尾車親方の「バカヤロー。」は、慟哭の叫びであった。
現役時代は、琴風のしこ名で人気を博した。
がぶり寄り1本で、大関まで昇った。
それはもう愚直なまでの寄せ相撲で、あまりに不器用なだけに、横綱までは手が届かなかった。
引退後は、NHKのスポーツ番組にも出演し、その解説はなかなか分かりやすかった。
師匠にとって、弟子は息子も同然である。
同じ釜の飯を食うのだ。
そういう思いで接しなければ、特に今の若者は直ぐにへそを曲げるだろう。
そうした関係だったからこそ、「バカヤロー。」なのだ。
昨年の抜き打ち検査では、限りなくクロに近い灰色だった。
なぜそこでもっと突き詰めなかったのか。
初場所は、ヒール・朝青龍が誕生し、久しぶりの大入りだった。
好事魔多し。
トップの連中がもしそう思っているとしたら、同じ過ちは再び繰り返されるだろう。
「ただただ悲しい。」
先に首になった外国人元力士の言葉だ。
何気ないその言葉を、僕は深読みしてしまうのだが。