赤塚犬猫病院スタッフブログ

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私たちを身近な動物医療のスタッフとして親近感を持っていただけますように いろいろな話題を発信していきます

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こんにちは。獣医師の木崎です。

 

ついこの前年が明けたと思ったらあっという間に1ヶ月が過ぎてしまいましたが・・・

 

2月からはネコのシニア健診が始まりました。(2/1~2/28までを予定)

 

今年のネコちゃん用シニア健診は昨年と少し違います。

昨年までは身体検査、血液検査、X線検査、超音波検査など、さまざまな検査を行うために長い時間のお預かりが必要でしたが、今年は基本的にお預かりは必要ありません!

 

なぜなら今年は一般身体検査、血液検査、胸部・腹部X線検査のみだからです。

しかし、血液検査には追加項目として以下のバイオマーカーの測定を行います。

 

① まずは中〜高齢のネコちゃんに非常に多い病気である「甲状腺機能亢進症」の診断のための 「T4」

② 若〜高齢まで幅広い年齢のネコちゃんに有用な心臓病のバイオマーカー「NT-proBNP」

③ 体内の炎症を検知するマーカー「猫血清アミロイドA」(SAA)

 

これらを組み合わせることで病気をしっかり検出していきますが、全て一度の採血で測定可能なため、

ネコちゃんにとっては最小限のストレスで短時間でお返しすることができます!(X線検査も短時間で終わります)

 

今回の変更点は、検査を全てやることが重要なのではなく、必要最小限の検査で最大限の情報を得て診断を下し、

より良い治療につなげることが患者様のためという考えに基づいています。

 

もちろん、診断や治療のために他の検査を行わなければわからないこともあります。

そのため、身体検査と血液検査で異常が見つかれば、さらなる精密検査を行うことをお勧めすることもあります。

その際は、どのような考えのもと、それらの検査がお勧めされるのか担当獣医師としっかりとご相談ください。

 

今回のネコのシニア健診は予約は不要ですが、血液検査結果に影響が出ないよう、朝食を抜いて午前中にご来院ください。

 

 

最後に少しだけネコの心臓病のお話。

 

ネコで最も多い心筋疾患は肥大型心筋症です。その有病率は14.5%との報告があり、きわめて高いと言えます。

品種としては、雑種猫に最も多く認められますが、人と同様に家族性が認められており、ペルシャ、アメリカンショートヘア、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、スフィンクス、およびラグドールなどの純血種にも好発します。診断時年齢の中央値は5.5歳齢(4ヶ月〜16歳齢)ですが、ラグドール、メインクーン、およびスフィンクスでは若齢時に発症することもあり、それぞれの診断時年齢の中央値は15ヶ月齢、2.6歳齢、2歳齢であったとする報告もあります。

 肥大型心筋症は心筋が分厚くなり、心臓がしっかりと拡張できなくなることで、血液が鬱滞し、うっ血性心不全を起こしたり、動脈血栓塞栓症を起こしたり、どちらも致死率の非常に高い合併症を引き起こす病気です。

 かなり悪化するまでなにも症状を示さないため、気が付いた時には遅いということも多いです。

 

 そのため今回のシニア健診にて測定できる、心臓病のバイオマーカー「NT-proBNP」をぜひ活用していただきたいと思います。心臓病を有するネコちゃんでは健康なネコちゃんよりも有意に上昇していると報告されており、上昇が認められた場合には心臓超音波検査を行うことがお勧めされます。心筋肥大は甲状腺機能亢進症とも関連しており、同時に「T4」の測定が行えるのでこちらも非常に有用です。

 

 上記の猫種に当てはまるネコちゃんをご家族にお持ちの方は、病気の早期発見のためにこの機会に一度健診をご検討ください。また、スコティッシュフォールド、アビシニアン、シンガプーラ等も心臓病が多い印象を持っております。同様にご検討いただくことをお勧め致します。

 

 ご不明な点は獣医師までお気軽にご相談ください。

 寒い日が続いておりますので、動物たちもご家族の方々も体調にはくれぐれもお気を付けください。