2008年1月、証券取引等監視委員会がNHKに調査に入ったことによって、記者やディレクターら複数のNHK職員が株のインサイダー取引をしていたことが発覚した事件。


疑惑をかけられたのは3人で、NHKが特ダネとして報じた企業の資本業務提携のニュースを原稿システム端末などを通して放送前に知り、提携で値上がりが見込まれる企業の株を買い、翌日売り抜けて利益を得ていた。


報道機関が知り得た情報を報道以外に使うことはあってはならないし、しかも記者のインサイダー取引は日本のメディア史上に前例がない。


番組制作費着服事件に始まった一連の不祥事からようやく立ち直ろうとしていたNHKに大きな痛手となっただけでなく、言論機関のありようを根底から問う事件となった。


NHKの橋本元一会長は任期満了を目前にして引責辞任し、その後を福地茂雄・アサヒビール相談役が継いだ。


新会長にとっては、倫理規定の見直しや職員の意識改革の徹底など、重い責任を背負っての船出となった。
( 隈元信一 朝日新聞記者 )