「いま警察に通報したらちょうどいいぞ」

 

私は走って家に帰り、

 

台所の母に

 

「ゴンタクレ(山手注・街のワル)が銭湯で女風呂をのぞいてるよ」

 

と見たままを言いつけました。

 

「えっ、上に登ってのぞいてるの?」

 

母はそう言ってから少し間を置いてこう続けたのです。

 

「よっぽど何か、せんない事情があるのよ」

 

(『無頼のススメ』伊集院静/新潮新書/P113より)

 

 

 

 

 

上の抜粋文は、

 

先日亡くなられた伊集院静さんが少年だったころにお母さんとした会話なのですが、

 

 

 

 

 

 

 

「アイツはもとから悪いヤツなんだから、いい機会だから言いつけてやれ!」

 

と意気込む静少年に、

 

「彼には彼なりの何か事情があるんだからほっときなさい。」

 

とお母さんは答えたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

今だったら簡単に盗撮できちゃうので放っておくわけいきませんが、

 

そんな記録ツールも無かったし、

 

裸に大らかな時代だったのもあり、

 

 

 

 

 

 

ゴンタクレが女風呂を覗いている『本当の理由』というのは本人にしか分からないけれど、

 

本人なりの事情があってやってるのでしょう。

 

ほうっておいてやんなさい。

 

と。

 

 

 

 

 

 

その判断が、

 

正しいのか間違いなのかというよりも、

 

そういう思考の人って、

 

生きる力が強い人(生きるのが上手な人というのでしょうか)

 

だと思うのです。

 

 

 

 

 

 

ことわざの

 

『情けは人の為ならず。』

 

よろしく、

 

 

 

 

 

 

そういう思考の人(ふだんから他人にじんわり情けをかけられる人)には、

 

その人自身に何か起きたとき、

 

どこかしらから助け舟が来て守ってもらえたりする。

 

 

 

 

 

 

 

旦那さんも、子供たちも、そのほかの近しい人たちも、

 

このお母さんに何かあったら、

 

総出で身を挺して守るでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

・・・という人生の人になる。

 

だから「生きるのがうまい人」だなーと。

 

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