がん発病以来、私は「物欲」が消失してしまいました。

洋服は発病以来3年間購入していません。

足の浮腫みで普通の革靴が履きにくくなってしまったので、幅広タイプの靴に買い替えたぐらいです。


前職時代は登録金融機関の役職員だったので金融商品取引法によって有価証券の売買その他の取引等が禁止されていました。

退職後はその規制が解除されたので、発病前までの数年間は日本株式を中心に運用していましたが、資産運用や市場動向に対する関心も、がん発病ですっかり消失してしまいました。


自分の予後を「週単位」と認識し「早死にリスク」を強く意識している人間にとって、「物欲」や「金銭欲」が消失するのは自然の反応でしょう。


ところが、闘病経過を踏まえ「ひょっとしたら長生き出来るかも知れない」と思うようになると、今度は一転して「長生きリスク」を感じるようになってきました。

具体的には生活費や治療費の工面などの経済面を意識するようになってきたのです。


老後生活資金としてプールしていた退職金を取り崩したり、社員持株制度で積み立ててきた株式を一部売却したりして治療費を捻出してきましたが、治療が長引けば、それだけ経済的負担は増大してしまいます。


そこで、再びマーケットに真剣に向き合う意欲が復活してきました。


その過程で「がん闘病」と「資産運用=市場動向予測」には共通点があることに気づきました。

それは成否のカギは「これからいつ頃何が起こるか」を的確に予測し、適切に「先手を打つことが出来るか」に尽きると言う点です。


市場動向予測は、一義的にはアナリストなど専門家による企業業績や経済指標の事前予想のことですが、私の場合は、こうした専門家の意見を参考にしつつ、市場のトレンド、つまり相場の大きな方向性や傾向を重視しています。

これはチャート分析の考え方で、ローソク足の天井や底を結んだ補助線(トレンドライン、チャネルライン)を描いて、上昇トレンドや下落トレンドなど相場の方向性を総合的に判断するように心掛けています。


例えば、今年から来年にかけて米国景気は高金利に耐えられず減速し、中央銀行(FRB)は利下げに踏み切るだろうと予測し、米国長期債の金利が下がる(=債券価格が上昇する)に賭ける上場投資信託(ETF)に複数回に分けて投資してきました。

下図ですと、MA(移動平均線)を下回った時に「買い出動」を複数回繰り返して来ました。


やや投機的な米ドル建の投資対象ですが、平均建値は40ドル台なので、円高を加味してもパフォーマンスとしては悪くありません。


また、8月22日付、No.78「膵がん生存曲線とボリンジャーバンド」で投稿した通り、8月6日以降の株価の急上昇は、「秋の「2番底」をよりドラマチックに試すための海外投機筋らによる「騙し上げ」(担ぎ上げ)の可能性があるので、まだ注意が必要です。」との認識のもと、日経平均が38000円より上の水準では、「日経平均」をはじめ「米国S &P」、「ナスダック」を対象としたダブルインバース・ファンド(株価が下落すると反対に2倍上昇する)3本に分散投資してきました。


金曜日夜に発表された米雇用統計は、私の予想ほどは悪くはなかったものの、米国市場はやはりネガティブ(ドル安・株安)に反応し、日経平均先物は大幅安で引けるなど、週明け月曜朝の東京市場は波乱の幕開けとなるかも知れません。

ただ、今年は米大統領選挙の年でもあり、米景気は高金利で一旦は減速するものの、深刻な景気後退に陥るリスクは大きくないと判断しているので、個人的には「秋の波乱」は投資の好機との認識です。

8月に投資したこれらの「空売りファンド」は、あまり「深追い」せず、早めに利益確定して、反対に「ドテン買い」に転じるタイミングを見極めようと考えています。


がん闘病においても、専門家(医師)の意見を参考にして、「これから自分の身に何が起きうるのか」を予測し、「事態の打開に向けて現時点で何か打開策はないのか?」を主体的に問い続ける姿勢が大切だと考えています。


やはり、「がん闘病」も「資産運用」も「リスクをとらなければリターンは得られない。」と言うことを痛感している今日この頃です。