<写真・2019年スタジオで89歳>

⑯ 女装ウイッグ

 先の章でも書きましたが、私の女装の場合で女を表現するのは、乳房と髪<ウイッグ>です。メイクは勿論ですけど、人工乳房とウイッグを被るだけで、メンズでも女性に見えると私のフレンドの美智子さん<女装子>が保障してくれるのです。

なにか自分誉めになるみたいで恥ずかしいのですが、メイクの前に婦人服に着替えウイッグを鏡の前で被るとメンズから一気に女になった顔が鏡に映るのが自分でもわかるのです。

 そういえば2年前まで私は徳島から大阪のスタジオまで通ってメイクしてもらって、写真撮ってもらうことしていて女装の出発はスタジオからでした。

 その道中ですが当然男性の姿です。高速バスで行くのですが、時々<SM小説>書いているフレンドさんの車に同乗さしてもらうのですが、それが淡路島のインターチエンジに昼食休憩に立ち寄ったときです。

 トイレで用足して出口に出る出会い頭に年配の男性が塞がったのです。ところが私を見た男性「失礼しました」言って回れ右です。そして表のトイレの表示見て思い直してまた入ってきたのです。

 その間、私はあっけに取られて立ち止まったまま~男性の行動になぜ?首傾げるばかりです。

 車に戻ってフレンドさんに話したら~

「そら~とくみさんが女に見えたんだ。だから女性トイレだと思ったのだね」だって~

「そんなばかな~私、男の服装ですよ」反論したけど、私の服装下はメンズのズボンだけど、上は女性でも着れますよ!洋裁店の店員が保証してくれた、ボタンが斜めについたおしゃれな革ジャンなのです。でも、そうであっても釈然としません。

「男姿だから男に見えるはずですよ」抗弁する私に、フレンドさんは笑み浮かべて首振るのです。

「今日、とくみさんと待ち合わせしたとき歩道渡って車に来るとくみさんの姿見て女に見えたけどね」

「絶対それはないよ~なんならスマホで写真撮って」

ムキになってそんなやり取り交わしたものです。

 

 でも女装のときは自信あります。最近のの話です。フレンドさんの部屋借りて着替えしたときです。メイクはスタジオでするので女性の衣装に着替えて、お乳をブラに入れてウイッグ被るだけですが、女装のフレンドさんがため息つくように言うのです。

「とくみさんはいいな~頬っぺたは綺麗だし、メイクしなくても女に見えるもの~」

「うそうそ~メイクしないと絶対男ですよ。歳ですよ。しわがあるし~」

「そんなことないよ。そのまま外に出ても女に見えるのだから~絶対に、だから今日は商店街一諸に歩こう」

「メイクしないと嫌だよ。アンタはメイクしているから良いけど、私はすっぴんで、そんな恥ずかしい。絶対ばれるから~じろじろ見られて私は平気だけど、恥ずかしいのはアンタだよ」

「大丈夫~分かりっこない、すっぴんでもとくみさんは女に見えるから。じゃ、商店街歩いて試してみょう」

 と、引張り出されたのです。

 そしてです。商店街に入ると彼女当たり前のように私と腕組んでくるのです。どうも、これが彼女の狙いみたい?

女にしては背が高い私達が腕組んで堂々と歩くのだから矢張り人目引きますね。

すれ違いさま、ちらと女性~おばさんも、若い子も目走らせてきます。でも、その視線のありようを観察するとどうも女装がばれているようではないのです。

 目の走らせ方が違います。女装がばれているのなら、じっ~と見つめられるのです。ちらと視線走らせるだけなのは、女二人が腕組んで歩くのに好奇心が働いてと私はみたのです。

 さすがに私も恥ずかしくなってフレンドさんの腕ほどきましたけど~

 でも、そんなことよりもっと恥ずかしいことに気が付いて赤くなったのです。

 考えてみたら、おばあさん二人が若い服装して腕組んで歩くなんてまず見られません。それが私達女装剥いだら爺さん二人なのですよ。聞いただけで女装に理解ない人は「気持ち悪い~」言われますよね。

 でも女装して私達はウキウキしているのです。だって見た目爺さんどころか、40も50歳も若くなって、しかも美しくなっているのですよ。SF映画ではありません。現実に若い娘は無理でもおばさんぐらいには見えるのですからね。

 まあ、こんな表現したら女装さんに叱られます。

 女装さん方の女への執念はすごいものがあります。ただ単に女性のように美しくなりたい~そんな生易しい気持ちではありません。女~女性そのものになりたい~その想いが行き着いたとき、千金を投じてでも、自らの体にメス入れることもいとわないのです。

 いえ体のことだけではありません。自分の心の内では自らの体の性が受け入れられない~それは男性だけでなく女性にもあって、過去には<障害>として言われる社会環境のなかでは、身内にも知られることを恐れ、打ち明けることさえできない相克のなか自殺者もでる深刻な事例がおきていることを考えると、自分の女装の在り方がこれでいいのか?ただ、楽しみだけで女装しているだけではないのか?私は自問自答するのです。

 テレビでは女装俳優がお笑いの番組のように登場していますが、女装者の分類は多岐多様とはいえ深刻な状態に置かれている女装者は表に出ることがないだけに、救いの手をどう差し伸べたらいいのか?

 力もないのにそんなことを思う私なのです。<続く>