<妙なるたわ言(9)「思い込み」について>
「ちょっとちょっと、ブログの原稿の〆切りが、もうすぐタイムメリットよ」と事務所の女性がわたしに告げにきた。
言うまでもなく彼女が言いたいのは、制限時間を意味する、「タイムリミット」なのだが、メリットのある時間を持つのは、決して悪いことじゃない。そんな名前のシャンプーとリンスもある。
彼女は営業先から帰ると、「相手先からけんもほろほろに断られちゃったわよ」と嘆いた。
言うまでもなく彼女が言いたいのは、取りつく島もないほど邪険にあしらわれるのを意味する、「けんもほろろ」なのだが、ほろほろ鳥のローストなら、イタリア料理店で食べることができる。さっぱりしていておいしい。
「取りつく島もない」というたとえも、取りつくのは「島」が正しいのであり、「取りつくヒマもない」は誤りだ。溺れている時、周囲に取りつく島影さえ見当たらないことを意味する。
同上の彼女が昼休み、歯医者さんから戻ってきた。「診察台でまともに先生の顔を見るのが照れくさくて、ついついよからぬ方を見ちゃったわよ」
おそらく彼女が言いたいのは、「よからぬ方」ではなく、「先生の顔をまともに見るのが照れくさくて、ついついあらぬ方を見ちゃったわよ」の言い違いかと思われる。果たして「よからぬ方」とは、先生のどこを見たというのだろう。そっちの方が照れくさいのじゃないか。
思い込みは恥をかく。
「木曽路はすべて山の中である」
島崎藤村の名作中の名作、「夜明け前」の冒頭部分だ。
あとにも先にも国語のテストで、奇跡とも呼ぶべき100点満点を取り逃がしたことがある。同小説の作者を答えよという問題に、うっかり「島村藤村」と書いた。それでもまったくの間違いとは見なされず、一問5点のところを2点マイナスされ、全体で98点となった。
運の悪いことに、その時の国語の先生の名が、島村先生だった。この落とし穴には、当時多くの生徒がはまったのではないかと思う。採点したのも同先生だったため、多目に見てくれ完全なる不正解にはせず、-2点ぐらいで勘弁してくれたものかもしれない。中には、「藤村とうそん」と書いた級友も、無きにしもあらずだろう。まぎらわしい作者と教師ではある。
思い込みは損をする。
「灯台元暗し」は、「灯台元、暗し」が正解であり、「灯台、元暗し」ではない。つまり、灯台は遠くを明るく照らすことはできるが、そのくせ自分の足元は真っ暗だ、という意になる。灯りが灯っていなければ、灯台だって元々は真っ暗だ、そんな意味ではないのだ。
かくいうわたしも、「伝家の宝刀」を「天下の宝刀」と思い違いしていた。先祖伝来の大切な宝、またはいざという時に使う奥の手を、これ以上にはない切り札のことだと、ずっと勘違いしていた。
井上靖の壮大なノンフィクション「おろしや国酔夢譚」は、「おろしや 国酔夢譚」ではなく、「おろしや国 酔夢譚」だ。「文明開化」は文化のことで、「文明開花」とは書かない。「団塊の世代」は、「断崖の世代」じゃない。
思い込むと恥をかく。
「思い込み」の代表に、「ねぇねぇあの人、あたしに気があるみたい」というのがある。その対象は、改札口の駅員さんでも、コンビニのレジ係の少年でも、とにかく誰でもいい。
「ねぇねぇ貿易部の彼ったら、ぜったいあたしに気があるわ」
それは金輪際あり得ない。なぜなら彼は、わたしとつき合っているからだ。
思い込めば恥をかく。ひとまず気をつけるとしよう。
「馬鹿の一念岩をも通す」
思い込みも時にはことを成就させる。大分県の「青の洞門」がいい例だ。ひとまず気にとめるとしよう。
ではおしまいに、本日の一句。
「ギャンブラー 勝つも負けるも思い込み」 錯覚ともおかどちがいとも言う。
次回もヨロピクピク。
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