㉓
さあどうしたものか?
正人さんのお母さんに会うとしても、恐れしかない私です。みかちゃんや正人さんを相手するのと訳が違います。
年配のお母さんが同性という目で私を観察するのは目に見えているのです。
そして~私の正体を見破られたら?女装子と知られたら~
ミカちゃんや正人さんの前で指摘される事態になったら~
弁解してすむことではないのです。逃げるしか道はありません。そして二度とみかちやんや正人さんと会うことはなくなるのです。
思い余った私の結論は~
女装子のことは、女装子に聞け~私のフレンド達に相談することでした。
まだ日にちがあります。
勤め帰りの夜由美さん、優子さんと女装サークルで会うことになったのです。
フレンドの一大事~助けなくちゃ~二人の口ぶりだけど、本音は素敵なドラマに肩入れする役割にわくわくしているみたい?だって二人とも声弾んでいたのですからね。
場所はいつもの女装サークルの部屋の奥。
さっそく由美さんの問いが始まったのです。
傍では優子さんが目をきらきらさせて私を見ているのです。なにが始まるのか好機心にあふれているのです。
「それであきさん確認するけど、まず貴女に正人さんがミカちゃんのママになったくれというのは間違いないのね・」
「ママになってくれとは言ったけど、お姉さんママよ」
「でもミカちゃんはどうなの?あなたはお姉さんママなの?それともママそのものなの?」
「ううん~ママとしか言わないけど~それがどうかした?」
「一諸に居たいてミカちゃんは言ったのでしょう?」
「そうだけど、そんなことできるわけないから、ダメとミカちゃんには言い聞かせたけど。それがどうかした?ミカちゃんにはお姉さんママもママそのものも同じなんだからね」
「そこなのよ~正人さんはミカちゃんのその言葉に対する反応はどうだった?」
「勿論ダメという私の言葉に賛同したけど~なにか口先だけみたいで煮え切らないみたいのが気になったけどね」
「そうでしょうね」我が意を得たり~由美さんの言葉で言えばそんな感じの笑みを浮かべる由美さんです。
「ダメと言いながら正人さんは貴女に母と会ってくれと言った~おかしいと思わない?」
「それはミカちゃんのママ役やってくれて、母がお礼言いたいということだから、おかしくないと思うけどね。でも私にしたら,お母さんに会うなんてこと、そんな恐ろしいことできる筈ないでしょう。断りましたもの」
「と、言いながら会うことにした?貴女も正人さんと同じね。じや、お母さんと会うのね」
「だって仕方がないでしょう。正人さんが諦めてくれないのだもの~でも、お母さんと会うのは絶対嫌やなの。貴女男でしょうと言われたらどうするの?」
「ああわかった~それであきさん困って私達に相談しに来たのね」
優子さんが声上げます。
「黙れ優子!いま、大事なこと聞いているのだから~」
「聞いている~嘘!尋問じやないの、あきさんが相談に来たのに聞くばかりじやないの」
「聞かなきゃ相談に乗れないでしょう」
「それならさっさと相談に乗りなさいよ」
「相談に乗ろうとしているのに邪魔しているのは優子でしょう」
ああ、また始まったこの二人どうしてこうなの?仲が悪いというわけでもないのだけどね~
ため息が出る私です。
「お願いだから、由美さん私の相談に乗ってよ~」
「あのね~あき。貴女は正人さんにOKの返事していくことにしたのでしょう。でもお母さんに会うのは金輪際嫌だって~もう、ため息よ~正人さんはお母さんに会ってくれと言われて貴女は承知した。でもお母さんに会うのは嫌だって~いくら相談に乗るといっても相談乗りようないでしょう。じや、聞くけどあきは何しに正人さんの所に行くの?貴女答えの出ない答えを私達に求めているのよ」
「由美さんは理屈ぽいよ~答えが出るくらいならあきさんも、私達に相談にこないでしよう」
優子さんにたしなめられて、さすがに由美さんもうなずいたのです。
「分かった~答えは二つ~一つは正人さんにきっぱりお母さんと会うことを断る。もう一つは正人さんの頼みを聞いてお母さんと会う。このふたつ、どちらを選ぶかあきが決めなさい。ただし、お母さんに会う覚悟があるなら、私達、あきが女装子とばれないように応援する。さあ、どちらにする?決めなさい」
そんなこと~私には二つのどちらも大変なことなのに、由美さんはこともなげに宣告してくれるのですからね。
でもそこまで追いつめられると、私も覚悟を決めたのです。
フレンド二人が助けてくれるというなら、お母さんとお会いすると~・
「あきさん素敵よ~どんな話が出るかわからないけど相手さんの話にのるのよ。子連れで、姑さんが居ても、将来嘱望された偉いさんで、豪華なマンションに住んであきさんならきっといいお嫁さんになるわよ」
相変わらず優子さんは楽観的なのです。
「あのね優子さんさっきから言っているでしょう。私は女装子、そんなこと受け入れしてもらえる筈ないでしょう」
「でもあきさん貴女はみかちゃんのママ役だけだと言っているけど、正人さんも満更ではないのでしょう?」
優子さんに言われて内心私はどきりとしたのです。<私、正人さんが好きになっているのだろうか?>自分に問うたけど、慌ててそれを打ち消したのです。
「あのね優子さんいくら正人さんが私を好きになったとしても、純男さんがそう簡単に女装子を受け入れる筈ないと思うけどね。しかもよ、初来の会社の偉いさんと言われるような人が、会社の手前できる事ではないでしょう?分かり切ったこと言わないでよ」
「そうでもないような気がするよ、あき~外資系企業のひとて外国との取引で影響受けて、案外そのへんのことは寛容な気がするの。まあ、それでも正式な奥さんには日本ではなれないけどね。それでもいいという気持ちがあきさんにあるなら、それもありかもよ?それに貴女の場合みかちゃんがいるでしょう。子はかすがいというからね」
なにか、含みのある言い方する由美さんです。
でも、この人達がいくら言っても私には夢物語です。
ただ現実的なのはみかちゃんだけです。
ああ、もうこのフレンドさん達の言うこと聞いていると、<もうやめて頭がおかしくなる~>
<続く>