3月14日。強風の中、東近の「フランシス・ベーコン展」へ行ってきました。

あまり知識をいれずに見てきたのだが、アイルランド出身で独学で絵画を学び、独特の肖像画を描き時の人となった彼の人物を見る目が、荒涼としたアイルランドの自然を彷彿と浮かびあがらせたように感じた。

その表現は、人体をいろいろな方向から不自然なかっこうをさせて、ありえない状態を描いたり、、顔の中に穴をあけたり、白抜きにしたりと特徴的な描き方だ。

ピカソのような抽象まで行き着かず、その少し手前で人物の特徴をわざとゆがめて描くことで、独特の人物像が浮かび上がる。
色使いも鮮やかなものもあるが、ほとんどが黒、グレー、白、青、ベージュをベースにしていて、《教皇のための習作Ⅵ》《スフィンクスⅢ》などからは対象を描く際にベーコンが重きを置いていたものは、色ではなくその質感とあるがままのものとしての、自然だったことがわかる。

また、身近な人物等を描いた作品《ジョージ・ダイアの三習作》《ジョージ・エドワーズの肖像のための三習作》のように三枚一組の描き方は、角度や時間、光、表情を変えながらも、その人物を通じて、その時々の自分の中の孤独や不安を表現しているように思える。

ストレートに感情が伝わるようで、心をゆさぶられた時間だった。

たまたまだが、来場者も外国人が多く、英国にいるような感じを抱かせたのかもしれないが、会場の雰囲気が無機質で冷たく感じられたのに反し、外に出たら皇居のお堀と春の生暖かい強風が日本を強く感じさせ、妙な違和感を感じる一日だった。