まずは、自分としては見逃せない三谷幸喜監督の新作映画を観ました。ネタバレは避けますが、劇場でやっているお芝居を自在に動くカメラで追っているような感覚がありました。故伊丹十三監督はクラフトビール、三谷監督はノンアルコールビールと言う感じがしました。
仕込みをして、とにかくできるだけ出発時間を遅くしたいので、新潟駅前で演奏開始するいつもの時間にちょうどいい上映時間に映画を観て、劇場の駐車場からいつもの駐車場に移動してそこから駅前に歩いて向かうと、いつもより10分程、遅い進行になりました。
そして今回は、記録動画用カメラを自分の真後ろにして、自分が見ている景色に近くしてみました。チェックしてみるとやはり音は小さいし、当たり前の話ですが、正面のベンチは自分の影になって見えません。今回限りかなという感じです。
最初に立ち止まってくれたのは、お子さんをおんぶしたお父さんと、5歳くらいの女の子。やはり女の子は、楽器に興味津々のようでした。こういう場合のテッパンネタは、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」です。これもあるあるですが、お父さんの方が喜んで歌ってくれました。
そして次に止まってくれたのは、「先週も演っているの聞いていたんですよ」という男子高校生のグループ。いゃー、いかつい(笑)本当は、こういう世代のオーディエンスのためにYOASOBIやAdoの楽曲も仕込んでおけばいいのだけど、なかなかそこまで手が回りません。音も細かいし、曲の進行も複雑だったりするのでやはり敬遠してしまいます。それでも、本日のお品書きリストの中から「糸」なら知っているというので演らせてもらって、更に間髪を入れずに、あいみょん「裸の心」を演ったら喜んでもらえました。はたして、彼らは自分の路上演奏にどんな印象を持っているのでしょうか。もちろん、自分の演奏はアートなんて上等な物ではないし、手慰み程度でしかありません。しかし彼らの世代には、路上でもイベント会場でも、生演奏を演っていたら耳を傾けてみるという事を覚えて欲しいです。
その後は、やはり三連休初日という事で人通りも多くなりました。そろそろ涼しくなって欲しいという意味も込めて、お品書きにあげた「木枯らし抱かれて」も、誰が歌っているか知らないけどなんとなく知っているという30歳くらいの青年にリクエストしてもらいました。ドラマの「不適切にも程がある」で、喫茶店のトイレにポスターが張られていた人のだとか、「あまちゃん」のお母さんだとか、歌っている人を教えてあげた方が良かったでしょうか。でも、あの世代は地上波を見る習慣がないのかも知れません。とにかく、演奏は、喜んでもらえました。
実は動画のアングルの他にも新しい事を試みています。まず、お品書きは半分近く入れ替えて秋の歌を入れました。その他、「タイタニックのテーマ」は、転調前の間奏のところで、ミラーボールを点灯させました。思った通り、好評でした。自分が演っているビルのテナントに某B.Eというカラオケ店があるのですが、そこの私と同じ世代の店員さんは、店の前で呼び込みをすると「さぁ、いらっしゃい、いらっしゃい」の感じで手を打ちます。それがあまり自分の演奏する曲とシンクロする事はないのですが、「とんぼ」を演ったところ、合わせてくれました。もしかしたら、お好きなのかも知れません。
他にも、ユーミンの曲を3曲続けて所望されたりもしました。中島みゆきさんの「糸」と「時代」を続けてリクエストしてくれた青年は、演奏を聴きながら、後から寄ってくれた女の子のインスタのアカウントを教えてもらっていました。(笑)
40年以上前のサザンの曲「YaYa」を演ったところ、通り掛かった男性が「いい歌ですよね」と言って、ワンコーラス歌ってくれました。カラオケの十八番なのか、歌詞も見る事はありませんでした。というわけで、サザン、中島みゆき、ユーミンは常に何曲か、在庫ストックです。
そして22時近くから、自分よりひと世代若いくらいのポロシャッの男性は、自分の真正面座って30分以上、他の人のリクエストも含めて聞いていってくれました。以前の真正面に座った不機嫌な感じの人や、好奇の視線で見ていた男性とは明らかに違った雰囲気でした。(真正面で画像無し)意図的に「真夏の果実」や「少年時代」は好評でしたが演らないと決めていました。そこで、山下達郎さんの「さよなら夏の日」を全力で演ったところ、ベンチから立ち上がって、自分の前に来てくれて「明日は仕事なんだけど、いい演奏を聞かせてもらって、電車を1本、遅らせたよ。頑張ってください。」と伝えてくれました。そして、駅の方へ歩いていきました。ほんの一瞬に、子供の頃は、ハーモニカもリコーダーも、村上祭りの笛さえも満足に演奏できた事は無かったのに、それでもコレクターやライブマニアでは気が済まず、中断する事はあっても、こうやって自分で演る事を続けてきた記憶が、頭の中でストーリー動画のように流れました。「毎週のように、新潟駅まで行って演るのは大変だね」と言われる事も多いです。でも、こんな事がたまにあるから、止められなくなりました。
その後は、ビックスワンでの湘南戦の観客も駅に到着して駅前広場は、さらに賑やかになりました。気が付けば23時45分、4時間半を超えていました。そろそろトイレも限界に近くなったので、お開きにしました。
帰りにそれぞれのユニホームを着た新潟のサポーターと湘南のサポーターが、居酒屋から談笑して出てきました。そして、手を振って「またね!!」と別れて行きました。間違っても火花バチバチ一触即発なんて雰囲気はありませんでした。なんか、いい景色でした。こんな景色のように自分もなりたいです。