8時、起床。ロンドン滞在の最終日。自室の外の廊下に出ると、久しぶりの晴天。窓は、抜けるような青空。

9時、朝食。地下食堂で働く女性たちの、スペイン語の会話の声が大きく響く。


すぐに外出。ホテルの横の通りにある小さな郵便局で、日本への小包を船便で出す。購入した劇場パンフレットや本など。近くの小売り店で、新聞を買う。訪英する天皇ご夫妻についての記事を掲載、女王がヴィクトリア駅まで出迎えられるよし。……いつもの旅行者用のレストランに入り、新聞を丹念に読む。明日からアメリカへ渡るので、天皇訪英は観られない。やや早めのランチ。野菜サラダとチキンカレーを食べた。

208号室に戻り、1時間ほど仮眠。目覚めて荷物の整理。ズボンやセーターを買ったので、それらを収納すべく、暫しスーツケースと格闘する! 荷物の整理だけで、いささか疲労。シャワーを浴びる。


午後遅く、また外出。ロンドンのお名残に、近隣のリージェンツ・パークを散策。

すっかり木々が色づき、すでに落ち葉が舞っている。ベンチで読書する老人、芝生に横たわる男女、広々とした池に玩具の軍艦を浮かべて遊ぶ子供たち、草の上に脚をのばす青年が、こちらに微笑みかける。……ロンドン市民の平和な生活が、この昼下がりの公園の風景を、満ち足りた豊かなものにしている。夏の間は欧州の何処に行っても、旅行する各国の若者たちに出逢ったが、秋の深まる今、その影はすでに無い。……僕の初めてのヨーロッパの旅も、今日が終わりだ。明日の夜は、いよいよアメリカだ。ニューヨーク!ニューヨーク!


帰路、また旅行者用のレストランに入る。ここは入りやすかった。すっかり顔馴染みになったので、はにかみやの童顔の店員が、珍しく日本語で「コンバンワ」と言ってくれる。奮発して、ローストビーフと麦酒を注文。人影の無い店内で、ロンドン最後の夜の晩餐を、ひとりで楽しんだ。……


早めに、208号室に戻る。母に絵葉書を書く。明日出立の荷物を確かめた後、室内に置かれたテレビのスイッチを初めて押すと、すでにカラー放映。チャンネルは3つくらいか。……


11時頃、ベッドに横たわる。




◎写真は   ロンドンのホワイト・ホール (亡母遺品の絵葉書)