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★★★★★ ● テレビジョン(当時は誰もテレビとは言わず、テレビジョンと呼んでいた)の本放送は、アメリカではすでに1939年から始まっていたが、1951年当時、日本は映画の全盛期で、映画関係者のみならずラジオ関係者までが、「家でボタンを押して映画が見られるようになったら、映画館はどうなるんだ。そんなのは21世紀になってからの話だろ」と本気で話し合っていた。 ● 小谷は、ホールの名を世間に知らせるために、フランスからパントマイムの第一人者マルセル・マルソーを招き、公演を行った。このとき小谷は、夫に同伴して日本にやって来たマルソー夫人にひとりの部下をはりつけ、銀座や浅草での買い物に残らず同行させた。小谷はその部下にこう命じていた。「女性が買い物をするとき、ふたつのうちどちらにしようか迷うときが必ずある。迷って捨てた方を全部記録してこい」部下はこの命令を忠実に守り、夫人が何を買って、何を買わなかったかを、こと細かに小谷に報告した。その報告を受け、小谷は、マルソー夫妻が羽田を発つとき、夫人が迷って買わなかった方の商品をそっくりまとめて箱に入れ、プレゼントした。女性が最後まで迷ったというのは、その商品を気に入った証拠である。中には、あちらを買えばよかった、と後悔したものもあったろう。小谷はそれを全部買って贈ったのだ。夫人が大喜びしたことは言うまでもない。その様子を見ていたマルソーは、「コタニの招きなら、いつでも日本に来る」と言い残して日本を去る。 ● 大阪万博を契機として、それまでは年寄りの大御所に回されがちだったデザインやイベントの仕切りの仕事が、30代前半の若い世代に回されるようになり、クリエイティブの世界で世代交代が急速に進んだ。 ● 万博以前の日本人には、表通りから中がまる見えの食堂で食事をする習慣はなかった。が、万博会場では、初めて来た入場客に食堂の場所を手っとり早く判らせるため、ガラス張りのレストランが多く造られた。ケンタッキー・フライド・チキンの日本上陸第1号店が造られたのも、万博会場内であった。 そうしたオープンな店の造り方に興味を持ったディオールのネクタイ輸入商、藤田田は、アメリカハンバーガーチェーン・マクドナルドと契約を結び、翌年、銀座に1号店を出店した。 ● 携帯電話の実用実験が初めて行われたのも万博会場だった。コンピュータという言葉が一般化し、全国の大学の工学部にコンピュータの専門学科が設けられたのも、万博が契機だった。 ● つまり、こういうことだ。今日、全世界で毎年1億人近い入場者と、1兆円近い売り上げを計上する世界最大のエンタテインメント産業のプレゼンテーションは、ウォルトが土曜の朝に呼んだハーブ・ライマンとビル・ウォルシュにより、月曜の朝までに準備されたのである。 この話から導かれる教訓は、こうだ。 「どんなプレゼンの準備も、48時間あればできる」 ● ウォルト・ディズニーは、自分の趣味を人に押しつけるより先に、まず徹底的に相手の立場に立ってものを考える。そういう人間だった。 長編アニメ第2作の 『ピノキオ』の製作時、ウォルトは、「昔からピノキオは尖った鼻と決まっている」というスタッフの声を頑として聞き入れず、主人公ピノキオの鼻の先端を丸くさせた。部下が理由を訳ねると、ウォルトはこう答えたという。 「第1作の 『白雪姫』が大当たりしたから、たぶん今度の映画では、無許可の関連グッズが全米に出回るだろう。そのとき、ピノキオの鼻が尖っていたら、子供にとって危険じゃないか」 ● 「創作とは、記憶である」とは、かの映画監督、黒潔明の言葉。 そもそも、エンタテインメントの基本は模倣である。先達の作った娯楽作品を見て、面白いなあと感動し、自分も同じ感動を人に与えたいと、記憶の再現を志す。いつの時代も、それがエンタテインメント作りの出発点だ。 『ローマの休日』のラストは泣けた、自分もああいう作品を作って人を泣かせてみたい、 『スター・ウォーズ』はカッコよかった、自分でもああいうのが作りたいーーそういった思いこそが娯楽作品作りの原動力である。 ● 堀貞一郎は、セレモニーの席に生涯の師と仰ぐ小谷正一を招いていた。 部下を誉めて乗せる天才だった小谷も、「小谷のようになりたい」と言う堀にだけは厳しく、どんなときでも、「きみは、まだまだだな」と言いつづけていた。1970年の大阪万博で大成功を収めた後ですら、小谷が堀にかけた言葉は、「堀クン、俺にはまだまだだぞ」だった。 その日、小谷は堀に案内され、チケット売り場の横の関係者口から入って、 『シンデレラ城』にのぼるスロープを、ゆっくり歩いていた。 スロープの途中で小谷が突然立ち止まって、堀に声をかけた。 「堀君な、ちょっと待てや」 「はあ、なんでしょう」 堀が振り返ると、小谷はまぶしそうに城を見上げながら、ぽつんとこう咳いた。 「きみ、いつの間にか俺を越えたな」 ◎ 魂が震えました。 個人的に今年一番の本。 ◎ #エンタメの夜明け #ディズニーランドが日本に来た日 #ディズニーランド #小谷正一 #堀貞一郎 #読書 #投資 #自己投資 #エンタメ #馬場康夫 #魂がふるえる本

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