうと誘われた。車を出してくれるしまぁいいかと風呂道具を持って夫婦で大雨警報の出る中、家を出た。

今日はずっと雨が酷くてバケモノも増えなかったし、ぶつける玉もすっからかんになったと言うと、亭主はわざわざ遠い風呂を選んで車を走らせた。

途中、アイテムを貰える場所を通ってくれて、今日は不作だとちょっと残念な気分だった自分の顔がだんだんニマニマしてくるのがわかった。

 

風呂から出た後も、亭主は遠回りをしてアイテム集めに奔走してくれた。(亭主は運転に専念していて、アイテム集めは助手席の私だけ)

 

「ねぇ。ずっと前にもこんな風景なかったっけ?」

私が問うと、亭主はハンドルを握りながら思案する。

「ほら、子供が夜泣きして、迷惑が掛かるからって車で夜中に家族三人でドライブしたじゃん」

「あぁ、あったあった」

記憶がうまく接続されたらしく亭主も笑った。

「でね。アンタずっと残業ばかりで疲れているのに、こうして私とポケモン集めしてくれるって……」

ここまで言うと亭主は『あなたって本当に妻想いの優しい人ね』って私が言うと本気で思っていたらしく、ハンドルを握りながら照れていた。

「いやいやいや……そうじゃなくて。

もうさぁ、自分に近寄って欲しくないから、気分転換にってバケモノ集めにつき合ってくれてるんでしょ?子供の夜泣きを諫めるのと同じレベルでさぁ」

この男は事実を突きつけられると、押し黙る。

「わかった、わかった。帰ってもアンタの部屋には近づかないから、もう少しバケモノ集めしてくれ」

そう言うと、亭主は笑いながらも雨の中、公園周りをしてくれた。

 

訳のわからない人間が大挙して治安が悪いとか、ゴミが大量に残されたとか。

他にもあんなものを大の大人が真剣に、馬鹿じゃないかやら、人間性に欠陥でもあるんじゃないのかとまで侃々諤々の論議となっているポケモンGO。

倦怠期の夫婦がスマホ片手に夜、ドライブしながらバケモノ集めをしながら、気づけばその日あったことをあれこれ話していた。

 

スマホは悪いことはしない。使い方を知らない者が、誤った使い方をして何かをしでかすのだ。

包丁が人を殺すのではなく、時に包丁を使って人が人を殺す。

障害者に対する奇妙な言葉狩りをしても、心の中に差別があれば、言葉は姿を変えてまた障害者を攻撃する。

何でも否定するのは簡単。でも、久々に亭主と楽しく話をするきっかけができたポケモンGO、私は好きだしハマりそうだ。通院の道すがら、笑いながらどれだけバケモノ集められるかな。万歩計は味気ないけど、これなら楽しめそうだ。

(バケモノ……でいいのか?モンスターなのか??)

 

ちべた店長から実はこれも頂いてました。

匂い袋なんだけれど、仄かに高貴な香りがする。気にいって手元に届いて以降はずっと、持ち歩いている。大抵はポケットに入れてだけど。

市販されている人工的なものとは違って、何だかはんなりした気持ちになります。

やはり匂いって大切なアイテムなんだろうな。

本は持ち歩けないけれど、この袋は常に一緒です。

改めて、ちべた店長さま、ありがとうございました。