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娘が小学生前。ふと思い立って京都へ行くことにした。
修学旅行以来、行くことのない遠方の地。子供をまとまった休みが取れた亭主に預けての一人旅は実行に移す前に相当悩んだが、『そうだ、京都へ行こう』のあのキャッチコピーはあまりに出来過ぎていた。亭主が息抜きにと薦めてくれて、私は意を決して京都へ一人旅に出かけた。

当時、この地にはとてもよくしてくださるご夫婦がいた。宿泊先の宿も決め慣れないながらも自分で計画を立てたが、このご夫婦があれこれ助言をしてくれ、そのうち私の『こいつに一人旅は無理じゃね?』的気配を察したのか、わざわざご主人が休暇をとり自家用車を出して夫婦で一日、京都案内をしてくれることになった。VIVA京都!!しかし、さすが神様・仏様のおわす聖なる地。私はすぐに強烈な洗礼を受けることとなった。
「ここのラーメン屋さん、すっごく美味しいんですよ」
私の目の前には九条ねぎてんこ盛りの『ねぎラーメン』が登場した。私は絶句した。何故ならねぎが苦手で、今も箸で器用によけて亭主や娘の器に入れてしまうほどだったのだから。だから、いい歳をしていてもねぎなんて満足に食べた記憶なんて皆無に等しかった。皆無のまま人生終える気満々だった。でも、それは京都では許されなかった。ここまで善意で案内を買ってくれて、事前にどの店がなどときっと夫婦で相談して決めてくれたであろうねぎラーメンを「私、ねぎダメなんです」なんて言えるはずもなく、私は覚悟を決めて深呼吸してそれを食べ始めた。今思うと、恐ろしい程の食べっぷりだったと思うし、誰が見てもねぎラーメンが好物のデカい女にしか見えなかったと思う。私は最後の汁一滴まで豪快に飲み干した。
「本当にねぎ、好きなんですね」
の言葉に、私はねぎ臭い吐息を吐きながら
「こんなに美味しいラーメン、食べたことが無いです」
と答えた。この時点で私は七回生まれ変わって食べる自分なりのねぎ量を摂取したと自負している。あっ、念のために……実は本当に嫌いで食べられなかったら、残したと思う。でも、九条ねぎは本当に今まで食べたねぎの中では最高に美味しかったと思っている。(でも、もう食べないと思う)
よく、世間では親が偏食すると子供にそれが伝搬すると言われるが、我が家は子育ての時点で私は娘に自分の苦手な物を中心に食べさせて、今では立派な『ねぎ撤去要員』となった。娘は最高にねぎ好きで、機会があれば九条ねぎを食べさせてやりたいと思ってる。あっ、今年、娘は修学旅行で京都に行くんだっけ。ねぎ、食えよ、ねぎ!!

で、腹も膨れ次に本格的な観光が始まった。杖をつく私の足元を考えた行先々に、私は大いに京都を堪能した。夕方近くには兵庫からの友人も合流してカラオケしようと決めて、私は車に乗せられ更に観光地を巡った。しかし……
「ミステリーツアー」と称され、私は行き先を知らされぬままに後部座席に乗っていたが、次第に体調が悪くなってきた。頭が締め付けられるように痛くて、頭を動かすこともままならない。強烈な吐き気にめまいともう、終いには後部座席に寝転がってしまった。
「たまさん、大丈夫?」
奥さんが心配して声を掛けてくれる。けれども、「大丈夫」と社交辞令さえ返せない。寝転がって車窓から見えた青空だけが今も記憶に残る。車は渋滞しているらしく、僅かに進んでは止まるを繰り返す。
「ごめんね。引き返したいけれど、引き返せなくて、このまま進むしかないのよぉ」
声も出せない私は、返事の代わりに歯医者での治療時の様に右手を上げた。かなりの時間を掛けて私は寝転がったまま、そこをやっとの思いで通過した。車が快適に走り出した頃、彼女は言った。
「ここね、京都でも、いや、日本でも有数の心霊スポットだったの」
基本、私は自分が見聞したものしか信じないが、あれは命の危機を感じるレベルできつかった。ってか、私、自分の意志で物見遊山で行った訳じゃないのに……
動けない私はカラオケを中止してもらって、そのまま宿へ送ってもらい寝込んだ。翌日、北海道へ帰る予定で頑張ったが、千歳に降り立った時点で動けず、迎えに来てくれた亭主に輸送状態で帰宅した。
それから数年後、私は娘を伴い、再び京都へ訪れたがやはり体調を崩し、帰りは亭主の車で輸送状態だった。亭主は『ドナドナ』を歌っていた気がする。
「あなたには京都、合わないんですよ。あんな神聖な地が、邪悪なあなたを受け入れるはずがない。きっと結界があって京都の神仏に拒否られてるんです」
これだけ腹が立つ事を言われても、反撃できない自分が情けなかった。
「いいですか。あなたは京都が好きでも、京都があなたを好きだとは限らないんですから」
ここまで言われ、私が中学生なら絶対に非行に走っていただろうと思う。

次に京都へ行く機会があれば、心霊スポットは避けて(できればねぎも)、思いのまま歴史や街並み、そして人情を堪能したい。ただし、京都が私を受け入れてくれるのかは、未だ不明である。


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