眼科は混んでいて午後四時にしか予約が取れなかった……
娘は横で録画した「逃走中」を見ている。誰それが自首したのがいいとか悪いとか騒いでいる。
「別に自首ってのがルールにあるなら、文句言う筋合いなんてねーじゃん。自分が面白くないからってガタガタ言うのは、お母さんは違うと思うぞ。そもそも、自首がOKだから、残り時間や金額が表示されているんだし
娘はうんうんと頷く。
「お母さんなら逃げ切れる?」
「お母さんなら、服装自由なんだからハンターと同じ格好するな。堂々と歩けるし」

これがゾンビなら私の場合、ヘタレなので恐怖で逃げ回るよりも真っ先に喰われる側を志願すると心に決めている。いつぞや新聞で、前方に何かを捉えたらブレーキがかかる車が話題になっていたが、これに真っ先に反対していたのは亭主だった。
「ゾンビやジェーソン、フレディが出てきても轢き殺せないじゃないですか!?」
未だ会ったことも、そして、きっと今後も出会うことはないであろう相手に恐怖を感じている亭主。けれども先日、亭主の中の恐怖番付に変動があった。言葉のはずみで
「死んでも絶対に成仏しねーから。毎晩、枕元でマジンガーZ歌ってやる」(マジンガーZはカラオケで私が歌う好きな歌)と、私が言ったのだ。確かに怖いだろうな。離れられないのが、地球が丸いからってレベルではなくなってるのだから。

自動制御システムの車を亭主は生きている限り、乗ることは無いと私は思った。