えらい久しぶりになってしまいましたが、ぼちぼち続けていきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、今年最初の映画は、『ブロンド少女は過激に美しく』です。
配給会社がフランスであることがアピールされているような気がしますが、舞台はポルトガル(リスボン)で、みんなポルトガル語をしゃべってます。
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
原題:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
原作:エサ・デ・ケイロス『ブロンド少女の特異さ』(1873)
出演:リカルド・トレパ(マカリオ。監督のお孫さん)、カタリナ・ヴァレンシュタイン(ルイザ)
公式HP:http://www.bowjapan.com/singularidades/
◆おはなし◆
妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・
リスボンからアルガルヴへと向かう列車の中、マカリオは隣り合わせた見知らぬ婦人相手に打ち明け話を始める。
マカリオは高級服飾店のオーナーである叔父のもとで会計士として働いていた。
ある日、向かいの家の窓に、扇を手にしたひとりのブロンド少女(ルイザ)が現れ、一目で恋に落ちてしまう。
友人のつてで知り合いになり互いに好意を持つものの、叔父に結婚を大反対されて職を追われるハメに…。
なんとか見つけたカーボヴェルデ(西アフリカのセネガルの西の海の諸島)での仕事で一財産築き、意気揚々とリスボンに戻ってきたマカリオだったが……。
◆感想◆
いやぁ、まず『ブロンド少女は過激に美しく』という邦題ですが、どんなエロ映画なのかと思って観に行ったら期待はずれです(笑)
そういう意味ではあんまりいい邦題ではないような気がしますが、直訳の『ブロンド少女の特異さ』ではピンとこないというのもあると思うし……工夫されたのでしょうね。
映画全体のテンポはとってもゆったりしていて、ときどき眠いぐらい。
そのせいもあってか、映画全体に古さというのかレトロさというのか、そういう雰囲気があり、「いったいいつの時代の話なんだろう?」と思ってしまいました。
ヨーロッパの古い建物のステキなお部屋に、会計士のお仕事用にパソコンが置いてあって、それだけでなんかちょっとおもしろいです。
いわゆるBGMというものがないので、曲で作品に強弱をつけるということはしていません。
その分、往来の音、鐘の音、ハープの演奏、声、そういうものが本当にきれいに聞こえる。
で、肝心のところ。エロさについて。
エロくないかというとそんなことはありません。
過激な露出シーンなどはまったくないのですが、ルイザをじっくり撮る視線がとってもエロいです。でも下品には思わなかった。
ルイザがマカリオのいる店を訪れ、マカリオと出会うとき、彼女の顔がじーっと撮られています。
もう窓から見ているから知っている顔なのだけれど、とても近くでじーっと。
これが男の視線かーーー!と(笑)
ルイザ役のカタリナ・ヴァレンシュタインについては、いわゆる整った顔立ちの方ならほかにもたくさんいると思うのですが、ちょっとタレ目ぎみでぽってりした唇、スキだらけに見えるような誘ってるようにも見えるような、すばらしいロリータフェイス。
ルイザがどんな女の子なのか(どんな考え方、感じ方をしているのか)はほとんど描かれていないのですが、どうでもよくなりました。
彼女がマカリオと再会するシーン(おそらくキスシーン)で、顔は全然映らないのですが、片足をちょっと曲げているところが映ります。
話の筋と全然関係ない! でもそのキュートさときたら。妄想気味なところがとても良い(笑)
そして、最後にどーんと脚開いて座るシーンにびっくり。
100歳恐るべし。
オリヴェイラ監督は、同じ俳優とお仕事をするタイプの監督さんとのことで、そのとおり前に見た(といっても、『カニバイシュ』と『神曲』を見ただけですが)顔がいくつもありました。
私がけっこう好きなのが、長いお顔のディオゴ・ドリア。今回はマカリオの叔父さん役でした。
『カニバイシュ』では色男役でしたけれど、年を経てちゃんとりっぱなおじさま俳優になっているからすごいです。
そして、ルイス=ミゲル・シントラが本人役で登場していました。
この人の朗読は確かによかった。よかったけれど、詩の内容に圧倒されていました。
↓のフェルナンド・ペソアの項に詩の訳が載っているのでご覧になってください。
http://www.bowjapan.com/singularidades/whoswho/
特に↓のところ。ちょっとぞっとするぐらいでした。
世界の不幸は 善意であれ 悪意であれ 他人を思うことから生じる
魂と天と地 それだけで充分だ
それ以上を望めば 魂や天や地を失い 不幸になる
……
神よ 私は善人ではありません
私は花や小川と同じ 自然なエゴイストです
他者のことに構わず ひたすら咲いて ひたすら流れる……
作品自体は「えっ、ここで終わり!?」というところで終わります。
ぽかーんとなったけれど、「金返せ!」とは思いませんでした。
なかなか良い映画体験でした。
オリヴェイラ監督は新作を撮り続けているとのことで、次回作を楽しみにしたいです。