<写真・京都の紅葉 2020年11月・90歳>

 

<令和3年確定申告終わってカラオケで>

㉘ 女装はリュウマチ抑える??

 昨日やっと私の確定申告が終わって、肩の荷が降りた感じです。

 それにしても長いお休みしてしまいました。

 それが皆さんと同じコロナな原因なのです。

 コロナのために妻の顔見ることもできず、もう4か月も面会できていないのです。

 コロナが治まって面会できるようになっても、私の顔覚えてくれているか?その不安に取りつかれている私です。

 娘が言うのです。「もうお父さんの顔忘れていると思うよ」と、冷たいこというのに腹が立つ私ですが、<そうかもしれない?>という思いはぬぐいさることができないでいるのです。

 時々朝方です。<パパ~>と呼ぶ声や寝ている布団叩かれて目が覚めるのです。夢だったと気づくのだけど、なぜか「お母さん~」と返事してしまいます。

  一人暮らしで洗濯して、食事を作って、話し相手もなくマンションの壁に取り囲まれた主婦<夫?>の生活のわびしさ~そこへコロナで外出もままならぬとなれば、おかしくなりそう~

 だから週3回の筋トレでお年寄り<私もですが>と会話するのがなによりなのです。

 そして週1回の女装してカラオケスナックで、歌ったり踊ったり~お客さん達から<綺麗、90歳なんて信じられへん>と褒められ囃し立てられて、もう調子に乗ってご機嫌になると貯めていたストレスなど吹き飛んでしまいます。

 そこまで良かったのですが、正月過ぎてからです~コロナで私の行きつけの病院が全面休診になって、持病のリュウマチの点滴治療がストップ。とたんに手首から両手の指がすごい激痛~指などまがってしまってパソコン打つどころではありません。

 でも確定申告の日が刻々迫ってくるのです。

 私が一年で何が嫌かと云えば<年賀状書き>と<確定申告>なのです。指が痛くてもしないわけにはいかないのは、確定申告で<医療費控除>のために私と妻の二人分の<医療費><介護費>の膨大な数の領収証の整理をしなくてはならないからです。

 正月、コロナで家に閉じこもっている間にしてしまうつもりが指の痛みで作業はチチと進んでいません。申告の日は迫ってくるし遅くなるほど、申告の人が多くなって税務署での相談する余裕がなくなるのは、今までの経験でわかっています。

 だからどんなことがあっても作業をやり遂げなければならないのです。

 と、悲壮なこと言っているようだけど、正月の4日着物姿の女装して<YOUTUBE>ユーチーブの動画撮りに初詣してきたのですからね。勝手なもので、そんなときは痛みも忘れてランラン気分なのですから。

 でも、効果てきめん一人正月のストレスが消えて、翌日から作業がすすみだしたのですから。

 しかしそれもつかの間、1週間も家に閉じこもって作業すると、もう、指から手首までさかのぼって痛みがひどくなって、朝起きることから難儀になってきたのです。

 寝る前に病院で処方してもらった痛み止めの効果も消えて、パンツも、いえ男のズボンです、引き上げることも難しく着替えに痛い痛い~言いながら30分も掛かる始末。

 2週間目です。もう耐え切れぬようになって女装することにしました。私にとっては女装とは別人格、別人になることなのです。だから女装したら病気も本体が変わることで一諸に消えるのです。嘘~いえ、ホントです。脳の作用でしょうか?別人になったと脳が思うと痛みの認識も消えるのではありません?

 でもね~女装の用意~下着から始めるのにショウーツは良いとしても、パンストです~脚にぴっちり包むパンストを引き上げることできないのです。パンストやストッキングは女装の命です。

脚の美しさ見せるためには欠かせないのです。

 痛みに耐えて引き上げようとするのだけど、痛みに指の力が出ないのです。さおうでなくても

瓶の蓋はあけられない、牛乳パックラベルははがせない。コップは片手で持てない。ついには薬の一粒ずつ包む銀紙が剥がせられなくて歯で噛みち切る有様なのですから~。

 それで観念しては思い切りました。ハサミを操って足指~つま先のパンストの先切り取りました。そこから足首出すとやっと引き上げられたのです。足首は靴下履いて隠します。ブラジャーつけてスリープはおり、上からあとは男の服着て~いわゆる下着女装です。

 バスに乗って、電車に乗りついて、スタジオに駆け込んで、3階に上がるのに、いつの間にか手すりもない急な階段をトントンと上がっているのです。居並ぶロッカーから自分のロッカーを開けて、通販で買ったばかりのグリーンに黒の格子が入った厚手の生地のドレスを出します。

 メンズの上着とズボン脱ぎ捨て丸首のセーターの上からドレスをひっかぶり、ロッカーの棚からウイッグとパンストを切り取ったネットを出して鏡の前でネットを被り、ウイッグを装着すると鏡の中に突如女性が出現するのです。まあ、おばさん女性ですけどね。

 戦争中の栄養失調で戦後になって、肩幅も狭く、もやしのように背が伸びただけの私です。顔も小顔で見た目女性スタイルの私は、すっぴん<素顔>でもウイッグかぶるだけで女性に見えるみたいです。

 これで女装の下ごしらえできて二階の化粧室に行きます。先生いえ、女将さんと私が呼んでいる先生がメイク鏡の前に立った私に視線走らせます。

 「とくみさんセーター脱ぎましょうか。ドレスからエリが出ているからね」

 云われて<ああ、またやった~>思わず肩すくめる私。そうなのです。私て自分でもホントセンスないと思ってしまいます。女装の着替えするたびに女将さんに服を脱がされてしまいます。

 女将さんは純女~六〇歳だけど四〇台にしか見えない若々しさと覇気があって、だから

若い女装さんはもとより七〇台の女装さんでも世話できるのだと思うのです。

 まあ、90歳の私は別格ですけどね。私の場合は私が女装するというより、女将さんのマネキンになってメイクのたびにいろんなタイプの女装を作り上げる。私は女将さんの作品みたいなものですよ。

 「とくみさん今日はこのウイッグで若奥様ふうにしますね」

 「若奥様て女将さん私90ですよ」

 「だからメイクして若奥様にするのよ」

 「そんな~できるのかな?」つぶやく私。でも女将さんのことだから~これまでの女将さんにメイクしてもらっている経験から疑う気にはなりません。

 私へのメイクは女将さんにとっては芸術作品見たいものかも知れない。ふと、そんな思いが浮かびます。

 だから私は何時ものように目をふさいで成すがままでいることにしたのです。

 出来上がった私、鏡を見て<これが私?>いつものことにせよ、信じられない思いで鏡を見つめます。

 若奥さまというには恥ずかしいのだけど、まるでメンズの私とは違う別人が鏡にいるのです。

 年甲斐もなく~いえ歳なんか忘れているランラン気分。気が付いたら手の痛みも感じないのです。

 「女将さん後予定あります?」

 「ないけど、とくみさんどこかへ行くの?」

 「行くとこないけど昼間も開いて、密でないとこ~」

 「どん!」二人揃って声出したのは、これまでも行っているからです。

 <どん>というのは駅裏のお店が並んだ通りにあるカラオケスナックです。

 面白いお店で昼間だけで耀日ごとに違うママさん~おばあちゃんママのお店なのですけどね。夜はまた別のスタップのお店になり、オーナーも違うのです。

 駅裏のそれなりの家賃もこの方法だと払えて、80のおばあちゃんも店持てる。庶民の知恵ですね。

 スナックと言っても料金は安いし、お客も気安く話しできる雰囲気だから、私は女装の時だけではなく、メンズのの時もフレンドさんと連れ立っていくのです。

 カラオケ唄うだけではありません。80台のおばあちゃんと90の私ですから、話が合うことも私のお気に入りのお店なのです。

 スナックの今風の綺麗さはない、駄菓子屋を思わせる古びた家の造作だけど、カウンターに腰かけ、テーブルも3台~長椅子~土間も広くてビルのスナックよりも広いのです。

 このスナックへはスタジオから商店街歩いて、国道の交差点渡るとすぐですから行きやすいのです。

 駅裏の飲食店街の通りは人流れも多いのだけど さすがにコロナ自粛で昼間とはいえ人通りはまばら。

 「覗いて見てお客多くて密だったらやめとこうね」

 「大丈夫平日の昼間だもの空いていますよ」

 私の答えたとおり、古びた木の扉に営業中と書いた木の札がぶら下がっている戸を開けて、首だけでのぞき込むと、長椅子に男性二人女性が一人並んでしゃべっているだけ。

  「あら~とくみさんいらっしやい~」

 首まわした途端カウンターからママさんの声が呼びかけられて~あれ、この前一回行って会っただけなのに覚えてくれている。八二歳のママさんです。

「こんにちは~来ましたよ~」反射的に返事したけど~

「女将さん密大丈夫~」後ろに声かけて、入っていくと、並んだお客さんに一斉に見つめられ会釈します。

 「とくみさん今日は一段と綺麗やわ~」

 カウンターから飛び出してきたママさん私を見上げて言ったのに「ありがとう~」答えたとたん横から女将さん。

 「とくみさんこれでも九〇歳の女装さんなのですよ」

 とたんに「ええ~」と一斉に声が上がるのです。

 「本当に九〇歳ですか?」お客の女性が問います。

 「はい、昭和五年生まれの九〇歳です。戦争中この辺一帯焼夷弾が降って焼野原になるのを川向こうで見ていたのですよ。今では数少ない戦争の生き残りです」

 「本当に九〇歳?信じられへん~」

 男性のお客さんが首振ると、皆さん頷くのです。この男性その後も何回{信じられへん}を連発したことか~。

 そうかもしれません。厚かましいけど、私もメイクの終わった鏡の自分に<これが九〇歳の私?~>と思うときありますものね。

 そのあとはママさんと私達、三人でカラオケも忘れておしゃべり~

 ママさんが私に<綺麗~。連発するので、調子に乗った私、写真集のコピー写真をスマホにあるのを見せると<写真集欲しい~>ねだられて~あげること約束させられたけど~そのかわり?帰りの勘定~二人分千円しかとらなかったのですよ。

 これで私のストレス発散~あくる日から<確定申告>の下書作り一気に進みましたよ。

<次回・九〇歳の確定申告で続き書きますね>