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 最終章


 「話はそれで終わりか?」


 「あれ死神さん来ていたのですか?」

 驚いたように見せかけたが、予想した通りだった。

 

 「当り前だ。私にとっては、お前さんのお迎えができるかどうかが決まるとこなのだ。最後まで聞いて答えだして私の勤めのお迎えしなければならないのだからな」
 もうその気なっているように、死神は白い歯をまたかちゃかちやと鳴らす。


 「もうお迎え、お迎えて言われて私迷惑なんですけどね。
 それ言う前になぞなぞの答えを出すことが前提と、私いっていますね。答え持ってきていますね?」


 「当たり前だ。それよりお前さんその格好は何だ?私と同じように黒頭巾被って、黒メガネとマスク迄つけて死神になったつもりか?」

 私につきつけた指は、骨と見間違う細さだった。


 「とんでもない、これはなぞなぞの私の答えなのです」
 「またわからんこと言いよって。そんなことで私を騙そうとしても無駄だ。死神は騙すことできないと言ったのは、お前さんだぞ」


 「はいはいわかりました。それでは答えを伺いましょう。
 「なにをとんちんかん言っておる。今、お前さんの話したことが答えで正解と、私も同じだ」
 「同じだと言われても、答え聞いてから答え言ってもらっても困るのですか」
 「人間と違って死神はそんな卑怯なことはせん。お前さんの手をみるがいい。その紙に答えを書いている。話をする前にお前さんが寝ている間に握らしておいた」

 言われて自分の手を見たら確かに私の手は紙を握っている。


 「ええ、そんなに早く答え持ってきていたのですか」
 「あたりまえだ。俺は死神だぞ。こんななぞなぞが分からいでか」
 「そうでしたね。それでは伺いましょう。亮子は、亮を選ぶか、康夫を選ぶかですね。どうして康夫だと気づきました?」

 死神は私の問いに大きく両手を伸ばしマントを広げて見せる。


 「亮子が亮と愛の前で吐き気に襲われて、トイレに駆け込んだ。愛がそれでつわりと見抜いたが、見抜いたのは愛だけではない私もだ。」
 「ええ、愛さんは亮さんを生んで経験あるからわかったのですが、死神さんがどうしてわかったのです?」


 「言っておくが、死神に性別はない。男でも女でもないのだからどちらのお迎えもできるのだ。だから女のことも分かっておる」


 「そんなものですか?それで、亮子は康夫のもとに戻ることで話は終わりましたが、でも話の外の謎があると私は言っていますね。分かりましたか?」


 「そのことは前から私が言っているだろ。そんなことあり得ないとな。それよりお前さんに私から謎を出す。そのことの方が難しいぞ。私がお前さんにお迎えを控えることを条件にしたことを、お前さんは守っていない。だからお前さんのなぞなぞはどうでも良いことになった。どうだわかるか?」


 死神は歯をカタカタ鳴らして私に詰め寄る。私が約束を守っていないと?約束とは?そうか女装子の話をすることだ。確かに私はしていない?

 <いやしている、しおりさんは女装さんだ。話をしている>


 約束は、私のお迎えは女装子の話をすることで伸ばすということだった。だがどこで女装子の話をしていないと言うのだろう?

 「おかしいですね。私していますよ。しおりさんという女装さんと話していますが?」

 「確かにな、だがそのあと各章では女装子の話はしていないから、約束違反だ」

 「それじゃ章ごとに出ていないとだめということですか?」

 「そういうことだ」

 「そんなのペテンだ」

 「ペテンは人間だけにあるものだ。死神にはない」

 「そんなのは無茶だ~」
 叫んだところで死神には通用することではない。


 いくら93歳の長命を迎えても、お迎えは遠慮したい私だ。これでいいと言うことではない。

女装を続けて若さを保ちたいのだ。

 

 さあ、死神と最後の勝負にでよう。


 「なにをぐずぐずして居る。お迎えだ~」

 勝ち誇った死神は歯を鳴らす。
 「お迎え?ちょっと待って~」
 「待って~?人間の悪あがきか?なんだ?」

 「だって死神さん、あなた私の謎を解いていないではありませんか。どうしてお迎えなのです?」

 「話の外の謎を解くことか?そんなことあり得ないと、さっき答えているではないか」

 「いいえ、それは違います。話のそとでも謎があって答えを解く必要あるのです」


 「お迎え逃れに無理難題言うやつだ。では言っておく。最初のお前さんとの約束思い出すがよい。女装子の話をすることで、お迎えは延期すると言うことだった。だから女装子の話をしていないと言うことで、お迎えの延期はなくなったと言うことだ。それで、ザ・エンドお迎えにかかろうか」

 

「一寸待って~あなた私をペテンにかけるのですか?死神さんは謎をだした。私はそれを解いた。だからお迎えは延期になった。それなのに、章ごとでは女装子が出ないから、お迎えの効力はあると、これはペテンですよ。卑怯ですよ」

 「卑怯でもなんでも、ペテンにかかることで女装子を出せなかった。だから、お迎えが有効ということになる」
 さあ、いよいよ死神との勝負になった。私の切り札出す時がきた。

 

「分かりました。死神さんは私の謎を解けない。だが私が女装子の話をしていないからお迎えになると言うことですね。なにか勝手な言い分ですが、いいでしょう。要は女装子の話をしていれば、お迎えは延期と言うことになりますね」

 「またまたわけわからないこと言うやつだ。念押すまでもないことだ。だが女装子の話をしていないとさっき言ったところなのに、また蒸し返すのか?人間の悪あがきには愛想が尽きる」

 

 死神はやおら立ち上がる。

 私のお迎えは決まったという様子だ。


 私も寝台から降りて、かぶっていた頭巾を脱いだ。


 
 
 「ええ、君は誰だ?女だったのか?話が違う。私を騙したのか」

 頭巾を脱いで、装束を脱ぎ捨てた私を見て死神は声を上げた。


 「いいえ、死神を騙す人間はいないと言ったじゃないですか。私ですよ。93歳でも女装はできるのですよ。はい」


 「嘘だ!信じられん。93歳でそんな美人になれるはずはない」
 「美人と言っていただくなんて、死神さんに褒められるとは思いませんでした。ありがとうございます。
 信じられんと言われても本人に間違いありません。
 その私が女装子の話をしなくても、女装子で話をしているのですから、女装子の話をしていることになります。お迎えは延期です」

 

 死神は私の宣告にまだ信じられないのか?歯をカチカチ鳴らすばかり。

 私は胸を張って死神の答えを待つ。


 「なんだと?女装子で話をしているから、女装子の話をしていることになる??」
 繰り返して言っていた死神は突然叫んだ。


 「お前さんは私をペテンにかけたのか~」
 白い歯がカタカタなりまくる。意味が分かったようである。


 「そんな馬鹿な~人間が死神をペテンにかけるなんて。そんことがある筈がない」
 「そうですよ。人間が死神さんをペテンにかけて騙すなんてありませんよ。私は死神さんの言われた通りしただけです。ペテンにかかることで謎を解けないことになると」
 「ああ~情けない。死神が人間に負けるとは~人間がこんなにしたたかとは思わなかった」


 声を上げるたびに死神の姿がだんだん小さくなっていく。
 そして最後は豆粒の大きさになって、消え去った。


 <やれやれ、これでまだ当分お迎えはなくなった。フレンドさんに公約した、100歳まで女装を続けると。やれそうな気分になった>


 私は素敵な93歳の女装家である。
<オワリ>

<注・読んで頂いてありがとうございます。

 なにか読者の皆さんをペテンにかけるようで、心苦しいのですが。前の2作も死神シリーズですから、通しで読めば謎は簡単に解けると思ってのことで悪しからず。 <冬野あき・愛称・とくみ>

  チックトックに<とくみチャンネル>出てます。見て頂ければ幸いです。