倉橋由美子『人魚の涙』読了。
嵐の夜の海で遭難した王子を助けた人魚姫(倉橋童話の人魚姫は上半身が魚、下半身が人間)。魔女に頼んで上半身も美しい女に変えて貰い、王子と再会。けれども王子が別な女との結婚を決めた時、人魚姫が再び魔女に願った無邪気で残酷な望みとは。
世界中の名作童話を縦横無尽にアレンジ、物語の背後に潜む人間の邪悪な意思や淫猥な欲望を露骨に焙り出す。著者一流の毒に満ちた作品集。
一般的な「人魚」のイメージを逆手に取った、ちょっと毒のある一品。
こういう毒を堪能することもまた、小説の一つの楽しみであるし、
またそうした多様な楽しみ方を容認できない人は、
小説読みに向いていないんじゃないだろうかと思う。
