「余計なこと言わないでよ」と思ったこと ブログネタ:「余計なこと言わないでよ」と思ったこと

生身の人間の発言じゃないんだけど……
娘がまだ幼少の頃、どこかのファストフード店で大人の手のひらに乗るくらいの「ピカチュー」のぬいぐるみをもらった。娘はこのピカチューを大層気に入り、どこに行くにも連れ歩くようになった。

ある日、亭主の身内が亡くなり私たちは急ぎ駆け付けることとなった。幼い我が子がぐずっても困らないようにと、私たち夫婦は娘のお気に入りのピカチューも持参した。ピカチューを抱いた娘は道中、ご機嫌であった。

さて、葬儀会場へ到着し支度を終えて私たちは席に着いた。何かあったら迷惑が掛かるかと、席は一番後ろにして娘と共に座った。坊主が入場し着席。読経と共に通夜が始まった。そこそこの年齢の身内だったし、みんな覚悟が出来ていたこともあり、別れの悲しみはあったものの、そこそこ皆が落ち着いて参列していた。坊主の読経が波に乗って来たころのこと。

「ピカチュー!」

突然、坊主の声をカットするかのように、その場に絶対にそぐわない明るい声が響く。
「!?」
一瞬、坊主が息を飲む。前に陣取る身内の身体が、その音源がなにかと探るように周囲を見回しているのがわかる。すぐに何が起きているかが把握も出来ず、私も音源に聞き覚えがありながらも、それが自分の膝の上から出ているなど思いもよらず怪訝な表情で左右を見回す。

「ピカチュー!ピカチュー!ピカチュー!」

二度目、三回連続離れ業の黄色い悪魔の雄たけびが会場内に響く。坊主もついに黄色い悪魔に負けてしまい読経が途絶えた。それは娘が持参していたピカチューのぬいぐるみから発していたものであった。このピカチューの手をつまむと、ぬいぐるみから「ピカチュー!」と押した分だけ正確に絶叫してくれるおまけとしてくれたものにしては、優れモノだった。

坊主が読経する→「ピカチュー!」と叫ばせる→読経が止まる

この法則を発見した娘は、もう自分を抑えることが出来ない。通夜の席で満面の笑みを浮かべながら「ピカチュー!」を連発させる。私は娘を小脇に抱えると、慌てて場外へと飛び出した。その後、そのピカチューを強制的に取り上げ、代わりにダイソーで買った「エイのぬいぐるみ」を渡した。「エイ」は鳴くことも叫ぶこともなかったが、娘に気にいられて15歳になった娘に今も寄り添っている。親から離れて長崎への研修や修学旅行で京都・奈良へも同伴していたと後で知って驚いたが……

教訓
葬儀にピカチューは、非常に危険である