昨日のインド、Counter currents掲載、「USA attack on Venezuela and China factor(米国によるベネズエラ攻撃と中国の要因)」。執筆は、ジャナタラ・ナショナル大学(JNU)国際学部東アジア研究センターで博士号を取得し、インド行政研究所(IIPA)ニューデリー校で研究員として勤務しているチャンドラ・センChandra Sen。
私たちは大学時代から「帝国主義」と「新帝国主義」の違いを学んで来た。脱植民地化後、「帝国主義」という用語は「新帝国主義」に置き換えられた。これは植民地支配者が帝国主義列強のように必ずしも外国に渡って直接統治するわけではない状況を指す。国連の規範は第二次世界大戦後の米国主導の国際秩序によって支えられて来た。しかし支配的な勢力は、世界銀行やIMFの差別的な政策を利用して第三世界諸国を搾取していると批判を受けている。
ベネズエラに対する最近の攻撃と、同国選出大統領ニコラス・マドゥロの米軍による一方的な拉致は、国際関係における帝国主義の議論を再燃させ、その概念を蘇らせた。米大統領の一方的な行動は、国内から国際社会に至るまで批判を浴びている。ベテラン上院議員バーニー・サンダースがこれを「帝国主義」の典型例と評したことは言うまでもない。
1月5日、国連安全保障理事会の緊急会合で米国が非難された。 トランプ米大統領は麻薬カルテル解体の必要性を主張し、これを「麻薬テロリズム」との戦いと呼んで自らの行動を擁護した。米国がベネズエラを「支配する」と述べた。さらにコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領らに対し「身を守れ」と警告し、コカイン製造・密輸を支援していると非難した。
ベネズエラの動きを受けて、彼はキューバやメキシコなどの近隣諸国にも警告を発し、それら諸国については「何らかの措置を講じる必要がある」とほのめかした。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ大統領の上級顧問であるスティーブン・ミラー氏は、「グリーンランドは合法的に米国の所有地であり、トランプ政権は望むならばデンマークの領土を併合することが出来る」と主張した。中国とロシアは、マドゥロ氏とその夫人の解放、および米国によるさらなる軍事行動の自制を求めた。
石油ドルの力学と中国のグリーンエネルギー能力
石油埋蔵量において、ベネズエラは世界をリードしている。トランプ政権は、米国の石油埋蔵量の減少と中東への過度な依存により圧力を受けている。また、2024年から2025年にかけての世界の最新データによると、水力、風力、太陽光、その他のグリーンエネルギー源を含む再生可能エネルギー総発電量において、中国が米国を追い抜いたことも重要な点である。
米国大統領はベネズエラの石油危機への対応として、米国が「グループと共に」ベネズエラを「運営」し、石油インフラの再建を含むと表明した。
なおベネズエラは1999年にウゴ・チャベスの社会主義指導下に入り、後に国民利益のために天然資源を国有化した。歴史的に1999年から2010年にかけて、チャベスはラテンアメリカ諸国の指導者の中で最多となる少なくとも6回の訪中を果たしている。チャベスは2010年に中国を「21世紀の戦略的パートナー」と称した。さらにチャベスはこの提携を帝国主義勢力に対抗する「中国の壁」と称した。「中国の成長と大国としての地位確立に必要な石油は全てここにある」と、チャベス氏は2010年の訪中時に宣言した。
米国はここ数年、これらの資源に目を付けてきたが、マドゥロは前任者ウゴ・チャベスの後継者として、外国企業への石油販売を拒否した。
興味深いことに、同時期に中国は「石油対融資モデル」のもとベネズエラと緊密な関係を構築した。中国開発銀行は総額500億~600億ドルの融資を行い、ベネズエラは原油輸出で返済した。複数の報告によれば、中国は2025年においてもベネズエラの主要な石油消費国であり続け、様々なインフラプロジェクトのパートナーとなる見込みだ。
中国の外相である王毅氏が、米国がベネズエラに対して取った行動を厳しく批判したのも不思議ではない。彼は「いかなる国も世界の警察官の役割を果たせるとは我々は決して考えておらず、いかなる国も自らを国際裁判官と称することを認めることもない」と述べた。
米州関係における台湾問題
大統領とその夫人が自国から拉致され米国へ移送される事態は、現代史において前例のない出来事である。世界中で議論されているのは、これがプーチンによるゼレンスキー大統領の逮捕や、習近平による台湾への軍事攻撃の根拠となるだろうという点だ。中国の台湾に対する最新の主張は、政治的レトリックから領海での軍事演習に至るまで、あらゆる面で明らかである。
中国は「一国二制度」政策に極めて敏感であり、伝統的に台湾を内政問題として扱って来た。米国主導の国際秩序は中国の主張に異議を唱えて来た。中国は政治的・財政的両面で絶えず努力を重ね、全ての国々を自らの支持に結集させて来た。興味深い点は、米国の影響下にあるラテンアメリカの小国の大半が台湾との外交関係を維持して来たことだ。過去数十年で中国はこれらの国々を自陣営に引き込むことに成功した。ホンジュラス、パナマ、エルサルバドル、ニカラグア、ドミニカ共和国、コスタリカなど12カ国が、この期間に「一つの中国」政策へ転換している。
ラテンアメリカ・カリブ海地域:アメリカが認識する裏庭
2025年12月12日、中国政府はラテンアメリカ・カリブ海地域(LAC)に関する第三次立場文書を発表し、同地域に対する中国の立場を詳細に示した。中国国営メディア「環球時報」によれば、「この文書は中国とLACの関係において過去と未来をつなぐ里程標となる。平等・互恵・開放・包摂・人民の福祉を特徴とする中国とLACの伝統的な友好関係を継承するものである」と報じている。
中国は南米諸国にとって最大の経済パートナーであり、国営メディアによれば、中国とラテンアメリカ間の貿易額は2024年に5184億7000万ドルと過去最高を記録した。米国の裏庭への巨額投資は重要な戦略的動きである。こうした懸念はオバマ政権によって政策レベルの問題として扱われた。1962年のキューバ危機はソ連と米国の間でよく記録されている。ソ連の共産主義勢力が社会主義キューバに過度に介入したため、両陣営は核戦争寸前まで追い込まれた。米国は歴史的にこの地域を自国の裏庭と見なしており、中国の大規模な影響力と経済的接近は常に米国の戦略的利益を損なうものだった。
さらに、20カ国以上のラテンアメリカ諸国がすでに中国の「一帯一路」構想、習近平の壮大な取り組みに参加している。ラテンアメリカは中国が資源を獲得し、市場を拡大し、台湾を孤立させ、米国の覇権に挑戦し、世界的な政治的支持を得るのに役立っている。
希土類、中国、そして世界の力関係階層の未来
国際秩序の力学は変化しつつある。トランプ政権が誕生した時期は、中国が複数の分野で米国の覇権に挑戦していた時期と重なる。米国の権力層は、極めて重要であるレアアース鉱物について強い懸念を抱いている。中国は29種類の鉱物で世界最大の生産国であり、グラファイト、銅、コバルト、リチウムを含むレアアース元素の世界供給量の40~90%を精製している。
トランプ政権は関税などの戦略を打ち出し、貿易戦争をエスカレートさせているが、特に中国への圧力としては失敗に終わっているようだ。最近トランプ氏は大統領専用機内で記者団に対し「グリーンランドはロシアと中国の船で埋め尽くされている」と発言した。デンマーク王国の管轄下にあるグリーンランドから希土類元素の獲得を目指すトランプ氏の決意は、予想に反するものではない。
トランプがグリーンランドを侵略すれば、NATO条約第5条に違反することになる。同条項は、加盟国への攻撃は組織の全加盟国への攻撃とみなすと規定している。デンマークと米国はNATO加盟国として、米欧の戦略的思考に大混乱をもたらすだろう。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、米国が別のNATO加盟国を攻撃すれば「すべてが停止する」と述べた。欧州の当局者らはフレデリクセン首相を支持し、米国は「不可欠なパートナーである」と表明している。
トランプは全ての国際機関からの脱退を進めているため、この方針を推し進める可能性がある。「不公平な費用負担」がトランプの主張であり、MAGA構想で表明した通り、全ての国際機関への支出を削減し、国内政策に振り向ける意図がある。
トランプ政権によるベネズエラ大統領と国民に対する最近の拉致や封建的な行動は、2003年のイラク攻撃とそれに続くサダム・フセイン大統領の殺害と幾分似ている。しかし、中国はもはや米国の支配への挑戦ではなく、国際秩序の救世主としての立場を確立しているため、事態はそれを超えている。グリーンランド、カナダ、キューバに対する猛攻撃は、世界秩序における覇権を維持しようとする米国体制側の最後の必死の賭けのように見える。
ビンズイ
