秀樹の死が、これほど生活に影響するとは思わなかった。
娘の送迎中、仕事中、友人と会食中も、秀樹が頭を過る。
それほど、「秀樹」に恋にこがれて焼かれていたのだと、いなくなって、初めて気づかされた。
しかし、私以上に熱烈なファンは多かった。
告別式の参列者数やコメントを見ても明らかである。
だが、中には、もの珍しさや香典返し目当ての不逞の輩もいたようだ。 金のためなら、そこまでやるのか。私なら家宝にしている。
私は、告別式は仕事で行けなかったので、通夜に参列した。
式場に近づくにつれ、喪服の姿が目立ち、秀樹の楽曲が聴こえてきた、「情熱の嵐」だった。
すごい人数が、すでに会場から墓地内まで列をなしていた。
墓地内の通路という通路は、人の列で途切れることははない。
99%は喪服である。本気のファンだろう。
涙ぐんでいる女性もいれば、秀樹の話で盛り上がっているグループなど、それぞれの人に、それぞれの秀樹の想いが窺える。
待つこと3時間。
ようやく、ファン特設祭壇に献花することができた。
本当に最後のお別れだ。
赤いシャツに笑顔の秀樹に、「もう、いないんだな」と思うと、悲しくて嗚咽が止まらない。
秀樹一筋40年。少年から青年、そして社会人になり人の親となったが、これで私の青春も終わったなと感じた瞬間だった。
これからは、秀樹の想い出と共に、老いていくだろう。