<妙なるたわ言(15)「音楽」について(その1)>



 その昔、広告代理店の面接で、こう質問された。「好きなアーチストは?」


 話の流れから、画家や彫刻家ではなく、音楽家を指していた。いったいいつから、歌手をアーチストと称するようになったのだろう。


 「これといっていません」とわたしは答えた。これといってぶっきらぼうに答えたつもりもない。だが相手は、訝しげな目をした。共同経営者の片方だという面接官は、こう断定した。


 「それってちょっとおかしいんじゃないの?好きな歌手がひとりもいないなんて、あなた少し変だよね」


 わたしは、「ひとりもいない」とは言っていない。「これといっていない」と言ったのだ。


 「あのお宅じゃあ、お茶も出さない」と言えばすむものを、「あのお宅じゃあ、お茶のひとつも出さない」と言うのと同じくらい、よけいなひと言だ。女性週刊誌の三面記事的下世話な言い換え、および下品な言い回しである。曲解はするもんじゃない。



 わたしは、クラシックを含めたあらゆるジャンルにおいて、たしかに特別好きなアーチストは挙げられない。あえてひねり出すなら別だが、物知り顔で語れるほど、誰かに精通している自信がない。その代わりに、(いい曲だな)(いい歌だな)と思えば、誰のどんな歌曲でも偏見なく聴く。


 それなのに、音楽に関心がない女は不感症だと言わんばかりに、頭から決めつけてかかるのには頭にくる。あんたに何がわかる。説明するのもアホくさくなり、めずらしく黙っていた。


 「ムカつく」なんて強烈な言葉が、思わず口から飛び出してしまうほどムカつく出来事など、日常めったにあるわけはなく、「ムカつく」という表現そのものがムカつくのだが、あるいはこんなケースを、ムカつくと言えばいいのだろうか。


 みんな誰かしらのファンなのだろう。ただごひいきのアーチストにだって、不作や駄作はあるはずだ。ファンとしては、全ての作品を極め、全部を肯定したい気持ちは理解できる。だからといって、黒を白とは認められない。曲解はできるもんじゃない。曲を理解するならともかく。


 そのためひとりふたりに執着することなく、広く浅く、いいとこ取りに徹している。


 もっぱらメジャーなヒット曲しか知らないミーハーなわたしは、ある意味マイナーである。しからばこの草稿を、「マイノリティ リポート」と呼ぼう。ご存知、トム・クルーズの主演映画のタイトルだ。



 アルバムを買っても、結局気に入ったナンバーばかりをくり返し聴いてしまい、他がムダになる。わたしが自分好みに編集したMDは、サザンの次に美空ひばりが登場し、永ちゃんの熱唱後はイーグルスに変わり、ジプシー・キングスの切々としたギターの音色の後井上陽水の甘い歌声が流れ、最後はモーツァルトで華々しくしめくくられるのだ。紅白歌合戦のプログラムの方が、はるかにバランスがとれている。


 ハンパでプライドがなく、ナンセンスでみっともない邪道な音楽意識と、後ろ指をさされるだろうか?


 「音楽」は音を楽しみ、「楽曲」は曲を楽しみ、その時々のシーンに彩りを添えられればいいんじゃねぇの?と、長井秀和風にぼやいてみる。



 ところで面接が原因で不採用だったかといえば、あっさり採用された。帰りしな、今後は職場仲間となるであろう、長い爪に真っ黒いマニキュアを塗ったおねぇちゃんに、「お仕事は忙しいですか?」と訊ねたところ、「まともに帰れるとは思わない方がいいよ」と、苦渋の表情で応えてくれた。


 仕事がおもしろいなら、それは構わないと思った。



 ところが翌日からの広告代理店勤めは、初日にして千秋楽となった。


 共同経営者のもう一方が、なんとホモだった。得意先回りに同行したわたしは、一日中あてられっぱなしだった。


 相思相愛らしい若い営業マンと、所かまわずちちくり合う。この場合の所かまわずとは、体の局所ではなく、幸い路上や公園など、公の場所のことだ。つっつき合い、触り合い、じゃれ合ったりするのをずっと見せつけられた。新しく入ったわたしなんか、まったく目に入っていない。それでいて、2人ともクライアントの前では男らしくシャキッとするものだから、まったくもって着いていけない。


 たった一日で辞めた決定的な理由がある。


 お客様第一主義とかで、何時になってもお昼を食べない。たまりかねて切り出せば、彼らはキョトンとした。そして(そんな風習もあったかな?)みたいな顔で、「じゃあ食べようか」と言った。妬けるほど仲むつまじいお2人さんは、それだけでおなかがいっぱいなのかもしれない。たしかに熱愛ぶりだけは、ゲップが出るほど堪能させてもらった。



 この際ホモセクシャルなのはまぁいい。断定的な面接官もどうでもいい。本当に仕事が楽しければ、深夜まで働くのも厭わない。


 だけどお昼ごはんをちゃんと食べないような会社は、何をやってもダメだ。


 かくいうわたしも、断定的なのには違いない。



 ではおしまいに、本日の一句。


 「生物に その種は無限にありけれど 音楽解すは ホモサピエンスのみ」


 次回もヨロピクピク。



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