嘆くべきことに、サブプライムローン問題が引き起こす新たな被害も見えてきた。ビジネスウィーク誌では、それを「ホームイクイティ」として紹介している。


 米国で住宅の価値が上がっていたころ、家を買った人はその住宅を抵当にしてさらに与信会社からお金を借りていた。しかし、ローンを払えなくなった とき、第一抵当権はローン会社が持っている。だから住宅はローン会社の手に渡る。となると、与信会社には貸したお金も返ってこないし、抵当にしていたはず の住宅も手に入らないことになる。この被害額が急増し、いまでは実に4兆円規模と見られている。


 もう一つの被害は、クレジットカード会社だ。サブプライムローンを借りて破綻した人は、クレジットカードで借りたお金も返すことができない。そうなるとクレジットカード会社にも損害が発生する。こちらの被害額は、300億円とか400億円とかいわれている。


 このようにサブプライムローンを借りて破綻した人を起点にして、住宅の第二抵当権を持つ会社、クレジットカード会社などに被害が広がってきてい る。今後住宅価格が20%以上下落してくると最近ローンを組んで買った健全な人々(プライム)も担保余力が足りなくなる。そうなると被害は一層広く、かつ 80%の掛け目で安全と思われていた人々に波及する。この問題が起こる可能性もゼロではない。何しろ競売に出される案件がカリフォルニアなどでは相当加速 しているからだ。いったいぜんたい、サブプライムローン問題はどこまで広がっていくのだろうか。

 これには米国人の気質も関係しているとわたしは見ている。かの国の人たちはちょっとでもゆとりがあると、可能な限り借金をして資金運用する人が多 い。資産の半分くらい運用につぎ込む人も珍しくない。だから住宅価格が上がり続ける、などという無理な前提が崩れると運用そのものがつまずき、個人の経済 計画がものの見事にひっくりかえってしまう。


 それに対して我が日本は、どんなに金利が安くてもお金を借りてまで運用に使う例はまれである。ひたすらためる。そのため株式市場が暴落しても、本 当に困るのは一部のトレーダーだけだ。多くの日本人は株式市場が暴落しても何も困らない。なにしろ1500兆円もの資産のうち、株につぎ込んでいるのは 90兆円、5~6%といったところだ。そのうち暴落で失われた資産は15兆円。つまり暴落したとしても総資産の1%程度の損失に過ぎないのだ。日本人は暴 落に強い民族なのである。


 それは良いことなのか、悪いことなのか。わたしは過去の当コラムで、日本人の資産運用への消極的姿勢をしばしば嘆いてみせた。本当に1%以下の資 産運用しかできていない現状は何とかしないといけないと思っている。しかし今回の件に限っていえば、日本人の慎重さがプラスに働いたとはいえるだろう。


 ただし、底値が見えたら一斉に買い出動し、こんどこそ「敵失」で得点、というしたたかさを見せて欲しいとは思っているのだが。