都美術館が改装以来はじめての院展に行ってきた。

 都美術館に向かう中高年が多いなぁと思っていたら、着いた途端に又長蛇の列が。同じ会場で開催中の「マウリッツハイス美術館展」のフェルメールめあての行列だった。
 確かにめったに見られないのはわかるが、あんな人混みの中で何がどう見えるのか?、フェルメールなら隣の西洋美術館の「ベルリン国立美術館展」にも集まりそうなのにそちらはさほどではないのはなぜ?、「真珠の首飾りの少女」だけ?・・・ハテナマークが頭に渦巻く。
 院展会場へ入れば、フェルメールから流れてきたらしきおばさま達の「虎かわいい~私こんなのが好きよ~」と嬌声が響き、げんなり・・。

 気を取り直して、時間をおいてゆっくり見ることにする。

 今年も同人の作品はひときわ力強く、描きたいものを真正面からとらえ、繊細かつ大胆に描いていてその技法と筆力に圧倒される。
 宮廻正明「放下便是」の花の色が周囲の空気さえも染めてしまうような桜しかり、清水達三「波嵐」の海の緑、清水由朗「煙波」の細やかな泡、そしていつもと違う色合いで高貴な人の穏やかな死を描いた宮北千織「悠久の眠り」。

 今回は川瀬伊人の作品を見られず残念だったが、中堅では、狩俣公介「螺生」、武部雅子「無双の花」、思わず‘うまいっ‘といってしまった松村公太「島人」などが良かった。特に、平林貴宏「表象と消費」はこの作家特有の筆使いで、幼さと妖艶さを併せ持つ女性の妖しさを見事に描いていて印象深かった。
  
 また新たに、古谷照美「静々と」、岸本浩希「夜想曲」、村上里沙「心奥」(初入選)、金川妙美「たたずむ」、新谷有紀「誘い」(初入選)などすばらしい作家を見つけることができて、楽しみが広がった。

 院展は、その伝統のなかから日本画の新たな可能性を次々と生み出し、溢れる才能をすくいあげていく貴重な機会となっていると思う。

 現代アートが注目を浴びるように、院展のみならず日本画のすばらしさがもっと取り上げられるようになればと思う。