明日、決着をつけなくては、このままだとズルズルした関係がつづくのは目に見えている…。

今度こそ終止符を打つ。
エースは気になるけど、たった一度会っただけの人間なんて忘れてしまうだろう。

『静香さん?せっかく可愛くなったのに、そんな顔しないで下さい!

最近、オープンした、人気の焼き鳥バー!そこでパーっと飲みますよ!』

麻美は有無をいう隙間も与えず、私を焼き鳥バーへと歩を進めさせてくれた。

『さすが、人気店ですね…。入れるかな…予約なしで来ちゃったから…。満席っぽいですよね?』

焼き鳥バー《チキチキ》
はドアを開けると、満席のようだった。

『麻美、いっぱいみたいだよ。またにしよう。』

『ですね…残念です。』

『あっ!あっちにも焼き鳥や、めっけ!あそこに変更です!いきますよ。』

麻美が人差し指で指した向かい側の焼き鳥屋に入ってみることにした。

門構えは赤提灯があって、冬ならおでんと日本酒があいそうなそんな雰囲気だった。

ドアをあけると4人席のお座敷が2つ4人席テーブル席が2つ、カウンター席がざっとみて7席くらいな小さな店内。

《チキチキ》オープンの相乗効果なのか、そこも満席に近い状態だった。

『麻美、ここも、多いから、またに』

といいかけたとき店員がやってきた。

『いらっしゃいませ。カウンターでよろしければ、空いてますよ!』

『カウンターでいいです!とりあえず生ビール2つ!』

と麻美はカウンター席に早速着席した。

客層はスーツを着た仕事帰りのサラリーマン風の男性がほとんどだった。

私の座った隣は空席その隣にはたぶん、年令的には私と同じ位のサラリーマン二人組が仕事の話をしているようだった。

私たちは初めてのお店だったので無難に焼き鳥の盛り合わせを注文した。

『静香さん、ここいいかも!おいしいですよ!穴場かも!』

外はパリパリ中はジューシーな焼き鳥はシンプルな焼き鳥なのに美味だった。

『だよね。美味しい』

私たちの横にいたサラリーマン二人組の私の横の男性がかなり酔っぱらっているようだった。。

『君たち!お目が高い!《チキチキ》はミーハーだよ!ここは味で勝負だよ!よし、俺は気分がいい!大将!生ビール4つ!』

その男性は私たちにビールをご馳走してくれた。

その男性の隣にいる男性が気を使ったのか

『君たち、ごめんね。こいつ、彼女にフラれたばかりで、しかも今日は仕事で嫌なことがあったみたいで、よかったら、乾杯だけでいいからつきあってもらえないかな?』

麻美もホロ酔いなのか
『気にしない!気にしない!一緒に飲もう!はは。
静香さんも彼氏さんと別れたばかりですもんね!乾杯!』

アルコールの勢いで4人で乾杯した。

『お客さん、テーブル席空いたよ!行くかい?』

大将がテーブル席を薦めてくれたので、4人、一緒にテーブル席へ移った。

フラれたという男性は
『こんな可愛い女の子たちと飲めるなんて。』

今にも寝てしまいそうに呟いた。

『静香さんも、今はフリーですもんね。』

麻美は遠回しに明日の別れ話の決着をつけろと言っているようだった。

あなたは彼氏とは既に別れているんだからと。


『…静香…?もしかして、矢田部 静香?』

えっ?何で私の名前を知ってるのだろう。
ごめんねと言った男性の方が私にそう聞いてきた。

『そうだけど…。?』

『覚えてないかな?君は小学校5年の時に転校しちゃったけど、帰り道が一緒で時々一緒に帰ったりしてたんだけど、一緒に帰ったって言っても、一緒に帰ろうなんて誘ったりしなかったから覚えてないかな。途中で一緒になって、僕はケーキ屋を左にまがり君はそのまままっすぐ進むその道まで一緒に帰ったりしてたんだけど…。』

男性の顔を見ているうちに…面影があることに気がついた。

成人した彼はあの頃と変わらない、好青年で相変わらず、かっこいい。

嘘…。彼が目の前にいて、しかも私を覚えててくれるなんて、嘘でしょ?

『…ウソ…。眞壁…
眞壁 光一君?』

彼はビールを豪快に含んで

『ウソって…?ウソじゃないよ!眞壁だよ!眞壁光一!思い出した?』

麻美は『お二人とも同級生だったんですか?なにかの縁ですね!偶然、再会なんて!』と潤んだ瞳でやや上目使いで言った。

眞壁君…。二昔前の少女漫画のような再会。

小5の秋に引越しのため、転校してからは、市内にいたにもかかわらず、街で見かけることもなかったのに。

こんなタイミングで再会するなんて。

だって彼は

私の初恋の人…。

淡い想い出が甦る…。

つづく…。

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