「ふんふんふー♫」
三途の川辺。一つの霊魂が歌う。
「石が詰まったーでっち上げだー袋詰めした化けの皮ー♫」
少しご病気な様子である。石積み遊びを繰り返し川辺に土嚢か防波堤かという勢いで高い壁を貼り続ける彼女は心の壁も高い様子だ。しかし亡者になり猛獣の扱いを受けなくなった彼女は少しだけ楽しそうだ。
「あたしゃしんじまっただー♫」
魔界と冥界と人間界の橋渡しをする橋の無い川。三途の川辺、と呼ばれるこの長い長い恨みの川に彼女は一人住まう霊魂。生前は魔界から人間界に向けてあらゆる誤解の中に理解を求めるため歌を歌い続けた。否、叫び続けた。しかし誤解は解けることはー。
「差別と偏見見ないフリーダーム♫」
突然彼女は立ち上がる。
「ーーー!」
飽きたー!と聴き取れるか聴き取れないか、それくらいの不明瞭な声帯の締め上げたような音で唸りだした。やはり一人になっても猛獣は猛獣なのだ。
ぷらん♫ぷらん♫
時は少し経つ。三途の川辺では時間などわかる術も無いが。幾ら程歩いたか、いや漂ったのか?霊魂・ナナは石積み遊びをやめて探すことを始めた。三途の川辺は本当に自分しか居ないのか?同じ身の上の霊は存在しないのか?皆、満足して成仏に至るのか?
彼女に沸いた疑念が、衝動に変わり、体を突き動かす頃には既にその眼は探し物を始めていた。
「ZZZ...」
彼は寝ていた。全てに憤り、全てに叫び、歌い続けた彼は三途の川辺に辿り着くや否や年単位の昼寝に入った様子だ。
白病という、奇病に倒れその生涯を閉じた彼の顔は死してなお白く、おぞましい。
「ふらりふらり」
彼もまた虚吐いていた。眼球を失くし、三途の川辺にて何を探せるのか、見つけられるのか分からないがふらつく彼はきっと何かを見たいのだろう。見つけたいのだろう。彷徨う先に何があるのか。彼の眼球はそれが見えているのだろうか。
彼女が2人と出逢うのは、彼女が三途の川辺を散歩し始めて幾星霜の果て。
三途の川辺に
「バンドやろうぜ!」
の怒号が響き渡るのも幾星霜の果て。
そいつらがド盆の晩にナスとキュウリに乗っかって音霊鳴らして言霊吐き散らしながら化けて出るのは、更に幾星霜の果て。
高かった心の壁を壊す仲間にまた出逢い、怒りという感情を取り戻したのだ。おぞましやかな世界がそこから始まるのだ!
彼女は嗤う。ヒトのフリをして。
「やぁ現世!ご機嫌おぞましゅう?」