着物着てエッチ?~

 優子さんにはときどき驚かされます。

 でも確かにそうです。着物着ているとき、脱いでも着るとき着付けできないと大変だもの、とすれば着物着たまま?確かに優子さんの言うう通りかもしれません。

 由美さんの着物の講釈より、そのことを聞きたいと思うのです。

 

 あれ?私、どうしてこんなこと考えるのだろう?私には縁のないことだというのに?

 発展場に行きながらメイク室に入り浸って、男さんのお誘いはねのけてきた私がなぜなの?

 

 気持ちの中に沸き上がってきた想いをすぐさまはねのけたものです。

 「もう優子さんたら、そんな恥ずかしいこと聞いて~」

 「何言うのあきさん、貴女が一番そのことを考えなければいけないのじやないの?」

 優子さんの反論に虚つかれました。彼女が何を指して言っているのか?私には分かったからです。

 

 男さんとの関係が多い優子さんにとって、私のミカちゃんとの関わりより、正人さんとの関わりにしか視線が行かないののでしょう。

 

 「もう優子は恥ずかしいこと聞くのね」

 そう言ったのが私ではなく由美さんだったのに優子さんは驚いたようです。きょとんとして、でも、すぐさま言い返します。

 「由美さんHなこと聞くと恥ずかしいの?由美さんが~」

  呆れた~という表情を露骨に見せる優子さんです。

 「違うの優子、ええ歳して、着物着てHできるの?~て、そんなことも知らない優子が恥ずかしくないの?て、ことよ」

 「仕方ないでしょう。私、着物どころか浴衣さええ自分で着たことないのだからね」

 うそぶく優子さんに笑ってしまいます。

 「仕方ないね、優子さん浴衣着たらお相撲さんに見えると言っていたものね」

 私は、優子さん慰めるつもりで言ったのに~

 

 「あのねあきさん、貴女まで私を笑いものにする気~」

 怒りだす優子さんに私も慌てました。

 「違うの優子さん~」

 言いかけたら、由美さんがまあ、まあ、と止めにかかります。

 「もう、いい争いは止めて頂戴。貴女達私の話聞きたいのじやないの?」

 由美さんに言われて優子さんは口を閉ざします。

 

 じつは優子さんは私が言うまでもなしに、ぽっちやりかたなのです。私より背が高くてお腹がでて太った大柄なのだけど、女装した顔立ちが可愛いのが愛嬌なのです。

 そのせいか?結構男性に持てるのです。殿方とのお付き合いが多い優子さんなのです。

 

 だから優子さんにとって着物にHの話は聞き逃すことできないはずです。まあ、私も好奇心強いほうだから聞きたいと思います。

 

「<昆布巻き>て知っている?知らないでしょう。これは着物着たままエッチすることをさしているの。着物、それもきちんとした着物を着ているとき、脱いですると、こんど着るのがいくら手慣れた人でも着る時間と手間がかかるでしょう?そんなとき時間かけづにHするのに、帯解かずに着物の裾だけまくり上げてするの。ちなみに私の場合は下穿き穿かずすっぽんポンにしているけれどね。

このやりかたを食べ物の昆布巻きに喩えていっているの」

 

「でもね着物が着崩れするから開脚は無理よ。女性でも女装子でもバックから嵌めてもらうのよ。その男さんからの心得となると、着物姿の女装さんに手差し入れることを考えても、どこから手を入れるのか分からないみたい。私の経験でもまず、胸元に手差し込んでくるのよ。洋服ならともかく着物ではそれは無理。お乳に到達するのが目的なんだけど、できないから諦めてしまうのよ。まあ、それで諦めない熱心な男さんは盛んに入口を探した挙句、着物の裾まくり上げて下から突撃してくるのには恐れ入りました。そんなことしなくても身八口から手差し込めば簡単なのにね」

 

矢張り17年の女装歴の由美さんです。詳しいのは着物だけではありません。でも、どれだけの経験積んでこれだけの話ができるようになるのでしょうか?

 あまり私の相談には関係ない話だけど、着物着て正人さんと会うのだと思うと、そんな経験と出会うことになったら?胸がドキドキしてしまうのです。

 

「あきさん貴女なに顔赤くしてるの?まさか?正人さんと着物で会って昆布巻きすること考えているのじゃない?」

 優子さんがまたもや頓狂な声上げるのです。

 図星ではないけど、恥ずかしくて血が頭に上がります。

「優子さん私着物着て正人さんと会いに行くのと違うのよ。お母さんと会いに行くのを助けてもらうために今、話しているのは、優子さんも分かっている筈でしょう」

 

 さすがに私の剣幕に驚いたのか、優子さん小さな声で「ゴメンあきさん、私、こんな話になると面白がってしまうの」大きな体を小さくして謝るのに可哀そうになって、私も「いいの優子さん気にしないで」なぐさめたのです。 

 

 「じや、着物の話はこれ位にして、十三の先生の話に移りましよう」

 由美さんが話を変えてきます。

 「この先生のメイクは女装のメイクでは日本一と言われている人なの。東京でドキュメンタリー映画の監督さんが保証して、メイクの必要な写真を撮るときは、東京まで先生呼んでいる位なのよ。とにかくメイクしてもらった女装さんは、凄い美人にメイクしてもらって病みつきになって、先生のもとに通うようになる位だからね。それに着物の着付けはもうウン十年のベテラン。スタジオがあって写真も撮ってられるの。どう?凄いでしょう」

「その先生に私のメイクしてもらうの由美さん?」

「そうよ、あきさんは美人だけど、そのあきさんが先生のメイクでもっと美人になって、正人さんのお母さんとお会いしてら、息子の嫁になってくれと言われるのは間違いなしよ」

 

「またその話を~由美さん。女装子の私がのん気<け>の男性の嫁になれる筈ないと言っているでしよう」 

「でもあきさん先生のメイクで美人のあきさん見たら、たとえ女装子でも正人さんは嫁になってほしいと言うと思うけどね~」

また優子さんが懲りずに話を持ち出すのです。

 

でも、今度は私も反論できませんでした。

ミカちゃんのママにと私に誘いかけする正人さんに、確かに優子さんの言うように正人さんが私への想いを寄せているようなそんな印象が私の胸に焼き付くのです。

<続く>