デザイン思考って、難しい理論のように思われているけど、簡単に言えば、「見て聴いて試作品を作ってテストをする」である。天然でやっている人も多い。

 

少年時代の実験と試行錯誤体験

 

小学校6年のころの話である。

 

当時私は野球少年だったけど、バッティングが力まかせの大振りだったので空振りが多くイマイチだった。

 

だからコーチ(的なことをしていた世話好きな大人)からは、「ダウンスイングしろ、」「ダウン、ダウン」「何度言ったら分かるダウンスイングだ!」って感じのことを散々言われていた。

 

けれども私はそれを無視して、そのままのスイングを続けていた。

 

周りの者はみな、言われたとおりダウンスイングの素振りをしている中、私だけ逆らっていたのである。

 

もちろん、球を見ずに顎の上がるようなアッパースイングがお話にならないことくらい分かっていた。

 

でも、自分のスイングはそこまでひどくないし、このコーチは一般論を押し付けているのだろう? くらいに思っていた。

 

なぜならプロ野球の選手を見てもダウンスイングしているようには見えなかったからだ。

 

そもそも「ダウンスイングなんかしたら球が上に上がらないじゃん」と信じていた。

 

それなのに、なんで大人はみんな判で押したように「ダウンスイングしろ」って言うのか、それが不思議だった。

 

もしかしたら「人格形成の意味でダウンスイングを押し付けているのかな?」とうがった見方すらしていた。

 

ところが、テレビで王選手が真剣を素振りしている場面が流れた時、「あれ!?」と思った。

 

極端なダウンスイングだったのである。

 

これを見た辺りから、自分が間違っていたかもしれないと思うようになった。


そうなると、プロ野球中継や高校野球の中継を見ていても、見るのはスイングの角度だった。

 

それだけじゃなく、ラケットでも竹刀でも振り回すものを持てば、ダウンスイングのことが頭をよぎった。

 

脳にアンテナが立ったのか、見ること、聞くこと、何でもかんでもヒントになった気がする。

 

野球をやっている時も自分を実験台にしていろいろと試してみた。

 

わざと極端なダウンスイングをしてみたり、逆にアッパースイングしてみたりした。

 

周りは「こいついったい何やってんの?」って顔してこっちを見ていたかな。

 

その姿を見かねたのか、ある友人からは、「コーチに言われたからって気にすんな」なんて慰めの言葉が返ってきて、「え、そこ?」って気分になったことも覚えている。

 

こちらは、コーチがどうのなんてどうでもよくて、良いスイングとは何かを探求していたつもりだったから、慰められてしまうとちょっとショックだったね。

 

まあ、でも友人のような反応の方が普通かな。

 

自分を実験台にして、試行錯誤する人の方なんて、いるようでいない。

 

そんなこんなの日々を過ごしたある日、あることに気づいた。

 

それまでバットスイングはハエたたきを振るように腕を振り回すことだと思い込んでいたけど、本来のバットスイングはほとんど腕を使っていない。

 

みなさんもやってみたら分かるけど、構えの時のグリップの位置、球が当たっている時のグリップの位置、グリップは肩からへその辺りに振り下ろされているだけである。

 

まさにダウンスイングだった。

 

これは自分の中でものすごい気づきだった。

 

そのスイングを鏡で見ると、プロ野球選手のバッティングフォームと変わらないように見えた。(ちょっとひいき目過ぎたかな)

 

でも実際、これを心がけるようになったら飛躍的にバッティングはうまくなったよね。

 

当たるわ、飛ぶわ、自分でも驚きだった。

 

周りからバットに秘密でもあるんじゃないかって疑われるくらいの変化があったようだ。

 

この気づきを喜々としてコーチに話してみた。

 

そしたらそのコーチは「だからずっとそう言ってただろ! お前だけだよ、今頃そんなこと言っているのは!」って怒鳴られたね。

 

確かに、黙って言うことを聞いていれば、すぐに上達したかもしれないけど・・・、ちょっとしょげたなあ。

 

上記体験のデザイン思考的解釈

 

上記の体験を整理すると次のような感じかな。

  1. (テーマ)なんで大人は「ダウンスイングしろ」って言うのか?
  2. (気づき)王選手はダウンスイングだ
  3. (実験)極端なダウンスイングやアッパースイングを試した
  4. (観察や話し合い)テレビを見たり、友人と話し合ったり、ハエたたきを見たりした
  5. (仮説)腕はほとんど使わないのでは?
  6. (試作品)腕を使わないバッティング
  7. (実験)当たるし、よく飛んだ。
  8. (結果)これがダウンスイングかと納得した

このように、何かを創造するために意図的に実験や試行錯誤する思考法をデザイン思考と言う。

 

デザイン思考のプロセスはいくつかあるけど、代表的なものは以下のとおりだ。

 

デザイン思考のプロセス
  • ハーバートサイモン:定義⇒研究⇒アイデア出し⇒プロトタイプ化⇒選択⇒実行⇒学習
  • ロバート・マッキム:表現⇒テスト⇒サイクル
  • クリストフ・マイネルとラリー・ライファー:問題の(再)定義⇒ニーズの発見とベンチマーキング⇒アイデア出し⇒建設⇒テスト
  • スタンフォード式:問題定義⇒共感⇒定義⇒アイデア⇒プロトタイプ⇒テスト
  • ティムブラウン(IDEO):着想⇔観察⇔共感

 

デザイン思考のプロセスは色々あるように見えるけど、一致しているのは、「見て聴いて試作品を作ってテストをする」を繰り返すということだ。

 

これって、別にデザイン思考を習わなくたってできることだよね。

 

新しいものを生み出した時って誰でもデザイン思考をしているんじゃないかって思う。