2008年1月、世界の株式市場が突然暴落した。日経平均も1万3000円を割り込み、米国ではFRB(米連邦準備理事会)が緊急利下げを実施した。

 当節、こういうニュースを目にすると、すぐに「暴落の原因はサブプライムローン問題だ」と考える人も多いだろう。しかし、どうやらそうではないらしいということが分かってきた。本当の理由は、たった一人のトレーダーの不正取引だったようだ。

 詳しく経緯を説明しよう。

 今回の暴落劇の舞台になったのは、フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルだ。不正取引の容疑がかけられているのは、この銀行の元トレーダー、ジェローム・ケルビエル氏である。彼は2000年から勤務し、欧州の株価指数や先物などのデリバティブ取引にかかわっていた。


 ケルビエル氏は2007年から2008年1月にかけて、不正取引をしたと見られている。その損害は49億ユーロ、日本円にして約7600億円にも 達する。ソシエテ・ジェネラルがそれに気づいたのが1月18日。翌19日にはジェローム・ケルビエルは不正取引を認め、その段階で15億ユーロの損失が判 明した(24日には損失計上した額は49億ユーロにふくれあがるのだが)。そしてソシエテ・ジェネラルはフランスの中央銀行に報告した。


 21日には、ソシエテ・ジェネラルは、株式の持ち高を解消するために、株を売却し始めた。今回の世界同時株安は、ここから始まった。その日、アジアと欧州の株式は全面安に突入した。米国はその日、たまたま株式市場が休みだったので、下落したのは翌日だった。


 22日には、同時株安に対応するため、米国のFRBが緊急利下げを実施した。驚くべきことに、フランスの中央銀行がFRBに事件の経緯を説明した のは、その後の23日になってからだ。もしフランス中央銀行が迅速にこの経緯を公表していたのなら、この世界同時株安はここまで広がらなかったかもしれな いし、FRBも緊急利下げを実施しなかったかもしれない。


続く