海外から見た日本人のメンタリティを現す
「サイレント・ボマー」って言葉があります。
何をされても黙っているので怒ってないかと思うと、
ある日突然、思いもよらないところで爆発する。
日本人にとっては、その場で怒ることは何の意味もない。
どうせ口だけの反省で終わってしまうからだ。
耐えて耐えて耐え抜いて、最後に鬱憤を晴らすというところに
カタルシスを感じる民族なんだろう。
だから日本人は忠臣蔵が好きなんだ、と思う。
その場で怒りを爆発させた浅野は自刃させられ、
耐えに耐えた大石たちが本懐を遂げるというのは
「短慮は損」という日本人のメンタリティをこれ以上ないくらいに
現していると思う。
そんな忠臣蔵、映像化された作品は八十本を超えるそうで
興味はあるけど、どれを見たらいいかわからない人もいるでしょう。
そこで今回は忠臣蔵を見続けた私的な感想を。
あなたの忠臣蔵ライフ?の役に立てば幸いです。
元禄忠臣蔵 前・後編(41年・松竹)
溝口健二が新作歌舞伎を映画化したもので
良く知られているように、討入り場面がありません。
手紙で討入りの様子を読み上げるという・・・。
しかも前後編あわせて4時間弱。長い。とにかく長い。
ドラマとしての出来はいいのですが、
やっぱり溝口作品のファン向けって気がします。
忠臣蔵(58年・大映)
歌舞伎や講談で有名な場面をきちんと盛り込みつつ
3時間弱にまとめたスタンダードな忠臣蔵で。
初心者におすすめという評価にもうなずける。
大石役の長谷川一夫、吉良役の滝沢修は、
NHK大河ドラマで驚異的な視聴率を誇った
「赤穂浪士」と同じ。
現在、大河はフィルムが現存していないので
その意味でも貴重かもしれない。
とにかく無駄な場面がなく、見やすい作品です。
赤穂浪士(61年・東映)
一番最初に観た忠臣蔵の映画で、とにかく豪華。
立ち回りの派手さといい、役者の演技といい、
いかにも時代劇らしい時代劇です。
ただ、堀田隼人なる架空の人物が狂言回しになっている分、
冒頭三十分くらいは話がわかりづらいかもしれない。
片岡千恵蔵の大石は本当に素晴らしい。
東下り(名前を騙って江戸に向かう途中、本人と鉢合わせ)の
場面はこの作品が一番かも。
討ち入りで近衛十四郎演じる清水一角の殺陣は必見!
この人だけで四十七人全員切れるんじゃないかってくらい凄い。
忠臣蔵(85年・日本テレビ)
映画じゃないけど、この作品に思い入れがある人も多いはず。
今回改めて見直したけど、丁度よいボリュームと見やすい演出。
気軽に観られる忠臣蔵ってところですかね。
個人的な話だけど、舞台で浪士の一人、杉野十平二を
演じたことがあるので、この人のエピソードがあるのは嬉しいね。
大砲を敵に売ろうとする叔父たちを相手に立ち回る役です!
(あと、そば屋に変装するのも定番)
四十七人の刺客(94年・東宝)
名作時代劇「十三人の刺客」にタイトル似てるなあと思ったら
原作・脚本が同じ人なんですね。
刃傷の場面をあっさりと省略。大石以外の浪士の出番もなく、
吉良邸をどう攻めるか、どう守るかで話が続いていく
「ドキュメンタリータッチの忠臣蔵」。
時代劇はちょっと・・・という人にもすんなり見られるはず。
世間では賛否両論のようだけど、僕は好きだな。
最初にも書いたけど、耐えて耐えて最後に爆発する、
というのはかつて一世を風靡した仁侠映画と同じ構造。
だから健さんが大石を演じるのも必然と言える。
健さんご本人もお気に入りのようです。
いかがだったでしょうか。
「日本テレビ版」「大映版」「東映版」あたりがおすすめですね。
ちなみに、キアヌ・リーブスのアレはまだ観てません!
--------------
*追記
続編をUPしました