(写真・2017年十三ルージュにて、88歳)

⑰ ウイッグの話

 私の場合女装の決めては人工乳房とウイッグですが、今はコロナでほとんどの方はマスクしていますから、マスクすると、私はメイクなしで女性に見えるみたいです。矢張り体のつくりが170センチの身長に55キロの体重ですからやせぽっちで、そこへ肩幅が狭いから女性の服装すればまづ見破られることがないのです。

 その自信があるので行動が堂々としているので、思い込みもあるかもしれないけどおば様方の眼力で見られても男とは気づかれることはありません。

 ええ、トイレですか?さすがに法律に触れるからまさか女性トイレは使えません。これは女装さん共通の悩みです。いわゆる身障者トイレを探すのが駅などに行くと先決です。でもこれも長い時間使えないのです。一度、大阪駅に隣接するトイレを使ったときです。それが素敵なトイレ?なのです。ホテルのトイレでもこんな豪華な内装のがあるかと思えるような、艶のある木の壁に設備も整っていて、思わず用をたしてから写真撮っていたのです。

 するとトントンと扉を叩かれて慌てて戸を開けると、服装からガードマンと分かりました。

 「使用される他の方の迷惑になりますので長時間のご理用は遠慮下さい」

 なにかまぶしそうな眼付きで言うのです。女と分かって意外と思ったのか?遠慮したのかわからないけど、私はそれどころではありません。

「すみません~」淡くって逃げ出しましたものね。なにか、長時間こもると連絡が行くのでしょうか?なにか気持ち悪い気がしました。でもそれでも懲りないというべきか?生理現象ですから仕方ありませんもの。地下鉄のラッシユのとき駅の総合トイレ入って用足して、鏡見たらウイッグがずれているのに気付いたのです。それでこれこそどこでも直せるものではありませんから鏡相手に格闘して時間使って見た目かっこよくしてから扉開けて出たら、こんどはガードマンではありません。年配のおじさんが腕組みして怖い顔して睨みつけられたのです。

 トイレに行くつもりだったら男子トイレがあるのですから、なぜ突っ立っているのか?わからないけど、逃げ出しました。

 女装すると最大の難儀はこれかも知れません。

 トイレ話が続いて恐縮ですけど、毎年恒例となっている女装グループの春、秋の京都観光の時です。桜ともみじの時期に観光タクシーをチャータして市内を廻るのです。

  人の多い名所は避けて裏の名所穴場を観光タクシーですから案内してもらうのです。人が少なくて写真撮影できますから、でないと観光の人を写してブライバシー犯しますからね。

 それでも逆にカメラ構えて勝手どりするかたがいるのです。写された私の映像がどこで横行するのか?気になります。

 で、トイレですけどお寺は男女混合ですから助かるのですけど、帰りに居酒屋に寄ったときです。客が多くてトイレの前の板の間まで若い人が座っているのです。

 トイレの扉には標識が<男>隣の扉には<女>その時の私の衣装は着物です。どう見ても女です。でも女装していても駅などでやむなくトイレに行くときは当然<男>に入ります。まさかタチションなどできませんけどね((´∀`))

 でもこの時は見られているのを意識していますから、<女>に思い切って入りましたよ~。もう、ハラハラですけどね。男のときはなんとも思わなかったのに、女装してトイレに入るのに人の目線がこれほど気になるなんて思いもしませんでした。

 女性の方はどうなのでしようか?ごめんなさい~失礼な問いでした。

 

 それでウイッグの話です。

 女装のフレンドさんに付き添われて週末大阪堂山に行ったのです。

 堂山は大阪でも指折りの繁華街ですから、商店街の通りなど土耀日の夜ですから、すごい人通りなのです。歩いたら肩触れあうのです。だから一人で歩くなんて細身の私にはできません。当たられたら倒されます。

 だから女装といってもフレンドさんは私より一回り大きくて男のような?体格ですから、横に連れ添って歩いてもらって人波から守ってもらうのです。

 その日は居酒屋でなくお好み焼屋に入ったのです。そしてお店を出るときです。いつも私が後になって出るのにこの日は私が先にお店出たのです。戸を開けて脚を前に出したとき戸口が坂になっていて~気が付いたら道路にまともにこけて居たのです。半身起こして無意識に頭に手をやったら~ない!ない!ウイッグがないのです。

 ウイッグが消えてウイッグの下地にしているパンストの腰から上を切り取ったものを被っているだけです。

 頭に血が上ってもう無我夢中です。地面をはいずりまわり脚、足~の囲みの中をウイッグを探しまわりました。

 やっと道路に寝ていたウイッグを見つけて、前、後ろも気に止めません。ウイッグを頭にのせると手で押さえて夢中で走り、行きつけのカラオケの店の階段を駆け上ったものです。

 その恥ずかしさは後々まで尾を引いて、堂山に何年も行きませんでした。<続く>