新元号「令和」の典拠は、万葉集の「梅花歌三十二首」の序で、天平二年正月十三日(陰暦)の梅花の宴について、「于時初春令月気淑風和」と描写した部分とされています。

 

令月は、通常、「めでたい月」という意味であり、「陰暦二月の異称」でもあります。

 

しかし、正月(陰暦)に開催した宴で、令月(陰暦二月)というのは、おかしいですね。

 

「于時初春令月」(時は初春の令月)ではなく、例えば「月」の字を取って、「于時初春令」(時は初春にして令(よ)く)のようにすべきでしょう。

 

実際、「紀州本万葉集」では「于時初春令気淑風和」となっています。

 

あるいは、月を、monthではなく、moonとして、令月を「よい月」、「美しい月」という意味でとらえてもよいでしょう。その場合は、「于時初春令月気淑風和」でもよいことになります。なお、この場合、宴は夜に開催されたことになるでしょう。

 

 

なお、この序は、後漢の張衡の「帰田賦」の「於是仲春令月時和気清」を踏まえたものとされています。

 

「仲春令月」の「仲春」は現行暦の3月5~6日頃からの約1か月間、「令月」は陰暦二月です。

 

これを1か月ほど早い正月(陰暦)開催の宴の描写で用いたので、この序の作者は、「仲春」を「初春」に変えたわけです。

 

また、同様に、「令月」は「令」に変え、あるいは、「令月」を「陰暦二月」ではなく「よい月」、「美しい月」の意味で用いたのでしょう。

 

 

参考

 

天平二年:730年。

 

春:春は暦の上では、二十四節気の立春(現行暦の2月3~5日頃)から立夏の前日(同5月4~5日頃)まで。初春、仲春、晩春の3つに分けると、初春は立春から、仲春は啓蟄(同3月5~6日頃)から、晩春は清明(同4月4~5日頃)からといったところ。

 

陰暦:純太陰暦(イスラムのヒジュラ暦)と太陰太陽暦がある。中国の古代暦や日本の旧暦は太陰太陽暦。旧暦は、3年に1回程度で閏月がある(つまり1年が13か月となる)ので、現行暦(太陽暦)や二十四節気との対応は、年によってズレがあるが、わかりやすく大ざっぱに言うと、旧暦の正月、二月、三月は、現行暦の2月、3月、4月に、二十四節気の初春、仲春、晩春に、各々対応する。

 

この序の作者:諸説(山上憶良説、そうでない説)あり。